現代的怪人1 「効率人間」
彼は、電車に乗るときには、必ず降りる駅のホーム出口に一番近い車両をチェックするタイプ。
空気抵抗を軽減する為、髪型は流線型。
効率よく生きていく為に、話す言葉は大抵単語である。
大学を卒業後、A市の事務職員として働いている。
朝は、「野菜一本24時」(野菜ジュース)と、「コメジャイ」(現代的栄養補給食品)で済ます。
通勤は、自宅のアパートから徒歩30秒。
必ず定時一分前に勤退は打刻している。
さて、彼は効率人間でありながら、野心家である。なぜなら、野心家(の中でも、自らを高めることに対する、野心家)であることが、周囲の評価をよりよくし、彼の「若さ」をそれなりに際立たせ、上司からのアドバイス等も得やすくなるためである。つまり、野心家であることも、効率的に現代を生き抜くための必須事項なのだ。
いかにして、効率的に現代社会を生き抜き、自らの心身の保養に努めるか。それは彼にとって生まれながらにしての命題であり、哲学の根幹を成すものなのだ。ちなみに、趣味はエアロビクスと読書、オンラインによる投資事業、著作である。将来的に、不労所得で暮らすことを夢見ている。
そんな彼が就職して3か月が経とうとした頃のことである。
政府が研究を進めていた、新惑星造成計画、通称「蟹」と呼ばれたプロジェクトが、本格的に活動を始めていた。
政府研究なだけあって、倍率はかなり高いが、参画できれば、一生政府のお世話になることができる。
さらなる効率性を追い求めて、彼は政府プロジェクトへの参加を希望するのであった…
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