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傷だらけのプリンセス:       ダイヤモンドプリンセス隔離生活 1

1.香港まで

2020年1月20日(月)大黒ふ頭に停泊しているダイヤモンドプリンセスでいよいよ「初春の東南アジア大航海16日間」に出発だ。出航は夕方5時。タクシーを頼んで、「大黒ふ頭までお願いします」と言ったら「海釣り公園までは行ったことがありますが、どうやって行くんでしょう?」と聞かれた。私たち夫婦も「分かりません」と答えた。ついこの間までは山下ふ頭に着岸していたが、大型客船の一部は大黒ふ頭に停泊することになった。タクシーの運転手さんは、海釣り公園のほうに行けばなんとかなるでしょうと言って高速を降りた。大黒ふ頭といえば、何百台もの自動車が外国への輸送を待って並んでいるところとしか考えていなかった。

すると、巨大な客船が横たわっているのを見て「こりゃ驚いた」と感心していた。急ごしらえの出国審査のために作られたかまぼこ型の天井の高い建物でパスポート審査やらがあって乗船した。このかまぼこ型建築物は、隔離が始まってから毎日のように見ていて、すぐそこなのに岸は遠いなとため息をつきながら眺めることになろうとは、露ぞ思わなかった。

保険の「長生きお祝い金」が下りるから、船旅でもしようかと夫と相談した。5,6年前にNIPPON丸で五島列島と屋久島を一気に回り、なんて楽なんでしょうと味をしめて再びクルージングに挑戦という運びになったわけだ。NIPPON丸は比較すれば小型で、乗務員も日本人が多いため、お値段も結構高かった。ともかく、飛行機は気圧が低くて気持ちが悪くなるからと海外旅行はもう諦めていた。ダイヤモンドプリンセスは若者のバックパッキング旅行のような低価格で(ダンピング後)三食付き、鹿児島、香港、ベトナム2か所、台湾、沖縄を回ることができる。

見渡せば乗船客は年配者ばかり。日本人も多かったが、海外の旅行者もたくさんだった。客室の前にはスーツケースが届き、外気は冷たかったけれどバルコニーからの海風は心地よかった。(続)

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