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#2 「鎌倉商工会議所 久保田陽彦会頭に学ぶ これからの鎌倉」

感謝の気持ちを大切に、「守る」と「革新」を見極める


 8年ほど前から鎌倉商工会議所の会頭を務めさせていただいていますが、当時は鎌倉の方々をほとんど存じ上げない状況でした。父も会頭を長く務めていたので、いま思えば、期待をしていただいた上での抜擢だったのかもしれません。


 鎌倉というまちは、エリアによって活動や意識などが分かれているところがあります。鎌倉商工会議所の会頭としては、そういった敷居を無くして、“オール鎌倉”で、鎌倉の経済を活性化していきたいと考えています。
そのために、「どこそこのエリアだから」と言った意識は持たずに、鎌倉全体のいろいろな方とお会いして、お話をするよう心がけています。


 現在は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」鎌倉市推進協議会の会長も仰せつかっています。協議会の一番の仕事は、大河ドラマ館を通じて、コロナで疲弊している鎌倉を元気で明るくするための起爆剤の一つになることです。観光がすでに成り立っている鎌倉において、民間ならではのやり方で大河ドラマ館を運営していけたらと考えています。


 大河ドラマ館にたくさんの方にお越しいただきたいのはもちろんですが、大河ドラマ館を起点にして、鎌倉市民の皆さんにも、観光客の方々にも、もっと鎌倉を回遊してもらえたらと思います。
私は鎌倉に住んで60年以上になりますが、「鎌倉殿の13人」のおかげで、鎌倉の中で新しい発見ができるようになりました。まだ知らない鎌倉が、こんなにもあったのかと驚いています。
ドラマのおかげで、「この場所で、こういう出来事が起こった」というイメージもしやすいと思うので、ぜひ、鎌倉の様々な場所に足を運んでいただき、お楽しみいただけたらと思います。


 「鎌倉殿の13人」からも鎌倉の歴史を知ることができますが、古都として守るべきところは守り、革新させるべきところは革新させるという、メリハリが大切ではないでしょうか。そうでないと、鎌倉の経済は衰退してしまいます。鎌倉商工会議所の会頭として、強く思うところです。


 鎌倉は全国でも名前の通るまちなので、鎌倉が元気になれば神奈川が元気になり、日本も元気になる、と思っています。そういう意味で、鎌倉商工会議所や、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」鎌倉市推進協議会が果たすべき役割は大きいです。

 私は豊島屋の社長でもありますが、自社の商品が売れればそれで良い、とは、まったく思いません。鎌倉に住んでいる方々、鎌倉で働いている方々、鎌倉に来られる方々、すべての方々が笑顔になれる鎌倉にしたい。そういう気持ちを持って、日々の仕事に取り組んでいます。


 商売をさせていただいている鎌倉というまちに、とても感謝をしています。また、初代が豊島屋をつくり、鳩サブレーをつくったことにも常に感謝を忘れないようにしています。
私がいま、ここにいるということだけでも、感謝です。現代に生きる人たちは、そういった感謝の気持ちを忘れているような気がしてなりません。


 私の信条は、「辛い、苦しいは、絶対言ってはいけない」です。先人は、私とは比べものにならないほど、辛く苦しい思いをして、鎌倉や日本を育ててきてくださったと思うのです。それを思えば、私が辛い、苦しいとは言っていられません。


 豊島屋の初代が残してくれた言葉も大切にしています。その中の1つですが、「枝葉は枯らしても、幹は枯らすな」は大切な教えです。
豊島屋にとっての「幹」は、鳩サブレーです。お客様から様々なご要望はいただきますが、絶対に変えません。あの味で、あのサイズでなければ、鳩サブレーではないのです。
創業以来、鳩サブレーの配合、我々の業界では「ワリ」と呼んでいますが、一度も変えたことはありません。
ただ、鳩サブレーは、まだまだ美味しくできるとも思っています。原材料等、より良いものをより美味しく出来るものを探し続けたいです。


 鎌倉も、豊島屋も、守るべきものと革新すべきものを見極める必要があるという点で同じです。次の世代の方々にも、その目を養っていただけたらと思います。

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