佐藤泰志作品集
尊敬する知人が大部の評伝を上梓されたので、まずは作品をと思い、恥ずかしながらこれまで未読だった佐藤泰志(映画の原作として「きみの鳥は歌える」を既読だったことを、すっかり失念。情けない😢)作品集を急ぎネット購入し、少し時間をかけて、8篇の小説を読了した。やはり評価の高い「海炭市叙景」が読み応えあり、味わい深く、ここに至る不明を恥じるというより悔やむ気持ちを強くもった。元日から初夏にかけての18の物語が、巧みに連環し、人生の実相を描き出す筆致は穏やかで、奥深く、自死した作家の作品という先入観もあるせいか、立ち入ってはいけない深淵へと牽引されるような語り口を随所で看守させられ、それ故なのだろう、読み進めながら内側に湧出する物憂さに絆され、嬉しい読書時間を過ごすことができた。ただ、正直、ここ最近、次々と諸作が映画化される本当の理由まで納得はできていない。引き続き作品集の詩やエッセイを読みながら考えて、知人の大冊に進むことにしよう。
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