アイフィールプリティを観てモヤモヤした話。

アイフィールプリティという映画を観た。

あんまり映画のこと悪く言いたくない。これ観るの好きな人いるやろうし。
私も観終わり直後は爽やかな満足気分になり、また挿入歌が大好きなアーティストだったためめっちゃご機嫌だったのが、
夜になるにつれモヤモヤモヤモヤ…し始めて。

吐き出してしまうことにした。

(だからネガティブなネタバレ感想です。
超個人的な。望まない方は必ずお帰りください)







容姿端麗に憧れる女性が、事故で頭を打って自分のことが突然絶世の美女に見えてしまい、そのポジティブなマインドで人生がめちゃくちゃ上手くいく話。

自分に自信を持って生きること。
これが大事だと言うのは、分かる。

ただ、自信を持てと言うわりに、主人公は結局のところ自分に自信を持てないで終わる。いや、持ててます風のやる気に満ちたポジティブ顔で終わるのだが、なぜだろう…納得できないのだ。

そもそも作中の表現がなんかモヤモヤ。主人公の恋人はちょっと女性的な部分があるけど好きになると言う一見ジェンダーフリー方面に見えて、ナンパは男性からだし夜はああ見えて積極的だの、そういう時点でめちゃくちゃ古臭い。ちょっと女性的な部分は取って付けたようであとは普通〜のコテコテの男女観だ。既存の価値観から抜けきれてない描写は多くて、ふくよかで気の良い友達たちは内面の良さで男性をあてがわれて言い訳のように安い幸せを手にするだけだし、ラスト主人公が自信について演説するシーンではこれまた言い訳のように思いついた程度の数の黒人役者さんがパラパラと配役やれてあるだけで、後は全部白人(つまり多民族がいない)。結局、自信を持って輝く成功者になるためには容姿端麗に少しでも近づく努力します、というルッキンシズムなだけで、ラスト結局主人公がまたジムに通い始めるシーンで終わり、ガッカリしてしまった。

自分に、自信を持って生きろ!というメッセージならば、「その自信を持つために痩せる」という価値観が社会的な押し付けであることも跳ね除けてほしいかった。

「痩せて素敵な自分になる!(ポジティブ)」
という価値観は、本当に個人として内面から出た欲求か?
世の中が太ってれば太ってるほどモテる世界だったとしても、
この主人公は痩せたいのか?
そこをもっと掘ってほしかった。


クライマックスのシーンでは主人公が化粧品の販売イベントにて熱弁し、
「体重も年齢も何も関係ない!私たち皆それぞれ全てがこの化粧品のモデルさんだ!」
(喝采)
感動なシーンがあるが、
化粧すること自体が、すでに…さぁ。って思う。なんで化粧品会社の設定にしちゃったかなぁ。。

なぜ女性が(作品中でも述べられるように)通勤時間を割いて不便な思いをしながらも毎日毎日化粧をするのかと。

美しくなりたい!から化粧ダイスキ!
そういう人は自分がポジティブになるためにぜひぜひどんどんするべき、それは大賛成。きっと努力や研究や出費までも、生半可なものじゃないだろう。。尊敬する。
ただ、主人公の台詞で「太ってても痩せてても、年齢も何も関係ない!」とかぶち上げるならせめて
「肌の色も!!そして男も女も!!なりたい自分になるためにポジティブな人間は誰でもモデルよ!化粧して素敵になる権利は誰にでもある!そして化粧したくない人も!肌や身体的トラブルで出来ない人も!しないならしなくていい!それも自由!それであなたの価値が損なわれることは何もない!!」
てところまで行けよと。

なんで化粧しない女性が変わり者扱いで、逆にどぎついメイクを男性していたら変わり者扱いになるのか、そんなレベルで自分らしく人生を生きていることになるのか?
その「女性は化粧で綺麗になろう」が「男のため」じゃなく「自分のため」であろうが、
「そもそも女性だから化粧するとかの根本的な枠組み、自分らしく生きるのに邪魔じゃない?」っていう時代になっているでしょう?ていう悲しみがあった。。

なぜ「世の中の美意識」に乗っかって「素敵な自己実現」しちゃおうとする結末なのか残念で仕方がなくてモヤモヤモヤモヤした。

もっとちゃんと、自由である意味について深めろよと。もっとちゃんと、自分に自信を持つために枷になってるもんをガシガシ外してぶち上げろよと。
暗い顔しているブスより、明るい顔してるブスのほうがかわいいよ、みたいな生温い答え出してる時代じゃないで。
いや、まあそりゃそうなんだけど、明るいブスのほうがマシだとジャッジしてるのは「誰」で、あなたはそのわけわからん「誰」かのための自己実現に生きちゃうの?それは本当に自分に自信持ててます?本当に?

自分の中に「嫌な思いをしているはずの価値観を内包」したまま、主人公がポジティブ風な気持ちで映画が終わってしまったので、本当になんだこれと言う感じだった。



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