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『クイーンズ・ギャンビット』(ウォルター・テヴィス、小澤身和子訳 新潮文庫)レビュー

『クイーンズ・ギャンビット』(ウォルター・テヴィス、小澤身和子訳 新潮文庫)読了。Netflixのドラマを妻に教えられ興味深く観終わってから原作を、やはり妻に渡され読み始めると、あまりの面白さに、久しぶりの一気読みで、自分ながらビックリ。実に品のいい、こなれた訳で、チェスに疎い者でも数々の対局描写がすんなり頭に入ってくる。しかも読了後、作者がポール・ニューマンの傑作映画『ハスラー』の原作者と知って、ドラマがなかったら80年代の佳作の邦訳はなかったかも知れないと、二度ビックリ。日本にあってのチェス人口とも関係しているのだとしたら、ドラマの果たす役割は多様に大きいものがあるな、と思わされたことだった。ひとりの女性の成長譚として読み応え十分。終盤、パリで大会に臨んでの主人公の内面描出には心浮き立つものが溢れているし、チェスを教えた恩人の死を知らされ、最初の場に立ち戻って恩人の思いの証を見つける場面の抒情も胸滲み入るもの深い。ドラマ共々極上のエンターテイメントである。

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