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一週間無人島生活[七日目]~山頂での目覚め、無人島の終わり編~

山の上で目覚めた。空はかなり曇っていて、今にも雨が降りそうな天気だ。本来なら今日の午後に迎えの船が来る予定だったのだが、午後からは雨が降って波が荒れるということで、午前中にしてもらった。


この一週間、ずっと髭を剃らずに伸ばしていたのだが、その顔にも慣れてきた。私はそもそもあまり髭が濃くない方なので、一週間程度ではそこまで大したことにはならないのだが、それでも一週間放置したのは初めてだ。思っていたよりも似合っている。いつかちゃんと伸ばして整えてみても良いかもしれない。

少しゆっくりした後テントを片付け、下山する。拠点の方はもうほとんど片付け終わっているので、ゴミを拾い、一日目に船から降りた場所へと荷物を運ぶ。

焚き火の跡やゴミを片付け、砂浜に落ちている漂流物も少しではあるが回収する。来たときよりも綺麗にすることを大事にしているので、砂浜の掃除は毎回行っている。

砂浜で待っている間、この綺麗な景色を目に焼きつける。全てを記憶しておくことはできないから、写真を撮る。動画を撮る。「終わりやな~」とOが呟いた瞬間、少しだけ涙が滲んだ。


しばらく黄昏れていると、迎えの船が来た。来たときと同じ要領で荷物を船に運び入れていく。帰りは荷物が軽くなっていたので、比較的簡単だった。

帰りの船は行きよりも荒れていて、しぶきで体がびしょびしょになってしまった。調子に乗って何の装備もなくイルカショーの最前列に来た人みたいになってしまった。荷物もほとんどはビニール袋に入れていたのだが、登山バックだけ唯一袋に入れていなかったので、濡れないように覆い被さり、身を呈して守った。


船から降りた後は、船長と、その近くにいた人で色々と話をした。船長は、無人島に行く学生は船から荷物を下ろすのが遅いのだと言っていた。私たちは慣れているので、荷物を船から下ろしたりする作業はかなり早くなっているけれど、初めてだとそう上手くはいかないだろう。あと、奄美の人はちゃかちゃか動く人が多いのだそう。沖縄とかは時間にルーズだというのをよく聞くが、奄美だと逆なんだな。

船の人と喋っていると、目力が強くて挙動が少しおかしいような人が近くにやってきた。船長と喋っている様子から、知り合いのようだ。その人は私たちにもいくつか質問してきて、それに答える形で会話をした。会話をしてみると、手足の震えや滑舌の悪さなどはあるもののちゃんと会話ができる人っぽくい。人を見かけで決めたら駄目だなと心のなかで反省していると、その人が「昔、宇宙と交信するパーティーに行ったことがある」ということを言い始めて、その反省はうやむやになった。やっぱり変だ、この人。でも面白いおじさんだったな。また来なさいねと言ってくれたし、いい人でもあった。「その頃には死んでるかもしれないけどね、ガハハ!」と笑っていて、それがなんとも良かった。

昼は、港近くにある「せとうち海の駅」の中にある「海力」という店で食べることにした。私は色々な魚が入っている海鮮丼を注文。

久しぶりのちゃんとした食事はやっぱり美味しい。舌が喜んでいるのを感じる。四種類の魚が乗っていたのだが、その中でも特にイカがトロトロで美味しかった。真ん中に乗っているのはマグロのユッケだったが、これもごま油の風味がしてめちゃくちゃ美味しかった。

食べた後、近くにあるスーパで買い物。無人島から帰ってきて一番に目についたのはこいつらでした。

コーヒーと甘いものは外せない。甘いものも苦いものも無人島ではほとんど口にしていなかったから、とんでもなく美味しい。特にクリーム系は格別だ。


港からバスで名瀬まで。バス案内の声で気付いたが、名瀬って「なぜ」って読むんだな。私もOもずっと「なせ」って読んでた。前回来たときもずっと「なせ」って読んでたから、二年間間違い続けていたことになる。日本の地名って本当に難しい。

バスで四十五分ほど移動し、ホテルまで。すぐにシャワーを浴びる。久しぶりのシャワーは最高に気持ちが良かった。お湯が簡単に出るってどれほど素晴らしいことか。

夜ご飯は島のクーポンを使って予約していたのだが、その場所がホテルから歩いて三十分のところにあり、雨が降ってるし遠いなと思いつつも歩く。

二年前にも歩いた道を歩き、その時にした会話をOと思い出しながら歩く。長い信号や古いホテルなど変わらないものがある一方で、二年前には無かった店ができていて、こうして風景は少しずつ変わっていくんだろうなと思った。


到着。島のクーポンを使ったから結構安くなったけど、本来なら3000円くらいする料理だ。

なんか、写真を撮ってたら次々に新しく料理が運ばれてきて、また写真を撮っていたら次の料理が運ばれてきて、結局四枚くらい写真を撮った。一品ずつ増えていくだけの写真だ。

これが最終形態です。豪華だ~。

醤油には黒糖が入っているということだったが、これがとても美味しい。刺身ともよく合った。

また三十分ほど歩き、ホテルまで。帰りは車通りのない道を選んだので早かった。


今回は学生最後の無人島ということで、やりたいことを全部詰め込んだが、全部が上手くいったので大満足だ。大学時代は無人島にかなりの時間を費やしてきて、今回のものも含めると十回目になる。十回目というキリの良い数字の時に一番良い無人島生活が送れて良かった。これまでの集大成のような一週間となった。

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