CEDEC2020事案から考えるゲーム企画書とは?

1、この記事ついて

こちらはCEDEC2020で開催された、一枚で企画書を書くコンテスト「PERACON」で審査員がパワハラにあたるような発言をしてゲーム業界はブラック!とネットで書かれた件を見て思った事を書きます。

長文です

2、それに関して書く理由

私はゲームが好きでゲーム業界にいた(過去形)身です。
あまりにもこの件はもやもやしたので、自身の思っている事をまとめます。今回の問題に関して端的に自分の考えを書くと

「気持ちはわかるけど・・・言葉は選んでよ」

です。

人材育成としてプロから自分の企画書の評価を貰える趣旨なのに、しっかりとした評価がされていない事(一部のコメントに「絵が上手い」とだけありましたが、それ評価じゃなくてただの感想)と、今のご時世で人間面を否定する発言をするのは、あまりにも時代の世相を読めていないので、そこは改善されるべきです。
ただ…失礼ながら応募作品のほとんどが企画書とは呼べない物なので、それら含めた580点と向き合わないといけない事に関してはお疲れ様ですと言いたいです。

以上。
ネットに取り上げられている話題はおしまい。

私が問題視しているのは

・業界が求めている人材を育成出来ていないのでは
・業界を目指す人
は業界が求めている事を理解出来ていないのでは

の2点です。ではどんな人材が必要なのか、少しでも参考になればとの思いで、今回話題の「ゲーム企画書」と、それを主に作る職種「プランナー」の側面で書いていきます。これから業界目指したい人に向けた感じになります。

3、そんな事を書く人って誰よ?

プランナー志望で専門学校を経て、7年ゲーム業界にいました。所属していた会社はディベロッパー(ゲームを受託開発する会社)でしたので、その目線で書きます。

もはや業界から外れた身。師や上司が言っていた事が今になって「あぁ、その通りだったわ」と思い、それを書き連ねていきますので、しくじり先生みたいな感じで読んでください。

4、そもそも企画書って何だろう?

まずは、「求められている企画書のビジョンが違い過ぎるのでは?」と考えていますので、企画書ってこういう物だよね、を書いていきます。

会社によって「企画書」という単語がどういう意味合い持つかはバラバラなので一概には言えませんが、

こういうのが面白くて売れるので開発費ください」と納得させる資料

だと考えています。この場合は製品化のためにマネタイズであったり開発スケジュールであったりも踏まえたガッツリとした物なので、就活やPERACONのようなコンテストの場合は

「自分が面白いと思う物を相手に納得させる資料」

になるかと思います。これ以降は「自分が面白いと思う物を相手に納得させる資料」としての企画書に関して言及します。

5、企画書は説明書じゃない!

で、ここが問題点の1つなんですが、

「ゲームのルールと遊び方を伝えるだけの資料」

を企画書として作る人が多いんです。
企画書で力を入れないといけないのが

「相手に興味を持たせる」
「ゲームの一番の魅力や面白さを端的に伝える」

の2つです。
例えば、あるゲームを全く知らず遊ぶ気のない人に、そのゲームを遊ばせたいと考えた時、手段は幾らでもありますが、選択肢として「真っ先にゲームの遊び方を説明する」なんてないはずです。それはやりたいなと思わせてからの話。
企画書も同様で、読み手はあなたの企画書の内容なんて知らず、興味も持っていません。目を通しはするかもですが、そこで企画書に興味を惹かせる要素がないと、目を通して終わりで読んでくれません。

興味を惹かせる方法は様々なので、これとは断定出来ませんが、クリエイターが企画書で何を読みたいかは大体、「とどのつまり何をするゲームなのか」とか「何が面白いのか」とか「ユーザーにどんな楽しさを提供するのか」とか「そのゲームならではの個性」とかです。・・・たぶん。
少なくとも、ここが一番面白いんですを説明出来ないとプロは興味を示してくれません。

6、相手に見せるから企画書を作ってる

もう1つ、企画書の問題としては
(ここは私も苦手なので人の事言えませんが)

「誰かに読ませる物」になっていない

事です。グラフィカルな物にしろって話ではなく、
「英数字が半角、全角バラバラ」
「誤字、脱字」
「配色が悪くて字が読み辛い」
「変な所で文章が改行されている」
「目線誘導がめちゃくちゃ」
という話です。学生さんによくあります。

これをやってしまうと、「資料としての体裁が成されていない」と評価され、どんなに中身が素晴らしい物でも読んでくれません。

7、誰が企画書を読むのか

大抵はプロデューサー、ディレクターレベルの偉い人が読みます。タスクに追われているのでじっくり読む時間がないのはそうかもしれませんが、「重要ポストほど持っている時間の価値が高い」考えが大事かなと。
その人達が会社の利益を直で左右してますので、その人の時間を浪費させたら超怒られますよ!(私もよく社長の時間を浪費させて怒られた)

要は「そんな人が時間を割いてまで読みたくなるような物に仕上がってますか?」という話です。「全部読んでくれるだろう」という思考で読ませる工夫をしない方は、申し訳ありませんが相手してくれません。わかってくださいの姿勢で作られた物は、誰も興味を示しません。

8、以上を踏まえて

私は企画書はそういう物と考えてます。一枚企画書ならば尚更そこを洗練させないとなので、めっちゃムズイです。すぐに出来たら苦労しないレベルの話ですね。

で、PERACONの作品をざっと見たのですが、大体の物に「それだとインストだよ」とツッコミたい。

良い企画書は読んでる内にワクワクするんです。ゲーム画面が想像出来て、面白いやってみたいなぁと思ったり、遊んでいる人が浮かんで、どういう風に楽しんでいるのか想像出来たり、発想がぶっ飛びすぎてて、続きが気になると思ったり、そんなワクワクする企画書は強いです。

それがない説明書のような企画書が未だにあり続けるという事は、企画書をどういう物として教育を受けているのだろうか…?
または、ちゃんと学んではいるけど体得しにくい所なので上手く出来ていないのだろうか…?

偉そうな事書いてますが、私も前述した強い企画書を作れるか自信ありませんし、難しい所ですからね。

9、強い企画書を作るには?

ついでに、企画書をより良い物にするために何をしていけばいいのかを書きます。

とにかく作って、誰でもいいから色んな人に見せる

これに尽きます。企画書は見せてなんぼです。誰でもいいです。
どういう所を見てほしいのかを伝えた上で企画書を渡し、見ている間の仕草(目が止まったポイントや、ページが複数ある場合はページをめくる早さなど)を観察し、読み終えたら感想を尋ねる。
書いてある事が想定されてない解釈で読まれてたり、全く読まれていない箇所があったりと、色んな発見があります。

たまに学生さんで、会社説明会の時とかに企画書を見せられるチャンスがあるのに「(他の人のが凄すぎて)見せるのが恥ずかしい」という人がいますが、勿体無い!!!!!
どんな形であれ、今の状態を見せてフィードバックをもらうのがどれだけ成長するのかと。見せた回数が多いほど経験値が溜まるのは間違いないです。

10、フィードバックの受け止め方

「やめてしまえ」とまではありませんが、「何がかいてあるのかよくわからない」とか「面白さを感じられない」とか、へこむ感想をもらう事はよくあります。
創作は良い評価も貰いますし、悪い評価も貰います。それは当たり前です。ただ、「クソ!」とか「神ゲー!」とか、一言二言しか言わず根拠を言わない人は相手をしなくていいです。根拠は言うけど、それが人格否定だったり、妙に喧嘩腰だったりする方も、近寄らない方がいいでしょう。
言葉を選び、ちゃんと理由をもって良い点、悪い点、改善点を話してくれる人の「意見」が大事。

あと、根拠をもってちゃんとフィードバックをしてくれる事は、若い人の特権でもあるので、今の内に経験値を稼いでおきましょう。

11、他の人の物を見る

PERACONの良い所は「色んな人の企画書を読める」点です。他の人のを参考にするのも大事。

・自分にはない発想で企画をしている
・この人の企画書は読みやすい
・この人の企画書はわかりやすい

等々、色んな発見があります。とりあえず、トップ10位の企画書は何故評価されたのか、分析してみてはいかがでしょうか。

12、ここで悲しいお知らせです

長々と企画書について書いてきましたが、

業界で企画書を書く仕事はほぼないです。

じゃあ何故プランナー志望者は企画書を書かされるのか。

「ゲームの面白さを的確に捉えられ、それを相手に明確に伝えられる力」
「ゲームをより面白い物にするためのアイディアを出せる力」

を見るため、またはそれを養うためです。

ここを生業にするのが、プランナーです。プランナーの基礎力と言ってもいいかも。つまり、企画書を書けないという事は、プランナーとしての力がないと評価されてしまうんですね。ここでやっと業界諦めろ発言に繋がる。

この辺詳しい事は、後日「プランナーとは何か」を書くので、その際に。

企画書に関して書きたい事は書いたので、ここまでにします。
ここまでお読み頂いた方、最後までお付き合い頂きありがとうございました。

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