#7 鎌倉市観光協会会長 大森道明氏に学ぶ「観光地・鎌倉にあって、鎌倉市民のための観光協会を目指す」
五年ほど前に鎌倉市観光協会の会長職をお受けしましたが、コロナ禍になってからはいろいろと難しい面が増えました。鎌倉市観光協会としては鎌倉まつり、鎌倉花火大会、鎌倉薪能に関わっていますが、これら60年、70年と続いてきたイベントも、中止や無観客での開催などにせざるをえませんでした。
ただ、私としては、時代の流れで人々の生活様式も変わってきているので、伝統あるイベントも形を見直すべきではないかとかねてより考えており、良い機会を得たと前向きに捉えています。
これまでは、「鎌倉」というだけでお越しになる観光客の方も多かったですが、今年は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が放送され、ドラマの中で、鎌倉市民でも知らなかった歴史を深く掘り下げて描いてくださっています。鎌倉市観光協会としては、そういったあたりも広くご紹介することで、鎌倉の真の魅力を観光客の方々に知っていただく役目があると思っています。
私は鎌倉生まれの鎌倉育ちですが、鎌倉の一番の価値は、やはり海があることではないでしょうか。同じ古都である京都と奈良には、海はありません。大学時代は東京に住んでいましたが、夏に鎌倉へ帰省して、横須賀線のホームに降りると海風を感じ、「ああ、鎌倉に帰ってきたんだ」と感慨深く感じたものです。海は、人を惹きつけます。
鎌倉に住んでいる市民は、真摯に、真面目にまちのことを考えていらっしゃる方が多いと思います。生活道路が混むとか、江ノ電さんに乗られないとか、鎌倉駅が混雑して危ないとか、そういうことを発信される市民の方がたくさんいらっしゃいます。これらは苦情ではなく、鎌倉のまちを少しでも良くして、鎌倉に来られる観光客の方にも安心して楽しんでもらいたいという気持ちの表れです。
そんな鎌倉市民の皆さまのために、鎌倉市観光協会としては、観光地・鎌倉に「住んで良かった」と思っていただける環境を整備する必要があります。会長職をお受けした時、松尾市長と、市議会議員の各会派の皆さんに最初にお伝えをさせていただいたのは、鎌倉海浜公園水泳プールについてです。あそこは、私がまだ子どもの頃ですので70年近く前になると思いますが、夏の国体のメイン会場として利用され、開会式には当時の天皇陛下も来られました。そんな、鎌倉市民にとっては誇りを感じる場所ですが、現在使用できるプールはごく一部になってしまっています。ここの年間の維持費を松尾市長や市議会議員の皆さんにお聞きしたのですが、私は、道の駅のような施設にして、市外、県外からの車やバスを収容したら良いのではないかと考えています。無料や格安で駐車していただくことで、滞在時間が長くなれば、鎌倉でお金を使っていただく機会が増えて、経済効果が期待できます。さらに、施設には鎌倉市の事業者に入ってもらい、そこで働く方も鎌倉市民を優先すれば、法人事業税などが上がりますから、それらのお金を保育園や学童保育、高齢者施設などに回せば、観光地・鎌倉に住んでいて良かったと、市民の方々に思っていただけるはずです。
私が子どもの頃、寒い冬に父といっしょにお風呂に入ったことを良く覚えています。昔のお風呂で、火をつけて、お湯がじわーっと温かくなっていくのですが、その温かくなったお湯を、父は私の方に手で流してくれるのです。父は寒くないのかな、と心配をして聞いてみると、私に流してくれたお湯が父の方にも戻ってくるから大丈夫だと。温かくなったお湯を、私はいいですからどうぞ、とやると、自然と自分のところにも返ってくる。ちょっとした思いやり、お互いの気遣いを、父との入浴で学びました。これらができるようになれば、電車に乗る時も、歩いていても車に乗っていても、事故やトラブルを避けることができます。引いては、国と国との関係、今はロシアとウクライナが戦争をやっていますが、ああいうことも無くなるのではないかと思います。
私は鎌倉学園中学校で、剣道部に入りました。たまたま強い部で、県大会や関東大会、全日本の大会などに出る機会がありましたが、そこで感じたのは、外へ出て行って空気を吸うことが自分にとって将来、必ずプラスになるということです。若い方々には、「誰のために、何をやるか」を考えて、いろいろなところでいろいろな経験を摘んでいただけたらと思います。