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70%の世界

眼鏡をかけるようになって、はや40年。
初めてかけた時、親戚のおばちゃんに「アラレちゃんみたいやね」と言われたっけ…。懐かしいです。
以来はっきりくっきりとよく見えるのが好きで、矯正視力は、1.0から1.2に合わせていました。

近くを見ると嫌な感じがする…いよいよ老眼鏡?!

近眼生活が長かった私にも、ついに転機が訪れました。
「ち、近くが見えにくい…」近ければ近いほど見やすかったのに、ある一定の距離より近づくと、ぼやぼやして気分が悪くなるのです。
一足先に老眼鏡を買った夫に報告し、いよいよ私も老眼鏡デビューする決意を固め、眼科に向かいました。
まずは視力検査から。3mほど離れたところにある「あっち向いてC」の視力検査表を見て、視力を測り、その後、手元の視力を測りました。厚紙でできた見開き数ページの検査表は、初めて。文字の大きさを変えた短い文章、新聞記事や地図がのっていました。何かはわかるもののぼやけて見えるので、思わずひじを伸ばしそうになります。
検査技師の方がレンズを入れ替え、「これはどうですか?」と聞かれました。黒がくっきり!よく見える!思わず「おお!ふふっ」と笑いがもれました。老眼であることを確信した瞬間です。その後、遠くを見たり近くを見たり、様々な度のレンズを試しました。

新しい眼鏡

今までのように遠くをくっきり見るための調整と近くを見るための調整。これをひとつの眼鏡で叶えるとなると、遠近両用眼鏡になります。その度数にはかなり差があるため、その境目は、視界が揺れるようでとても辛いものでした。
そこで、お医者さんから勧められたのは、視力0.7で調整された近視用の眼鏡です。遠くは、危険がない程度に見える。料理をするときは、ちょうどいい。食品の賞味期限を見るときは、眼鏡を外す。そんな生活の仕方を提案されました。
遠くが見えにくくなることに不安がありましたが、外に出るときは、今までのくっきり眼鏡をかければ問題ないので、ゆるい近視用眼鏡を新調することにしました。

0.7の視界

緩く調整された眼鏡は、家事をするときには快適でしたが、テレビを見るときに少し物足りなさを感じました。ドラマで、スマホのメッセージを見るシーンは、録画を一旦停止して、前につめて確認する必要がありました。
外出するときは、1.0の眼鏡にかけ替えました。
あるとき、うっかり0.7の眼鏡のまま買い物に出掛けてしまいました。徒歩なので、危なくはないのですが、いつもよりも景色がぼんやりしています。行き交う車のナンバーも見づらい。向こうから来る人がどんな人か知り合いかそうでないかもある程度距離が近づかないとわからない。ソワソワと不安な気持ちになりました。
店に着き、慣れた店内でお買い物。野菜の鮮度や賞味期限を確かめながら商品をかごに入れていきます。離れた棚の商品は、見えにくいのですが、近くまで寄っていけば問題なし。得られる情報が限られているので、集中できました。
そして、買い物を終える頃には、0.7の世界にも慣れました。

0.7の視界で見えたもの

やがて、徒歩の場合は、0.7の眼鏡のままで外出するようになりました。
自分の視界が丸みを帯びると緊張感和らぎ、なぜか他者の視線から自分が逃れられたように感じられ、外出後の疲れが減りました。
どうやら1.0の世界から0.7の世界への移動したことで、気が楽になったようです。より早くより正確に知ることが危険を遠ざけ、安心につながると思っていたのに、いつのまにか度を超して、見えていないと不安になってしまっていたようです。
必要な時に分だけ分だけ。
何かを新調するときは、より高い機能を求めがちですが、自分にとって今なにが必要なのかを検討する事の方が大事だと感じました。

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