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本で巡る狩猟世界 【入門編】

『これから始める人のための狩猟の教科書』

東雲輝之/著
秀和システム 3,024円 ISBN:978-4-7980-4642-6

本書は「教科書」というタイトル通り、散弾銃、エアライフル、ライフル、罠、網とすべての区分から、獲物の回収から解体、動物の習性や銃の歴史、ロープワークなども網羅。
これから狩猟を始めようとする人や、興味のある人には必読の本。まずは本書を熟読し狩猟の全容を頭に入れてから狩猟の世界に踏み込んで欲しい。
ただ、これが全てではない。各地域のルールやマナー、そして狩猟への考え方など、技術よりも重要な事柄があることを忘れないようにしたい。
実は一般向けの狩猟入門書が出るようになったのはここ数年である。それまでは狩猟の本は専門書的扱いであった。
近年、このような入門書が増えているのは狩猟への注目度が上がっている証拠なのだ。

※『これから始める人のためのエアライフル猟の教科書』、『これから始める人のためのわな猟の教科書』も同シリーズで発売中


『狩猟始めました 新しい自然派ハンターの世界へ』

安藤啓一/著 上田泰正/著
ヤマケイ新書 864円 ISBN:978-4-635-51018-9

動物観察としての狩猟。生活としての狩猟。食としての狩猟。若者の生業としての狩猟。狩猟を様々な角度から紹介。自然保護は人間が自然をわずかでも変化させることが自然破壊に通じるという考えに対し、キノコ採りなどで土をほじくることから多くのことを知ることができ、狩猟は動物を深く知ることから自然を守ることへの意識が強まっていくという考えには納得させられる。
狩猟とは動物の立場で物事を考え、野生環境に同化することで獲物に近づく行為なのだ。
また狩猟がただ単に動物を捕らえるだけの行為ではなく、食や環境、農業や山林の被害、自然保護、そして生業など、関わる人々それぞれに狩猟の多様な目的や意識があることも重要であると感じる。


『猟師になりたい!』

北尾トロ/著
角川文庫 691円 ISBN:978-4-04-104770-5

教えてくれる人も、猟師の知人もいない、まったくのゼロから狩猟免許と銃の所持許可を取り、狩猟の世界に入っていったルポ。北尾トロ氏の軽快な文章から、テンポよく狩猟の世界へと歩んでいくように見えるが、コミュニティに入るための人脈作りから始まるところは、さすが多くの取材経験を持った著者ならでは。
狩猟免許と銃の所持許可、銃の購入まで、かかった予算を明かしているのはとても参考になる。
締めて三十万円也。
晴れて狩猟ができるようになっても、右も左もわからず、狩りというものの始まりから終わりまでの流れさえわからない。狩猟の許可を得るまで辿り着いたとしても、実際に猟をするために、教えてくれる人を探さなければならないのは、猟師になろうとした若い人の敷居の高さにつながっているのだろうと想像に難くない。
 また著者が獲った動物の命の話を子どもとするところは興味深い。命を奪うことと、その奪ったあとの行為や、奪わないことの意味など、人間が動物と関わり合うことで人間のエゴが表れ、それに目をつぶることはできないと感じつつも、その折り合いを子どもに説明することの難しさも伝わって来る。


『ぼくは猟師になった』

千松信也/著
新潮文庫 853円 ISBN:978-4-10-136841-2

猟師の高齢化が叫ばれるなか、大学を卒業後、一般の会社には就職せずにそのまま狩猟の世界に飛び込んだ著者のデビューエッセイ。
罠猟がメインととなる著者の狩猟は、入門時から多くの先輩猟師からのアドバイスや、技術を見て体得していく。そうした狩猟を通した人とのつながりは、日常では使われない言葉と行為で交わされる。それが珍しく感じるのは、生き物を殺して食べるという実感が日常で失われているからにほかならない。しかし著者の狩猟と生き物への眼差しはいたって冷静だ。獲物への過度な後ろめたさも、無責任さもない。また説教臭さもない。ただ自らが狩った生き物を食べ、友人にもおすそ分けする。そしてそのような生活の中から、季節の移り変わりを山や生き物から感じていく。読んでいて著者の生活が贅沢に思えて憧れを抱いてしまうなんとも不思議な本である。


**『けもの道 2016特別号』 

※現在2018年秋号が発売中**

三才ムック 1,944円 ISBN:978-4-86199-911-6

狩猟の道具や情報を網羅したムック第一弾。
「大物猟」の魅力から、猪猟のノウハウ、猟犬解説や無線、そしてエゾシカ猟から考える報奨金制度などの諸問題まで、
これから狩猟を始めたい人や、狩猟の世界を大まかな全体像として知りたい人にオススメのムック。
 
特集の「全国猪猟犬 栃木大会」という、「対猪戦闘能力=猟芸を競う、猪猟師と猪犬と猪の祭典」という超アンダーグラウンドな大会があることに目を惹く。
猟犬と人間との関わりもまた狩猟の世界の独特の魅力であることに気付かされる。


※ムック『狩猟生活 vol.1』地球丸(2017年2月)に掲載されたものです。
地球丸より 現在(2018年10月)VOL.4まで発売中


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