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段取り力が身についた喫茶店(バイト体験記)

4年制大学の1,2年の履修というのは、どういうわけか時間割の作り方に無駄がでる。

2限と3限に何も履修できない。

10:30~14:30の空白の時間

この4時間をサークル活動(軟式テニス)にあてたり、図書館で勉強したりもしていた。

それ以外に、どういう経緯か覚えていないが、その時間を埋めるのにちょうどよいバイトを見つけた。
3つ隣の駅前の喫茶店で週2回、3時間だけランチの手伝いをするというもの。定期券もあったのでちょうどよかった。

当時、その駅前は本当に何もなかった。
無人駅だった気がする。
昔のスナックを改造したような、エンジ色のビロード素材の椅子。
カウンターには、高め脚一本の固定椅子。
カラオケはないが、ムード歌謡を歌うしかない雰囲気の店内。

時給は650円。 安っ! 
今考えると異常に安い
でもメニューも安い。

コーヒー(ブレンド)280円
紅茶 280円
カフェオレ 300円
コーラ 300円
ジュース 300円
クリームソーダ 350円

焼肉ランチ 650円
焼きそばランチ 600円
オムソバランチ 600円
カレー 550円
ピラフ 550円
トースト 200円

今思い出してみて、この値段は合っていると思う。
我ながらよく覚えている。

オーナーのママは、バツイチ。
専門学校生の息子がいると言ったので、40代と思われる。
喫茶店よりスナックのママと言う感じ。
「つけまつげって風が起きるんだ」と、初めて知らしめてくれた人。

裏で調理専門のYさんがいた。おふくろ感のある人。
ホールは私とSさん。Sさんもバツイチ。
年齢を聞かれるといつも「イタチ年生まれやで」と答えていた。
ママが不在でも、また何も頼まれていなくてもみんな本当によく働く。
ランチ後お客さんがいなくなったら、

「さ、今のうちや!」と、Sさんが号令をかける。

店内すべてのシュガーポット、コーヒーポット、やかんを洗って磨く。
グラス、カップなども漂白してチェックする。
お客さんが来るかもしれないので半量ずつ実施。
ドアや窓も磨く。
たいして汚れていないカップボードも掃除する。

雨の日には
「お客さん来はれへんねぇ~」
と、言ったかと思うと、

「今日は床磨こっか?」
「電気の傘(照明器具)拭いとこか?」
「テーブルと椅子の脚拭こう」

Sさんはそそくさと動く。
1分もじっとしない。
さらに彼女がステキなのは
「ねこにゃんちゃんは、また授業戻らんならんから、コーヒー飲んでちょっとゆっくりしとき」
とか言うのだ。

いえいえ、私もやりますってー。
本当にステキな労働環境だった。

どんな仕事も段取り良くすることが大切だが、
私はこのバイトで、その段取り力が培われた。

ただ、水商売の裏側を知ることにもなる。
今なら「そらそうだろ」って思うことだったりする。
でも若かったので、ショックもあった。

★ランチに付く特製スープの正体
⇒大鍋に水を入れ、ハイミー(味の素みたいなもの)をカップ1ほどドサッと入れ、しょうゆを少し入れただけのもの。
常連さんが「ここのスープ美味しいね」
え、まじで?
ママが「門外不出の特製ですもん。うふっ」
そりゃ門外に出たらえらいこってす。

カフェオレの正体
⇒普通のホットが小さじ1ずつほど余るものを、コップに溜めておき、オーダーが入ったらそれを使う。
当時はたまにしか出なかったが、オーダーが入るたびに「やめときー!」っと念じていた。
あーぁ、飲んじゃったよ。完全に風味も抜けているはず。

コーラの正体
⇒これは正真正銘のコカ・コーラだ。
ただ、ナイスバディみたいなくびれグラスに氷満タン。
実は小瓶の半分も入っていないのだ。
水商売の本質も実体験した。

ホットケーキの正体
⇒手作りを銘打っているのに、冷凍食品である。
お客様からは見えない位置にある電子レンジ。
「チン」の音が出る前に扉を開ければ、ハイ、手作りの出来上がり。

コーヒー豆販売
⇒外から見えるガラスケースの中に入った豆がたくさん入っていて、一応それを売っている体でやっていた。
でも、豆を買う人をほとんど見たことない。私がいない時でもそんなに売れているはずはない。
一度ブルーマウンテンを買って帰った30歳位の男性がいた。
追いかけて「たぶん5年以上前の豆ですよ」とせめてお伝えしたかった。
30年以上経った今でも悔やまれる。

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あぁ、また長くなってしまいました。
お読み頂きありがとうございました。












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