勇気の花束

みなさんは「中間支援組織」という言葉をご存知だろうか?NPOをはじめとする「何かをはじめたい」「地域をよくしたい」という方々の相談に応じて、アドバイスや関係団体の紹介を行うなど、各団体の活動を促進することで、地域を元気にする組織のことだ。私自身もNPO法人テダスという中間支援組織を南丹市で運営している。


1月、北海道で同様の活動をしているNPO法人ezorockが主催した「GREEN DAY」というイベントにゲストスピーカーとして参加させていただいた。北海道の若者たちと全国から集まった様々な分野で活躍している社会イノベーターたちが意見交換を行い「生きる」を深めるイベントだ。中身の濃い2日間のセッションの中で、大学生を中心とした若者たちはたくさんの刺激を受けたに違いない。
ここに参加した若者たちに限らず、現代の若者たちの多くは、自分が将来どのように生きていけばよいのか、何を優先して考えればよいのか暗中模索している。


我々が大学生の頃、いわゆるバブル崩壊の前後までは、登っていくべき階段が今よりもはっきりしていた。つまり、経済的に豊かになることが幸せにつながる階段であり、できるだけ元気な企業に就職することがその階段を保証してくれるという価値観だ。
しかし、現代の社会は必ずしもそうではない。経済的な豊かさが必ずしも幸福な社会をつくるとは限らないということがチラチラと見えており、それ以外の何かを模索し始めている。


企業の中にも社会貢献に積極的な会社が増え、NPOなど、多様な価値観をもった組織や団体も生まれている。若者たちは、この多様な価値観の中で悩んでいる。社会の課題を解決するために自分は何をすべきか、いやいやその前にまずは自分の生活を守らなければ話にならない。両方をバランスよくやっていくにはどうしたらいいのか?というジレンマだ。
これは、社会が混乱の時代に突入したという見方もできるが、ぼくには時代がひとつ前進し、この若者たちは「正しく悩んでいる」という気がする。偏った価値観にあっさりと流されるよりしっかりと悩む方がいい。


北海道に集まったゲストスピーカーたちの話には、このジレンマを解決するためのヒントがたくさん盛り込まれていた。社会貢献活動そのものを経済活動にリンクさせて継続させる生き方である。しかしまだ、こういった生き方は、経済的安定からは遠く、常に不安がつきまとう。


若者たちは、何かを始めるためには「できる予感」つまり「自信」が必要であり、自分にはそれがまだ足りないと言う。しかし実は、準備万端整い、自信がついたからスタート!という状態になることはまずない。準備や自信が100%になることなどないのだ。ある程度の準備が整ったら次に必要なのは「勇気」である。勇気を出して次の一歩を踏み出せば、踏み出せた自分に対する「自信」が次についてくる。そうすればまた次の「勇気」が沸くのである。こうやってどんどん階段を登ってほしい。


我々大人は、勇気を奮って何度でもチャレンジできる環境づくりや、応援できるヒントの花束を用意しておこう。勇気を与え「ふわふわ」を「わくわく」に変える。これこそが中間支援の真髄だ。

(2016年2月 京都新聞掲載)

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