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私の心にも、春一番。

先日、仲間内で糸島に畑仕事に行って来ました。
春一番が吹いた、暖かい土曜日の事です。
メンバーの中に、いつもお母さんと一緒に来る、知的障がいのある女性がいます。
詳しい年齢を聞いた事はありませんが、きっと25歳の私より、ひと回り以上、年上だと思います。

つくしが採れる、季節。
私と彼女は、たっぷりつくしを収穫し、ビニールハウスの中で2人並んで、下処理を始めました。
知っていますか?つくしって、調理する前に、下処理が必要なんです。「はかま」と呼ばれる皮のようなものを取っておかないと、美味しくないのです。私も、初めての経験でした。
多分100本くらいは採っていたので、2人での作業は結構大変でした。
単純作業で、昔の女性の内職のよう。
簡単ですが、知的障がいのある彼女は時折、全部はかまを取ってしまわずに、次のつくしの作業に入ってしまうので、私のダブルチェックが入ります(笑)

彼女と畑で一緒になった事はありますが、2人だけで作業をしたのは初めて。人見知りしてしまい、最低限の会話だけで、後は黙々と作業をしていたのですが、段々、彼女が私に話しかけてくれるようになりました。
通っている福祉施設での旅行の写真を見せてくれたり、家族で前にハワイに行ったと教えてくれたり、好きな野球選手を教えてくれたり…

私は気を抜くとすぐ、世間話が下手になりがちなので、人見知りしていると思われないよう、出来るだけ自然に振る舞いました

そうこうしながら、結構苦労して作業を終えたものの、その日は食べずに(笑)、畑を取り仕切る方が営むお店にて、翌日食べる事になりました。
お店のオーナーが、つくしを調理しながら、こう話してくれました。

「〇〇ちゃん(一緒に作業をした女性)、あの日とってもよく作業してたの。〇〇ちゃんのお母さんがね、貴方が隣にいたからだって言ってた。」

へぇ。

ほぅ。

私が隣にいたからなのか。
真意は分からないけれど。

何もしなくても、自分の自然な状態でも、人の役に立てる瞬間があるんだ。
昨年末に会社を退職してから、毎朝、社会に何も貢献していない自分と向き合う日々。

「貴方が隣にいたから」

その一言だけが今、脆い心を持った私を励ます、唯一の言葉。
春一番が吹いた土曜日。

私の心にも、少しだけ強い風が吹いた。

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