すべるマンホールの蓋

16歳の時。小雨降る朝。駅まで原チャリで向かっていた。途中にあるトンネルは雨の安地で生暖かい。

(家から駅までトンネル欲しいな)

と思った。トンネル出ると緩い左カーブがあり、そこにはマンホールがあった。減速した後輪が乗り、雨で摩擦が効かない金属とゴム。つるんと滑って転んだ。

(あ、痛い)

服は破け、肘を打撲、腕は血だらけ。後ろを走ってた車が急ブレーキをかけて、

「大丈夫??!」
「大丈夫です」

と大丈夫じゃないのに咄嗟に大丈夫と言ったなぁと。コンビニから帰る途中、満月を過ぎたレモンみたいな月を見て思い出した。

それからというもの、雨の日にマンホールを踏むのが怖くならないよう、雨の日にマンホールを踏んでる。

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