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#どうする家康【天下分け目】

大軍に囲まれ、銃撃で致命的な傷を負ったというのに、鳥居元忠は笑みを浮かべていた。
「数えきれない仲間が先に逝った。ようやくわしの番が来たんじゃ。うれしいのう」

石田三成の逆襲に備え、家康から伏見城で留守を守るよう命じられた時、腹をくくった。
「わしは挙兵したいやつはすればいいと思っております。殿を困らせるやつは、このわしがみんなねじ伏せてやります」

家臣の中では優秀さが目立つ存在ではなかった。
「わしは腕が立つわけでも、知恵が働くわけでもない。だが、殿への忠義の心は誰にも負けん」

50年もの間、家康に仕えた。
若かった家康を人質にしていた今川義元が討たれた時も、桶狭間を戦った。
敵が押し寄せてきた伏見城では、家康のために少しでも時間を稼ごうと、わずかな兵たちとともに、10日以上粘り続けた。
いよいよ城が攻め落とされようとしていた時には、悔しがるより、限界までやりきった満足感を口にした。
「三河の荒れ地で、わらの具足をかぶって戦っていたわしらが、天下の伏見城を枕に討ち死にできるなんて、こんな幸せなことはねえわ」

伏見に赴く前、今は亡き酒井忠次ら古参の家臣たちと同じように、家康に言い残した。
「殿、宿願を遂げる時でございますぞ。いくさなき世を成し遂げてくださいませ」

自分を敬ってくれる目の前にいる者たちだけでなく、天から見守ってくれている先人たちの思いにも支えられ、家康は天下分け目の戦いに挑むことを決めた。

#どうする家康
#天下分け目

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