Fast Diffusion Equation, Porous Medium Equationについて

私が修士のときに扱っていた偏微分方程式は,

$${\partial_t u = \Delta u^m}$$

であり, これは$${m}$$の値に応じて次のような名称がついている.

  • $${m=1}$$: 熱方程式(Heat Equation),

  • $${m>1}$$: 多孔質媒質方程式(Porous Medium Equation),

  • $${0 < m < 1}$$: Fast Diffusion Equation,

  • $${m \leqslant 0}$$: Super Fast Diffusion Equation.

このように, $${m=1}$$を境に方程式の性質が大きく変わる. その理由について説明する. この方程式は, スポンジや砂利の中の水の浸透していく様子や, プラズマの拡散などを記述する方程式としてよく知られており,

$${\partial_tu = \nabla\cdot(D(u)\nabla u)}$$

で表すと拡散係数は$${D(u) = mu^{m-1}}$$であることがわかる. 今, $${u}$$は粒子といった微小の物質であるので, $${m > 1}$$のときは小さい値の正冪であるため拡散係数の値は小さくなる. さらに, $${u}$$がほとんど$${0}$$に近ければ拡散係数は$${0}$$になるので拡散しなくなる. したがって, $${m>1}$$のときは退化放物型方程式(Degenerate Parabolic Equation)であることがわかる. 一方で, $${0 < m < 1}$$のときは同様の議論より, 小さい値の負冪なので拡散係数の値は非常に大きくなる. $${m \leqslant 0}$$のときは拡散係数がとんでもないことになるので, 区別して"Super"という名称がついている(文献によっては"Very"が用いられている). $${m=0}$$のときは拡散係数は$${D(u)=u^{m-1}}$$を採用して

$${\partial_t u = \Delta(\log{u})}$$

となり, Logarithmic Diffusion Equationと呼ばれる.

次回以降では, $${m > 0}$$のときにこの方程式のもつ特徴である質量保存則, すなわち任意の$${t>0}$$に対して

$${\displaystyle \int_{\mathbb{R}^N}u(x,t)\ dx = \int_{\mathbb{R}^N}u_0(x)\ dx}$$

が成立することの証明を紹介する. また, Fast Diffusion Equationでは$${m}$$がある値を境に大きく性質が異なることについても述べる.

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