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エンジニアリングとは不確実性をコントロールすること


不確実性に向き合う技術組織のありかたや課題解決の思考、メンタリング手法、生産性を向上させる手法について体系的にまとめられた一冊です。

エンジニアリングとは不確実性をコントロールすること

エンジニアリングとは、曖昧なことや、わからないことを減らし、具体性、明確さを増やす行為である。

不確実なものとは「未来」「他人」である。

経験主義と仮説思考

未来の不確実性を減らすためには、経験主義と仮説思考が有用である。
 経験主義は、情報を入手するために行動を起こし、その結果を観察することである。

わからないものに考えを巡らすのではなく、コントロールできるものを操作し、観測した結果を評価をする。

 仮説思考はそこで得られるような、限定的な情報から全体像を想定し、その仮説を検証していくという思考である。

本質的な問題解決を支援する「システム思考」

 システム思考とは、全体の関係性を捉えることである。
全体を構成する要素はネットワーク構造になっており、非線形な関係をもっている。

限定された範囲の合理性では、本当の問題を解決できない。
認知の範囲を広げ、物事を様々な角度から観察し、関係性を捉えることが重要である。

コミュニケーションの不確実性を減らす

社会学者のニクラス・ルーマンはコミュニケーションの不確実性を他者理解の不確実性、伝達の不確実性、成果の不確実性に分類したが、要約すれば「自分は他人ではない」というごく当然のことに帰結する。
この結果から生まれるものが「情報の非対称性」と「限定合理性」である。

つまりは、人はそれぞれ持っている情報が異なり、その認知の範囲でしか合理的な判断をなしえないということだ。

このような当然の事実と、本能的なバイアスを知り、情報の透明性を確保していくことが不確実性を減少させる上で重要になってくる。

アジャイルなチームとは

アジャイルとは開発手法ではなく、チームマスタリーを得ている状態、自己組織化された状態をさす。
それは以下のような状態であることを意味している。

- 情報の非対称性が少ない
- 認知の歪みが少ない
- チームより小さい限定合理性で働かない
- 対人リスクを取れていて心理的安全性が高い
- 課題・不安に向き合い不確実性の削減が効率よくできている
- チーム全体のゴール認識レベルが高い

「何をつくるか考える人」「どのように作るか考える人」では、それぞれ削減したい不確実性が異なり、それぞれの合理的な判断は衝突のもととなる。
アジャイルな方法論は、このような組織間の限定合理性と情報の非対称性の解消を試みるアプローチである。

まとめ

本書では、具体的なアジャイルな方法論やフレームワーク、メンタリングの方法も複数紹介されていて、必要な折に何度も読み返したくなるような内容でした。

前職でまさに、計画駆動型のプロジェクトマネジメントを行ってきた私にとって「アジャイル」に関する解説はこれまで読んだ本の中で最もわかりやすいと感じました。組織における課題について社会学的なアプローチで述べられており、エンジニアだけでなく組織に関わる全ての人におすすめできる一冊です。

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