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なぜ、ぼくらは「マネージャー」という言葉を使わないのか?

「上下」ではなく「隣どうし」の関係でありたい

 UUUMでは、クリエイターのマネジメントをする人のことを「マネージャー」とは呼びません。「バディ(相棒)」と呼んでいます。

 なぜ「バディ」と呼ぶのか?

 芸能界でよく聞く「マネージャー」という言葉は、どうしても「上から」というイメージがあります。

 でも、クリエイターもマネジメントする側も、どっちが上か下かではなく、あくまで「隣りにいる」ような関係性。ぼくらはもっとクリエイターに寄り添った存在でありたい。ということで「バディ(相棒)」という言葉を選んだのです。

「バディ」を使い始めたのは、会社を設立して1年くらい経ったころ。それ以前もクリエイターが海外っぽく「ヘイ! バディ!」とたまに言っていました。「なんか、バディっていいよね」とみんな言っていたので、それ以来ずっと「バディ」を使うようにしているんです。

 バディという概念は、クリエイターのことを第一に考えるUUUMの哲学の根幹に近いものなのです。

大食いユーチューバーの食料を買ってくる

 ぼくの最初の仕事は、ヒカキンさんの会社をサポートすることでした。それがいつしか、同じように「サポートしてほしい」と考えるクリエイターさんがたくさんいることがわかってきた。そこでUUUMと各クリエイターの個人事務所が契約を結んで仕事をするようになりました。

 クリエイターのサポートといっても、最初はホントに何をやったらいいかわかりませんでした。

 ぼくらは別に芸能界あがりでもなんでもありません。クリエイターが何を求めているのかもまったくわからなかった。とにかく、最初はヒカキンさんに「何をしてほしいですか?」「何が足りないですか?」と聞いていました。

 仕事をもらってくるのは、そこまで難しくありません。あとはもらってきた仕事を最後まで遂行するためにサポートすればいいのですが、それが何なのかがわからなかった。たとえば役者さんであれば「稽古につきあう」など裏方で何をすればいいかイメージできます。でも、ユーチューバーの場合は、編集以外で「裏方」として動くような場面もない。本当に最初は手探りでやっていたのです。

 よく面接のときに「バディって、どういうことをするんですか?」と聞かれます。ぼくは「毎回、担当するクリエイターによって違います」と答えています。

 たとえば、大食いをネタにしているクリエイターだったら食料を買って持って行くこともあるかもしれないし、「河川敷で動画を撮りたい」と言われたら川に行ってカメラを回すときもあるかもしれない。

 ヒカキンさんのような有名クリエイターであれば、テレビ取材の事前打ち合わせをしたりすることもあります。テレビのディレクターさんに「これを伝えたい」「これはふだん話してないことだからカットしてほしい」などと伝えたりするのです。

 ほんとうに全員、サポートの仕方が違うんです。よって、つねに担当のクリエイターがいかに動画をつくりやすいか、クリエイティブなことをしやすいかを考え続けて、こちらができるかぎりのことをやってあげるわけです。

50代以降の人生設計まで一緒に考えたい

 そのためにもまずは、とことんクリエイターと話をすることです。そして、やりたいことのための目標設定、道筋をつくってあげます。

 あと、大切なのはクリエイターの人生まで面倒を見る覚悟を持つことです。たとえばチャンネルの登録者数が100万人とか200万人に到達したからといって、その仕事をやめるわけにはいきません。人間誰しも50代60代になっても仕事をするわけです。

 どんなクリエイターも「チャンネルを大きくすること」をゴールに突き進みますが「大きくしたあと、次どこ行くんだ?」という壁にぶつかることになります。すると、必然的に今度は「人生設計」みたいなところにも話が入っていきます。

 クリエイターからは人生のターニングポイントで人生相談されることがあります。「大学卒業したあと、就職するかどうか?」「30代になって結婚するかどうか?」「出産をするかどうか?」……そんなときは、ぼくのほうが人生経験は少しだけ長いのでアドバイスします。それは「仕事として」というよりも「人生の先輩として」です。

 ぼくは、もしユーチューブがなくなったとしても、クリエイターと一緒にやっていきたい。だから、人生相談も親身になってやりたいなと思っているんです。

「うーん、最近かわいくないからな……」

 このあいだクリエイターの女の子とランチしていました。

 彼女は「モデルになりたいんですけど、どうすればいいですか?」と言います。ぼくは「うーん、最近かわいくないからな」と率直に言いました。

 彼女は昔、ユーチューブで「男ウケ」するチャンネルをやっていました。みんなから「かわいい」と言われていた。だから本人としては「なら、ちゃんとモデルとしてやっていきたい」と思ったのでしょう。

 ただ「モデルになる」というのは簡単なことはありません。モデルは「男ウケ」だけではなく、「女ウケ」もしないといけません。

 彼女は「ユーチューバーにしては意外とかわいい」ということでウケてきたんです。だから、当時からモデルみたいな仕事もたまに来ていました。ただ「じゃあ、モデルの道にいきます」となると、今度は「10代のときからモデル一本でやってきた」ような人たちとガチで戦わなきゃいけなくなります。それ、絶対負けるよね? と思うわけです。

 クリエイター本人は、自分のことを客観的に見えなくなるときがあります。それは仕方のないことです。もちろん正直に、率直に伝えることは、本人としてはショックでしょう。でも、そこでウソをついても本人のためにはなりません。ときには、そういう厳しいことを伝えてあげるのも、バディとしての大切な仕事なんです。

 いちばん悩ましいのは「これは仕事なのか、それともプライベートの問題なのか」という境に入っていくときです。

 たとえば「男女間のプライベートの問題」というのは、ぼくらからするとまったく関係ないことではあります。ただ、それによって「動画の投稿本数が落ちました」と。もちろんそれも、最終的には個人の問題なのですが、それによって「クリエイターとしての活動に支障が出ました」となると話が変わってくる。それは「UUUMと専属契約しているクリエイターの問題」になってしまう。なにかあれば「UUUM所属のクリエイターが……」というカタチで世の中に出ることになります。だから、そこは先回りして対処しておく必要があるのです。

 しかも、そういう問題が起きたときって、みんな隠したくなるんですよね。できることなら「問題を起こした人間」として思われたくないんでしょう。でも、ぼくらとしてはクリエイターに「何も思わないから、可及的すみやかに教えてください」と伝えています。

お金まわりも当然サポート

 お金まわりもサポートします。会社をつくったり、節税をしたり。おすすめの税理士を何人か紹介したりします。

「どこまでが経費か」というのは、税理士さんじゃないとなかなか判断できません。「これは衣装かどうか?」「大食いの映像で使ったら食料も経費になるのか?」など曖昧な部分もけっこう多い。「UUUMはそこまでするの?」と思われることも多いのですが、お金の問題で揉めると、のちのち全部こちらにまわってきます。最終的にやらなきゃいけないぐらいだったら、最初からやっていたい。360度見ていたいと思うんです。

 何度も言いますが、バディとクリエイターの付き合い方は全員違います。「最低限これだけはやる」というのは、月イチの定例会議くらいです。そこで会社としての共有事項とかリスク事項とかをクリエイターに伝達します。その他は、本当にケースバイケースなんです。

 もちろん月イチしかクリエイターに連絡しないわけではなく、なにかにつけて仕事の連絡をしますし、仕事じゃなくても作った動画が「これちょっとコンテンツ的にちょっと危なそうだな」と思えば連絡します。

 こういったコミュニケーションはルールとして決まっているようなものではありません。友だちや家族、彼女とかと「週に5回は連絡しよう」と決めたりしませんよね? それと同じです。「月に1回は家族で集まってご飯食べようね」と決めているけど、それ以外でも結局なんだかんだ会ってるよね、みたいな感覚なのです。

失敗する仕事は受けない

 おかげさまで「UUUMに所属したい」と思って来てくれるクリエイターさんはたくさんいます。「やっぱり個人では限界がある」「もっと、こういう大きなことをしたい」「UUUMに所属すればいろんなことができると思って来ました」と言ってくださいます。

 ただ、ぼくらも「できることとできないこと」があります。苦手なことも絶対にある。よって、UUUMに所属してもらっても、あとから「無理でした」となるようなクリエイターさんはお断りすることがあります。所属してもらっても、結局やりたいことが叶わなかったらお互いに嫌な気持ちになるだけだからです。

 これまでのnoteでも書きましたが、UUUMは「失敗する仕事」は受けません。どんなにお金を積まれようが、受けないものは受けない。どんなに素敵なクリエイターさんでも、ぼくらが伸ばせないクリエイターさんというのがいるわけです。たとえば「海外で活躍したい」という人がいても、うちはやっぱり得意ではない。そういうときは最初から「うちじゃないですね」と伝えるようにしています。

 失敗する仕事はしたくない。クリエイターさんを選ぶときも、クライアントさんを選ぶときも、うまくいかない仕事は最初からやらない。

所属した時点でやるべきことは見えてくる

 逆にいうと「やりたいことがあるから、UUUMに所属したい!」と言って所属してくれたクリエイターは、その後がスムーズです。「じゃあ、そのやりたいことを叶えていきましょう!」という会話に必然的になるからです。やりたいことを叶えるために「ユーチューブの再生回数をあげましょう」とか「チャンネル登録者数を◯万人にしましょう」とどんどん会話が増えていくはずなんです。

 世の中、ボーッと生きてる人間どうしがすれ違っても会話は生まれません。でも、同じ志や方向性を持っている人たちが集まれば、無限に会話が生まれるはずです。上昇志向の人どうしが合えば、かならず話すことはあるはずなんです。

バディは「編集者」に似ている

 バディがやることは、ケースバイケースです。とはいえ、UUUMも会社なので「目標」は設定しています。

 たとえばクリエイターの目標が「10年後にこういうふうになりたい」ということであっても、10年後にそのバディを評価するのは非現実的です。もちろん会社なので、3ヶ月とか半年スパンで評価することになる。ただその評価基準はけっこうバラバラです。「じゃあ、この時点までの再生回数で評価するね」とか「グッズをリリースするから、その売上げね」とか。それもまたクリエイターのレイヤーによってバラバラなんです。

 いま所属したばっかりのクリエイターだったら「まずは再生回数を伸ばしていこう」となります。ただ再生回数というのはがんばっても伸びるものじゃないので「まずは、本数を増やすことから始めましょう」という目標になることもあります。そこらへんはちゃんと会社として管理しています。

 ときに「クリエイターのやる気がなくて、ぜんぜん動画をあげてくれません」みたいなことがあります。「だから、再生回数が未達でした」ということもある。それも仕方のないことだと思うんです。そうなると次にやるべきことは「やる気をあげること」になります。

「バディ」は、作家についている「編集者」に似ていると思うんです。編集者であっても「売上げをたてなきゃいけないけど、作家さんがぜんぜんやる気ありません」ということがあります。じゃあ、未達でも会社は許してくれるか、というと、それはまた別問題です。

 編集者との共通点はすごく多いです。

 誰かから「出版社とUUUMって何が違うんですか?」と聞かれたことがあるんですが、ぼくはちょっと考えて「ほとんど一緒だな。紙かデジタルかの違いくらいじゃないかな」と答えた記憶があります。

 編集者が作家をやる気にさせていい作品を生み出すように、バディもクリエイターをやる気にさせていい作品を生み出すように動きます。いいものを生み出すために、クリエイターが気持ちよく制作活動できるように、あらゆる動きをする。それがバディの仕事です。よって、単純な目標管理、数字の管理だけでは語れないものなんです。

クリエイターの活動は「Slack」で管理

 ぼく自身が「バディ」として仕事させていただいたのは、最初の8人ぐらいまでですかね……。ヒカキンさん、ジェットさん、ABTV……そう、初期メンバーですね。たぶん、佐々木あさひさん、瀬戸弘司さんくらいまで。そのあとは、さすがに手が回らなくなりました。LINEの通知がとんでもないことになってしまい。

 本当に初期の頃は、ぼくがLINEでクリエイターさんとやりとりしてたんです。で、1人じゃ難しくなってきて、たとえば「ヒカキンマネジメント」っていうLINEグループをつくって、サポートしてくれる人を入れて、そこで会話をするようになりました。

 ただそうすると、新しく入ってきた社員はクリエイターのLINEを知ることになる。それは、個人の情報なんですよね。「いつか社員が辞めたときに情報管理とかプライバシーはどうするんだ?」という問題が発生したんです。

 そこで、LINEのビジネスアカウントなどいろいろ検討した結果、最終的にSlackでやりとりすることにしました。クリエイターとSlackでやりとりをしている会社は、芸能界を見回してみても珍しいんじゃないでしょうか。

 Slackには「クリエイターNo.1 ヒカキン」から始まって、ダーッと専属クリエイターが300人以上並んでいます。そこでは「こういうファンレターが来てましたよ」とか「ツイッター見ましたよ!」「動画が急上昇しましたね!」みたいなやりとりがされています。

 あと、タスク管理ツールとしては「Trello」を使ってます。動画制作の進捗管理はTrelloを使ってたりします。「動画つくりました!」「企業から修正きました」みたいなやりとりはこっちです。

「バディ」に正解はない

「バディ」というのは、経理などの仕事とは違って「何が正解か」がわかりにくい仕事です。どこまでいっても属人的なので、けっこう差が出ます。

 ひとつは「経験の差」があります。会社の初期のことを知っているかどうかで、やっぱり動き方は違う。これまでのトラブルを共有をしているかどうかでも、違ってきます。そんな中でも、クオリティを上げていくために「マニュアル」をつくったりはしますが、それは本当にミニマムなレベルです。

 社員が新しく入ってきたら上司に教えてもらって、上司の担当クリエイターを引き継いで……という。作家と編集者の関係に似てますね。

 クリエイターさんは人間です。モチベーションのあがり方もまちまちです。だから最低限のマニュアルはあるけれど、あとは臨機応変にやるしかない。クリエイターさんだって、ぼくらに会うまでの人生のほうが長いわけです。そこで「個性」というのはだいたい形成されてるわけです。ぼくらより頭がいい人もたくさんいます。だから、全員に同じ話し方をしてもダメなんです。

 クリエイターさんから「バディを替えてほしい」というのも、ケースとしてはあります。「仕事の良し悪し」というよりは、やっぱりどちらも人間なので、バディが普通に言ったつもりでも、クリエイターさんによっては「冷たく聞こえる」と感じることもあるでしょう。

バディに向いているのは「目立とう」という意識が0%の人

 よく「どういう人がバディに向いてますか?」と聞かれます。

 ひとつは「自分が目立とう」という意識が0%の人です。自分が前に出るのではなく、完全に「サポートをしたい」と言える人。「サポートした人が輝くことが自分の幸せです」と心の底から言える人がバディに向いています。

 2つめは、うまく言葉にしにくいのですが、やっぱり「センス」のある人です。

 最低限の仕事というのは、会社で教えることができます。でも「気が利くかどうか」というレベルになると、どうしても「センス」が問われる。どう生きてきたかが問われるわけです。

 ゲーム実況をするクリエイターのバディだったら、やっぱりゲームを知っていないといけないし、ゲームが好きじゃないと会話ができない。仕事のスキルうんぬんではなく、そこは人間のセンスや好奇心、どれだけクリエイターと話ができるかということが問われてくるんです。

「深夜3時まで話し合ってました」

 やっぱり「いいバディ」というのはいます。タレントのマネージャーと同じように「売れてなかったクリエイターを売れっ子にしました」というバディはホントにいるんです。もちろんクリエイターの努力も伴わないといけない。だから「全部、バディの手柄か?」というとそれは違いますが、一方で「この人がいなければ、このクリエイターはここまでにはならなかっただろうな」と思わせるバディもいるわけです。

 たとえば、フィッシャーズは登録数が10万人くらいのときからバディがついて、いまや585万人です。フィッシャーズのバディは優秀で、東海オンエア(登録数479万人)の担当もしています。ジャニーズ事務所から来たバディなのですが、やっぱり優秀ですね。

「優秀」というのはどういうことかといえば、さっき言ったように、クリエイターとトコトン話して、ちゃんと道筋をつくることです。きちんと指摘できること、必要なときに怒れることです。

 ミスがあったときは「なんでそうなったのか?」を徹底的に話し合うことが大切です。フィッシャーズのバディは「深夜3時まで話し合ってました」と言っていました。「そんなに話したの?」「いや、撮影が終わったのが深夜1時過ぎだったんで……」みたいな。

 表面的な付き合いで終わらせずに、「人と人」として正面からきちんと向き合える人が「いいバディ」であり、いい結果を残すことができるんです。


 ……と、偉そうに聞こえたかもしれませんが、まだまだぼくらも至らない点はたくさんあります。ときにはクリエイターに迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。それでも信じて一緒に歩んでくれるクリエイターには本当に感謝しています。ありがとうございます!

 これからもぼくたちは、大好きなクリエイターとともに歩んでいければと思っています!


今日はここまで。
いつも質問頂くバディについて書いてみました。そしてそんな時だからバディの募集もしたいと思います。ぜひ興味ある方はこちらからエントリーください。一緒にクリエイターをサポートしましょう。


編集協力:WORDS


いつも読んで頂きありがとうございます!どうでしたか?今日のnoteは。またスキ・いいね・コメントのほどよろしくお願いします。そして昨日はnoteを読んでくださってる方との忘年会について書きました。まだエントリー間に合いますのでこちらもぜひ!
それではまた明日。

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