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優しく睫毛に憩う。まつげの表現力

まつげ、まつ毛、睫毛。すね毛わき毛はあんなに嫌われているのに、同じ毛のくせに。髪もそうだけど、まつげって、詩的だったり、扇情的だったり。ふしぎだ。特に歌詞に登場するまつげって、フレーズに奥行きを感じさせてくれる。じんわりと何かが伝わってくる。

そう気づかせてくれたのは、美空ひばりの愛燦燦。ひぃばあちゃんが美空ひばりを聴いていたので、子どもの頃からよく耳にしていた。久しぶりに聴き返すと、

雨潸潸(あめさんさん)と
この身に落ちて
わずかばかりの運の悪さを
恨んだりして

人は哀しい 哀しいものですね
それでも過去達は優しく睫毛に憩う
人生って 不思議なものですね

美空ひばり「愛燦燦」


心に沁みてきてハワァーとなった。そうして私は「優しく睫毛に憩う」のフレーズに取り憑かれたのだ。睫毛に憩う、睫毛に憩う、睫毛に憩う…。

まつげって、人の感情を乗せているのかもしれない。瞬きをするたびに、まぶたの開閉に合わせて上下するまつげ。

人は何かを思い出すとき、目を閉じる。いや、ぶっちゃけそうでもないが、純恋歌の「目を閉じれば億千の星 一番好きなお前がいる」とか、3月9日の「瞳を閉じればあなたがまぶたの裏にいることで」とかさ。昔を振り返ったり、何かを想ったりする=目を閉じるという、表現上のお約束みたいな感じ。

そんな感じで、愛燦燦の語り手もゆっくり目を閉じて、何かを思い返して、また、ゆっくりと目を開けたのかもしれない。そっと上下するまつげの上で、過去達が安らいでいる。なんだか心地のいい余韻、いたわりを感じる。 

もちろん辛いこともあるし、少しの不運を恨んだりして、人は哀しいものだ。
それなのに、目を閉じて昔を振り返ると、どの人も、どの出来事も記憶の中でゆったりと休んでいる。
人生って不思議だねぇ。

秀佳訳「愛燦燦」

はい。ちょっと整理したかったので、日本語を日本語で訳しました。どんなに辛い出来事も、どんなに憎いあの人も、過ぎてみればかわいいものよ、という。なんたる懐のデカさ!私もこんなおばあちゃんになりたいわ。


そんで、まつげ繋がりで、aikoの「ボーイフレンド」も脳内に登場。

まつげの先に刺さった陽射しの上
大きな雲の中突き進もう

あなたがあたしの耳を熱くさせたら
このまま二人は行ける
好きよ ボーイフレンド

aiko「ボーイフレンド」

昔から、この「まつ毛の先に刺さった陽射し」のフレーズが好きだったことを思い出した。眩しいというのを、まつげの先に陽射しが刺さると言えちゃうaiko。その上にある雲の中を突き進もうと言えちゃうほど、人を浮かれさせる恋。耳が熱くなるのは夏のせいか、あなたのせいか…。カーッ!あつい。これは確かに「好きよボーイフレンド」だよ!!!!!!そうなるわ!!!!!

あと、aikoの「くちびる」という曲の「目尻で優しく話しかけて」もよろしくお願いします。(まつげというより目元の表現だが)もう、目尻で優しく話しかけるって何ー!キャー!ですよ。でもわかるの。目尻もまつげと同じか、それ以上に感情が乗るもん。焦がれるあの人の、あの目尻で優しく話しかけてほしいのよ。視線が、優しい眼差しがほしいのよ。好きって言ってほしいのよー!!!!!私はこのフレーズで、好きな人が優しく微笑んだときの目尻のしわが思い浮かんだ。

まつげに話を戻そう。私はまつげの影も好きだ。まつげの影って、何より愛おしい影な気がするから。甥っ子が何かを一心に見つめている横顔のまつげの影が、そう思わせているのかもしれない。そんな私の印象とは反対に、伏目がちでまつげが暗い影を落としている、なんて表現もどこかで見た気がする。

というか、まつげだけでこんなに想像を掻き立てられるとは…。まつげスゲー。腹が立つやつにもまつげが生えていると思うと、愛しく思えそう。いややっぱ無理。

こんな感じでまだ、美空ひばりとaikoの素敵まつげしか見つけられておりません。ここまで来るとたぶん、まつげフェチ。ゆるっとさらなる「まつげ表現」を探し求めつつ、まつげの短歌とかつくろうかな。

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