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検査済証が無意味になってしまうのでは…

建物を建築して行政庁や民間検査機関で完了検査を受けて問題がなければ「検査済証」が発行されます。

検査済証とは、建築物が建築基準関係の規定に違反していないことを証明する書類のこと。
建物を建築する際は建築確認申請を行い、これから建築する建物が建築関連の法令に違反していないかどうかをチェックします。 建築確認を経て計画に問題がなければ、確認済証が発行されます。
そして、建物の建築完了後に完了検査を行い、そこで問題がなければ検査済証が発行されます。

すなわち検査済証が発行されている建物は、建築後に違法増築などがされていない限り違反のない合法な建物ということですね。

そこで今回のアパホテルのニュース。

なんと「避難用のバルコニーの手摺りが低い」としてホテル側に賠償を命じる判決が出ました。

記事を読んでみると完了検査も受けて「検査済証」も出てるようなのでおかしいなぁと思い、どんな形状のバルコニーか写真を探してみると…

なるほど、確かに手摺りがあってバルコニーっぽいですが、下階に降りるハッチも無く、奥行きもないので「避難上有効なバルコニー」とは言えませんね。

ちなみに避難上有効なバルコニーとは…

要はは無理なく避難できるように作りなさいということ。

また、窓の形状を見る限り、よくホテルなどにある風通しに開けることは出来るが人が出る程には開かず、出るにはロックを解除しないと出られない仕組みになっていると思われます。なのでこのバルコニー的なところにはそもそも出る想定はされていないということになりますね。

そこで今回の経緯を想像してみましょう。あくまで私見なのですが…

・連続する下階の庇的なものをバルコニーっぽい意匠にした→あくまでも避難用のバルコニーではない

・避難上有効ではないが火災時に一時的に退避できる場所として手摺りを設けた→好意的 ※まあこれが今回の判決に至った原因かと思います。手摺りが無ければただの庇なので。

・行政庁又は民間検査機関も避難上有効なバルコニーではないのであくまで意匠としての構造物と判断。

こんな経緯があったのかな。こう考えると確認済証、検査済証が出たのは全く問題ないかと思います。つまりこの段階では違反のない合法な建物とされていたことになります。

今回の判決について私はとても恐ろしく感じました。

というのは…

「たったひとりの裁判官の判断」で確認済証や検査済証があったとしても建築基準法違反とされて損害賠償請求される恐れがあるということ。

それじゃあいったい…

「何のための確認申請なのか?」

「検査済証に意味はあるのか?」

と憤りを感じてしまいますね。

こんな判決が出されてしまうとこれからは…

無理矢理にでも窓から屋根や庇に出られるような形状の場合にはたとえ検査済証が出されていたとしても損害賠償請求される恐れがあるので、全て1.1mの手摺をつけなければならないってこと?

そんなことでは困るので、業界として…いち裁判官でどうこうされる「検査済証」ではなくして欲しいですね。でないとおっかなくて仕事ができません😅

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