孫六銭話 はしがき
世の中に不思議なことがある。
借家をすれば家賃が出る。いらなくなれば原形(もと)の通りにして返す。金を借りれば利子を取られる。期限が来れば返さなければならない。もし、両方借りっぱなしで、家賃も利子も払わなかったら厳重に返還を迫られる。それでも返さなかったら法律上の在任とならなければならない。
ところがここにどう考えても不思議でたまらないものが一つある。
それは借りっぱなしで、しかもそれを自分の物にして、それから生まれる利益はことごとく自分の財産になると言うのだからこんなに嬉しい話はない。
しかしそれは何か後ろぐらいことで、法律上許すべからざるものだろうと考える人があるかも知れないが、決してそんなものぢゃない。白昼公然としかも堂々と行ってよろしいことである。
そればかりではない、之によってその人は輝かしい成功と、燦然たる名誉を担うことが出来る。
それは一体何だ・・?
何でもない「知恵」だ、知恵は人から借りても利息は出ない、返さなくともよろしい、その知恵から生まれる収穫は悉く自分のものになる。
本書の内容から気付いて、大成功をした人があったとしても、著者は決して利子も請求しなければ、返してくれとも言わない。
遠慮なく読者諸君の財産として差し支えないことを言明して置く。
谷孫六
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