不満駆動による組織改革。

「良いことなのだから、そうするべき」と思う方は世の中に大勢いる。いるのだが、世の中には良くないことも多々残っている。

例えば「自転車を運転している時、スマホを使うのは良いことか」と尋ねられれば、近頃は幼稚園児だって「ダメなことだ」と答える。けれど、スマホのながら運転は、今日も駅前で行われている。

スマホのながら運転と、組織改革に何の関係があるのか。

組織とは、自分と他人です。

自分を変えることは難しいけど、出来なくはない。ちょいとアイデンティティを壊せば、それを埋めようとしたり、変化させて対応しようとする仕組みがあるので、自分で断食してみるなり、ボクシング始めるなり、インドに行くなりすれば「ああ、なんとちっぽけなものにこだわっていたのか」と悟ったり勘違いしたりして、価値観が変化し、習慣が変わる。これを自分一人でやる分には誰も文句は言わない。

しかし、他人をこれに巻き込むのはとても難しい。抵抗されるからだ。
どこからか黒船がやってきて大砲の一発二発を、アイデンティティの天守閣にぶちこんでもらえれば簡単な話かもしれないが、それはそれで攘夷志士が大量に湧き出してラストサムライするかもしれない。過度に抽象化すると、このようによくわからない話になるので、よろしくない。

「それでも、良いことはするべきだし、良くないことは改めるべきだ」

なるほど。では「1時間早起きして30分ランニングすることは健康に良い」と様々な研究により明らかになっているので、明日からあなたもやるべきだ。

「うるせえ、私は朝は弱いんだよ」

そういえば、未だかつて「私は朝が強い」という人に会ったことがない。皆、一様に「朝は弱い」とおっしゃる。もしかして「朝は弱い派」が圧倒的多数であるにも関わらず、少数の「朝起きてしまう派」が強いリーダーシップを発揮するがゆえに、朝早くから起きる羽目になっているのではなかろうか。

話を戻す。

『「朝は弱い」という体質の問題があるから出来ない』という話。体質の問題であれば仕方ない。「ひげを伸ばすな」と言われても体質の問題であるし、「ハゲるな」と言われても体質の問題であるので、どうしようもない。

これを、強引にどうにかしてしまおうというのが「他人を良くする」ということだったりする。無茶苦茶な話だと思うかもしれないが、そのとおり、無茶苦茶な話です。

才能は目に見えない。例えば「英語を学ぶ才能」なるものがあったとする。人によっては、学んだ英語がすぐ身につく人もいるし、そうでない人もいる。この『そうでない人』が、どの程度そうでないのか、は目に見えないのだ。勉強の仕方が悪いのだ、要領が悪いのだ、という可能性は十分ある。しかし、「ひげを伸ばすな」状況になっている可能性もまたあるのだ。

組織改革というのは、この「ひげを伸ばすな」を他人に従わせることだと思っている。「全員で同じ目標に向かって一丸となって」という理想的な変革は、実際にあるとすればそれは信仰とかそういう類だと思う。教祖になりたいなら、それでも良いとは思う。(そういう組織もある)

他人に従ってもらうなら、何かしらの代価が必要になる。そうでなくては、他人にとっては理不尽な要求でしかないので、不満を抱く。

しかし、この不景気ジャパンで代価なんてそうそう用意できるものではない。時間のリミットもある。となると、相手の不満に対して、こちらの不満をぶつけて相殺するしかない。

「私の方が我慢してるんだ!」

離婚寸前の夫婦ゲンカのようであるけれど、実際そのようなものである。これで黙ってくれない人には組織から出ていってもらうしかない。言葉を尽くしても、気持ちを尽くしても、限界はある。

そうして、黙ってくれた人だけを残して、再出発する。組織改革ってそういうものだと思っている。みんな仲良くお手手つないで、と行ければ最高だし、そんな方法があるなら見てみたい。(本心)

なお、本来、組織のリストラクチャリング(再構築)ってそういう変革に伴う人員整理を指すのだと思ってる。年齢で一律に整理しようとしてる会社を見ると、何がしたいんだろうか、と思ったりする今日このごろ。

「こんな組織に変えたい」という計画を表明してから「ついてこれない人は辞めてね」が順序じゃねえかなあ。

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