怖い話


これは私がまだ中学生だっだもう半世紀近く昔の頃にあった話です。
当時陸上部に所属していた私は学校から帰っている途中でした。今はもう隣の市に吸収合併された農村の田んぼの中の小川の低い土手の道を疲れた身体でじてを走らせていた時のことです。
砂利道の向こうに小さな橋があるのが見えて「もう少しで家に着くな」と思ったその時でした。向こうの橋のたもとになにやら人影のようなものが見えました。「誰かいるのかな?」そう思った瞬間、その人影らしきものは滑るように小俣らに向かって来たのです。
多分七、八十メートルはあったでしょう。それこそリニアに音も立てずに一気に飛んできたのです。
私は固まって何も出来ずにいました。
ただ、私の中からこれはこの世のものではないという言葉だけが響いているのでした。
固まってる私の自転車のハンドルの下に豆絞りの手拭いを被った頭が見えました。自転車のハンドルの下ですよ。どんなに背の低い人でもまさかハンドルの下に頭があるなんてありえません。でもその時はただ恐怖に固まるしかありませんでした。
そして地の底が響くような声を私は確かに聞いたのでした。
「今帰りけぇ」と。こんな低い声はお爺さんだったのかおばあさんだったのか確めることなんて出来るはずもありませんでした。
何だったんだと恐る恐る後ろを振り返ると‥そこにおばあさんの姿はありませんでした。もちろん土手の上の一本道に脇に降りる道なんてありません。改めて全身がゾーッと鳥肌が立ったのを覚えています。必死に家まで辿り着いた時にはホッとしました。
それから学校に通うのは遠回りになる村道を通ることにしてもうあの土手道を通る事はありませんでした。
しばらくしたある日トモダから何気なくあの土手のそばに一軒だけ立っていた家が火事になったことがあると話を聞きました。古くからの一軒家はある日原因不明の火事になり住んでいたおばあさんが亡くなっていたんだとか。
そう言えばあの豆絞りのおばあさんらしき人?が出たのはちょうどそのあたりだったのでした。
またまた私がゾーッとしたのは言うまでもありません。
とまぁこれだけが私の経験した怖い話と言う訳です。
      おしまい

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