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最高以外の何ものでもない「劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト」

 何も、な~んにも知らずに、ストンと落とした腰が、映画が終わった後、もう席から容易に外せなくなるほど、重い重たい衝撃を与えて離してくれなくなりました。
「スタァライト、ヤバ……」
 ヤバ。スタァライト、ヤバ。この二種の言葉を入れ替えることでしか文章を生成できなくもなりました。

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 二時間でスタァライト過激派へと生まれ変わってしまった人間の参考画像を置いておきます。激しく哀れ。
 今までの私は、例えば人間同士の関係性とか、明示しないことで初めて表れてくるような、わからないものをわかろうと足掻く過程でどんどん狂っていくハマり方が多かったのですが、「劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト」は、その””””オタクが想像して悶絶し咆哮する部分””””をぜ~~~んぶ気持ちいいくらいやってくれて、グギガグゥウ゛ォオ゛~~~!!!!と最高に嬉しくなり血沸き肉踊りミッドサマー以来の強烈なカタルシスを覚えました。嘘です。ミッドサマーは普通に怖すぎるので。やめましょう。アリアスターをこの世で恨むことのできる最大限度まで恨み尽す前に。

 既に軽く触れましたが、私は本当にいわゆるニワカというか、まだスタァライトについて全然知らないひよっこです。だけどこの、この強烈で斬新でどこまでも私の目を、心を奪いむさぼり尽くしていった出会いを文章として残しておきたいと思って、なのでもしかしたらスタァライト愛好家の方々を不快にさせるかもしれませんが、そこはどうかご容赦頂ければ幸いです。そしてスタァライトにまだ触れたことのない方、ワンクッションこそすれ普通にネタバレをするので。ネタをバラすので、そうしないとすぐに気とかが狂瀾怒濤の極致に追い込まれる気がするので、すみませんが、ネタバレの部分に差し掛かったら読むのをやめたり、noteのタブごと一回削除したりするのを、オススメしていこうと思います。

 サムネイルの愛らし画像は私をこの映画に誘ってくれた友人その人さかなのすけくんよりお借りしました!尋常ならぬ助かりを感じる。

出会いのレヴュー

 ある時旧来の友人が、私を映画に誘ってくれました。
 その名も「劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト」。
 まさしくミリしら、友達がみ~~んなオタクだった恩恵で数度名前は目にしている程度、ゲームが出ていることも後々になって知ったような、本物の初見コンテンツの映画に突然誘われて、ふ~~~~んまあ、面白い面白いって言ってくれるしやぶさかではないかな……と軽い気持ちでついていくことにしました。それが7月の下旬のことだったでしょうか。しかしその日は残念ながら上映劇場が満席で、私のクレカの利用上限も素寒貧の様相を呈していて(友人はクレカ未所持)座席の予約も取れなかったので、近所をバスツアーして朗らかに家に帰りました。そんなことをしているうちに、なんとスタァライトの上映期間はとうに終わってしまったのです。
 そして時が流れて9月下旬、この友人からまた連絡を貰いました。リバイバル上映が決まったとのことで、10月の頭でクレカ利用上限復活したての私がすぐさま予約を取り、決行の時は10月10日と定まったわけです。この友人がまた狂っていて、既に7月に2回視聴済みなのに、10月8日と9日にも足を運んでいて、ちょうど昨日(11日)にも見に行っていました。そんなにハマることある?おんなじ題目の映画を……7回?見たいと思うことあるか?新エヴァですら一回しか見に行かなかったのに……と思っていましたが、今となっては正直彼女が死ぬほど羨ましいです。私はと言えば日曜が唯一自由に時間を使える休みだったので奥歯噛みしめながら毎日布団を濡らしています。じきにリバイバル上映期間も終わってしまうそうですし。

全ての用事や予定は「劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト」より重んじられることがあってはならないし「劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト」を見ることを人生の目標の最優先事項として扱うべきである。

 とにかく、誘われた当初の私は、彼女がそのスタァライトを7回も見に行くつもりだと聞いて腰を抜かす思いでしたし、そこまで何度も足を運ぶほどなら期待して良いんじゃないかな、と、人から勧められて断る理由も無いしまあ見てやるか……というスタンスで摂取するタイプのコンテンツとしてはかなりハードルが上がっていました。何より彼女の狂い方が実証として、この映画の太鼓判を押していたわけです。実際私達が見に行った映画館では常時満席に近い状態で、真ん中の方の良い席はとっくに埋まり切っていました。
 キャラクターの名前と簡単なプロフィール、そして特定のコンビの関係性などは簡単に教えてもらっていましたが、まだ触れたことのないキャラの説明を見ても印象に残ることもなければ記憶することも難しかったと思います。演劇部か何かの可愛い女の子たちが夢に向かってがむしゃらに頑張る、ちょっと百合要素もありそうな、時にシリアス時にコメディ、日常の中の彼女らの掛け合いを切り取って我々に見せてくれる、そういう感じのアニメなのかな~とぼんやり想像する程度だったわけです。

めくるめく衝撃、そして放心のレヴュー

※ネタバレにならない範囲で映画を見た時の私の感情をお話ししていきます。キャラの名前や特徴などには多少触れるのでお気を付けて。

 そして時が来ると私は、スタァライト視聴も6回目の歴戦の猛者と共に座席に腰を落ち着け、ホットドッグを食べながらCMをぼーっと見ていました。この時点では京都弁を喋ってくれる女の子、花柳香子ちゃんが気になっていました。私は無類の関西方言フェチなので。これを聞いた友人が香子ちゃんと石動双葉ちゃんのデュエット曲「花咲か唄」を聞かせてくれました。映画の劇中歌ではないのですが、この二人の関係性を知るには良いとのことで、ラスサビ辺りの「瀬を早み岩にせかるる(滝)川(の)われても末に逢はむ(とぞ思ふ)」が印象的でした。雅楽を思わせる音楽だなとは思っていましたが百人一首が出てくるか~とそのオシャレさに舌を巻きました。
 長い広告も終わり、いよいよ完全に会場は暗転してスクリーンがふわっと広がり、パッと明るくなって、その数秒後、

 完全にド肝を抜かれました。

 開幕から普通に意味がわからなくて、あれ?何これ 何? え?な何何難易度高くない?何? あ?え? あ?と頭、完璧にバグりました。思っていた数百倍、抽象的でした。まず一目で、「これは想像していたのとは明らかに異なっているぞ」「よくある美少女青春群像劇とは根本を異にするものだ」とわからされてしまいました。放心して砂漠に寝転がり、どうして、と口からこぼす愛城華恋ちゃん、そして彼女に毅然とした目で切先を向けている神楽ひかりちゃん、倒壊する東京タワー、めちゃくちゃドタドタ走っているやたら渋い声のキリン、破裂してドチャ!ビチャ!と地に散るトマト、あとワケワカンナイヨォー!と叫んでいる脳内テイオー、もう情報が錯綜して、この映画が面白いのかどうかも判断付きませんでした。しかしこれが大体開幕10分くらいのこと。

 段々、これは。これは、面白い。面白いぞ!と、身に染みて、血肉に染みて、興奮を、冷めやらぬ情熱を、沸き立たせてくれる、決定的な作品だと、理解してきたのです。

歓びのレヴュー

※ここからは軽く内容にも触れていきますが、決定的なネタバレはないので、もしスタァライトに興味を持ったりここで引いたらモヤモヤして終われないよ!と思ったりしたら、是非先へお進みください。

あと、スタァライトの予告編見ておくと心の準備とか気休めとか気付けとかができるかもしれません。

 そもそも(やっとここで触れるの?という感じですが)これどんな映画なの?と言うと、演劇や舞台表現などを存分に学べる環境である聖翔音楽学園の、三年生の女の子たち9人が、それぞれのライバル、親友、仲間、信条、これらに向き合って、自分のこれから進む道を見出し、よろめきながら、立ちすくみながら、地を踏みしめて歩みを進める、そんな過程を描いたものだと私は考えます。

列車は必ず次の駅へ。
では舞台は?
あなたたちは?

あなたが舞台に立つのは、なぜ。

わたしたちはもう舞台の上。なのに、役を演じないのは、なぜ。

あなたが決めているその覚悟は、本物なの?

馴れ合いで、付き合いで、楽しさで、ここにいるの?それとも。

あなたのその表情は、ほんとうにあなたのものなの?あるいは。

 覚悟と覚悟のぶつかり合い。エゴとエゴ、愛情と恋慕、それはたった一人の生身の人間にぶつけるにはあまりにも尊大で、傲慢で、極大で、けれどこんな感情でも受け取りぶつけ返し同じステージに立って殴り合ってくれる。あなたは、あんたは、お前は、絶対のライバル、この舞台から怖気づいて役を棄てて降りて行ったりなんてしない、そんなことは誰よりも私が、絶対に、許さない、だから誓って、誓って、誓ってよ!私の歩む道から、あんただけは、勝手に外れたりしないって、約束して!
 そんな泣き声にも似た叫びを手渡して、ぶつけて、怒って、そうして疲れ果てた先に、同じように精魂尽き果て、以前より清々しい顔で一緒にくたばってくれるあなたがいる。

 いや……

 いや、あの……本当に。

 何?

 サイコ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!にも限度があるだろうが!!!!!!!!!!!!!!!!!!!いい加減にしろ!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 何?マジで。この世。

 これより最高なこと、ある?
 ない以外の回答、この社会ソサエティからすべて、すべて消し去るので、ないです。

 取り乱して大変失礼いたしました。私はオタクの中でも厄介な関係性オタクなので、一人間がまた別の一人間にFacking big emoそうクソデカ感情を向けているのを見るのがこの世界この人生この五感において一番だ~~~いすきでして、もう嬉しくて嬉しくて最高で歓喜に酔ってみんなの劇中の叫び声に合わせて一緒に吠えちゃいたいくらいでした。ありがとう、本当。嬉しい。
 つまりまあ、冒頭で述べた「オタクが想像して悶絶し咆哮する部分」というのは有り体に言えばこのクソデカ感情なわけですが、それが当然ライバルのみならず舞台演劇にも発散される高校生たちの若さ、熱、軽快に伸張する身体、それらが気持ちいいほど力強くのびのびと表れていて、最終的にはあ~本当に見て良かった~マジで見て良かった……ありがとう「劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト」……と気持ちが昂るとフルネームでしかものを呼べなくなる癖が完全に復活した体にさせられてしまいました。すぐパンフ買いました。パンフも最高でした。

 特定の相手に「自分を見ろ!」ってめちゃくちゃ怒る人間が、大好物なんですよね~……。なので同じような趣味をされている方には大概刺さると思います。もう時すでに遅いので、円盤を買おう!(販促)

静謐な、あるいは情動的なレヴュー

ここからはガッツリネタバレをしますので、ご注意下さい。注意する、という行為に対してちゃんと向き合って本気になってください。よろしくお願いいたします。

 

 キリン。首を長くして、次の舞台、次の作品、次のあなたたちを、待っている。彼らは、原動力であり、燃料であり、彼らにもまた、舞台に立つ、その確固たる決意を、燃え上がる情熱を与える役目がある。その情熱が、弾け飛ぶトマトであるならば、愛城華恋の情熱は、最後まで、キリンからではなく、神楽ひかりから受け取ったものであったのか、と、思い返せばため息が出ます。
 大場ななのwi(l)d-screen baroqueで、ひかりちゃんと華恋ちゃん以外の7人が、それぞれトマトをがぶ、と齧ります。そしてその後のwi(l)d-screen baroqueで、石動双葉と花柳香子、星見純那と大場なな、露崎まひると神楽ひかり、天堂まやと西條クロディーヌとが、それぞれのレヴューを、彼女ら自身そのものという重すぎる役を背負い、むき出しの生身をぶつけ合って全うしていくんですね。
 最初の大場ななのwi(l)d-screen baroqueの始まりでまず度肝を抜かれ、なるほど少女歌劇という位だからミュージカルのような場面が挟まれるわけかと期待に胸躍らせましたが、状況についていけない困惑すらも置いていくほどに殺陣を舞い踊るななちゃんは蠱惑的で、そして突然人が死ぬので普通に心臓止まるかと思いました。最初のトマトと言いあの映画ジャンルにホラー加えないとそろそろ怒られるんじゃないかなと思います。怖いので。アリアスターじゃなくてもやめてください。
 舞台少女としての、死、スタァライトを演じきってその先をまだ見つけられずにいること(なのかなと推測しました)を、物理的な死で表現するのにはまた膝を叩きましたし、トマトを食らうことでまた「次の舞台」そして「次の私」への情熱を得、それぞれのコンビのwi(l)d-screen baroqueへと繋がっていったのか、と気付いた時は最高……マジ……何?最高……になりました。
 ふたかおちゃんのレヴュー、とん、とん、とんと足音を刻むように場面がコロコロ展開して、二人がお互いの呪縛にも似た愛着と自分自身の進みたい道とを両立させんと不器用にも全身全霊で挑む様がめちゃくちゃ愛おしくて、しかもあの!あの!最後の、幼少期の二人!向かい合わせるの本当……ずるくて……その場でちっちゃくア!って叫んでしまいました。流石に。二人の幼少期からの関係性は後になって知ったのですが、すごく仲良しだったんですね。ずっと一緒だって、言ってたんですね……これ、本当ヤバくないですか?こんな……ド重た感情抱えた人間と人間の場面を何組も何組も……贅沢すぎる。本当に「劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト」ってやつは……。そしてまんまと、開演前に友人に聞かせてもらった「花咲か唄」が効いてくるわけです。「瀬をはやみ岩にせかるる川割れても末に会わん」道を違えどあなたと私は二魂一体……萩原朔太郎と室生犀星じゃん……。(個人的趣味)
 ふたかお、ヤベ~!これは癖(ヘキ)!絶対一番好きなコンビじゃん!と思った次の瞬間、今度は新たな「最高」純ななが襲ってきます。純那ちゃんの口上の「殺してみせろよ 大場なな!」の叫びで頭パァーンッなりました。か、か、か、かァーーーーーッッッッッこいい!!!!本当に気持ち良くて、穏和そうに見えた純那ちゃんが狂気の沙汰にいるとも見えるななちゃんに向かいかかっていく、その勇ましさ、そして想定していた彼女の姿を視界に失って少し狼狽えてしまうななちゃんの哀しさ、どれもが良い以外の何物でもなくて、精神をズブズブに満たしていくカタルシスに背筋が震えました。てかバナナちゃん一人だけ殺意が突き抜けてない?二刀流だし戦闘力が別の方向に伸び上がりすぎてない?すぐ殺そうとしないで……後になって友人に「ななちゃんは冒頭で純那ちゃんが舞台練習の時華恋ちゃんの演技に圧倒されてセリフに詰まった時から既に怒ってたんだよ、だから華恋ちゃんのセリフの後に続けて呟いたんだよ」と解説されてギャ~~!?!?!!!?!?と地団駄踏んでその場で2分くらい狂ってしまいました。その後からスタァライトとヤバとの組み合わせ文法しか使えなくなったかと記憶にはございます。
 個人的にはまひるちゃんとひかりちゃんのレヴュー、まひるちゃんの華恋ちゃんへのただただ強い執着を感じて愉悦を得たのですが、ひかりちゃんが「華恋が怖くて逃げ出した、ごめんなさい」と言った真意がこの時は微妙に掴めなかったのと、まひるちゃんがこの言葉を受けて案外あっさり善の姿に戻ったように見えたのが拍子抜けで、アニメ履修の必要性を強く感じた場面でした。
 そしてこの後の、この後のまやクロ!まやクロちゃんさぁ!あの……マジで一番好きになりました。ふたかお、純なな、まひひか、と最高をどんどん更新していましたがここで、ここでいや本当にマジで一番好きだこれ!を更新してきました。あの、神の器たらんとするThis is 天堂まやのガラスの仮面をぶっ壊してどろりと溶けだす人間の部分を引きずり出して、その面引っ掴んで一番可愛いわよって……一番ありがてぇーーーーッッッッッよォ!!!!!!!!!!!!!!!有難いことです。こんな、稀有な、人間ども。あの人間・まやちゃんとライバル・クロちゃんの殺陣、名言に溢れていたのに溢れすぎてきちんと思い出せないのが悔しすぎて円盤出たら即刻買おうと思っています。クロちゃんの「あなた今一番可愛いわよ」に対して「私はいつだって可愛いわ!」と返したの(うろ覚えですが)、まやちゃんが自分の収まるべき場所としていた「神」の玉座から引きずり下ろされて感情や根性や努力などのいわゆる神がかった要素からは程遠いもので築き上げた人間そのものの姿を晒しているのを、クロちゃんは寧ろ是として「可愛い」と言ったのか或いは神になんてなれず可哀想な人間なのね、という意味で「可愛い」と発したのか。そしてこれに対してもともと私はこの努力で築き上げた自分を誇って生きているわよ!という含みを持って「いつだって可愛い」と言ったのか、こんな姿、ライバルと宣うほどのあなたならとうに知り尽くしているでしょうと皮肉を以て「いつだって可愛い」と返したのか、解釈の幅が無限大に広がって尊いこと尊いこと……そしてこのシーンも良いのですが、二人の決闘に決着が着く決定的な瞬間、額縁越しに見える完成したクロちゃんの姿を見て思わず零す言葉が「綺麗」なんですよね…………。高次元で渡り合い、高めあって、あなた以上の人間はいない、何故ならそれは私以外存在しえないから、といった高慢の限りを尽くす贅沢なライバル関係、いやほんっとうに、好き……好き……一番ありがたい……と大地讃頌天空合掌感謝感激欣喜雀躍こんな経験おいそれとはできない……という感情になりました。
 ふたかおも、純ななも、まやクロも、多分最初は舞台芸術について、情熱も、技量も、自身が相手より優位に立っていると思っている方が、最後にはその相手に斬られ、相手の覚悟の大きさと自身の行くべき道をまざまざと見せつけられ、泣いたり笑ったり認めあったりして清々しく立ち上がり、そして互いに背を向けて、目も眩むほど眩しい未来に歩みを進めていく、という構図だと思うんですね。すごく美しくて、儚くて、やわらかでそれでいて凛とした芯を一本通している、二人の舞台少女の生き様が、心に息づいて、どうしようもなく満たされる、この感覚はなかなか忘れようにも忘れられません。本当に、良い映画、いい作品です。スポ根に必要なものだけ精錬して不純物は取り除く、結果としてドロドロした自我と愛情の殴り合いが、とうめいで綺麗な青春の結晶として現われている。素晴らしいの一言です。

 そして問題の、華恋ちゃんと、ひかりちゃんのシーン。クライマックスですね。冒頭でわからなさすぎて放心したシーンが回収されていきます。
 ひかりちゃんは既にキリンから直接トマト、舞台少女としての新たな燃料を得ていますが、華恋ちゃんはひかりちゃんへと歩みよる時、後ろにトマトを置き放しにしています。彼女にとっての舞台少女である理由、情熱は、徹頭徹尾ひかりちゃんその人だったからでしょう。「わたしだけの舞台って、何?」と言う華恋ちゃんは、はなからひかりちゃんありきの舞台へ向かって邁進していたわけですから、その先、スタァライト公演のその後を、まだ掴めていません。そして大場ななのwi(l)d-screen baroqueでみんなが経験した死を、ひかりちゃんを前に初めて食らいます。ひかりちゃんが駆け寄って、ここで言ったセリフに、なるほど……!!!!!と脱帽しました。
 華恋のファンになるのが怖かった。
 華恋と同じ場所に対等に立ち続けるために、逃げ出した。

 ウワ~~~!?!?そう来たか~~~!!!!

 ひかりちゃんが華恋ちゃんを恐れていたと聞いた時は、華恋ちゃんがひかりちゃんに向ける純粋な煌めきが末恐ろしかったのか、その感情が大きすぎて重たく感じたのか、でも今までの流れからして不自然すぎるな……まだ5歳だったはずなのにそこまで思うか?と今ひとつ納得いっていなかったのですが、これは……!これは!こんな最上の理由があって良いの!?良いの!?!?と鳥肌立ちました。「劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト」、恐ろしい作品だよほんとさ……。
 そして華恋の元に戻ってきたひかりちゃんの放つ「貫いてみせなさいよ、あなたのきらめきで」が、相当の重みをもって響いてきます。華恋ちゃんのファンとして、その煌めきを受け取るだけの存在に収まったりしない、あなたを刺し返すほどの煌めきを私だって掴み取ってみせる、だから刺せるものなら、刺してみろ!そういう覚悟を感じます。華恋ちゃんと肩を並べ、同じ舞台に立ち続ける確固たる決意。

 しかしひかりちゃんはひかりちゃんの、華恋ちゃんには華恋ちゃんの道があります。冒頭で華恋ちゃんだけ進路が決まっていませんでしたが、ひかりちゃんとの再びの別れが彼女の歩みを止めてしまっていたんですね。そして彼女なしで歩く未来を突きつけられた時、華恋ちゃんは舞台少女としての生を一度終え、そして、再生産するのです。アタシ再生産。今これを書きながらドキドキを抑えられなくなるほど大興奮モノでした。華恋ちゃんとは誰なのか、自分とはどこにあるのか。最初のななちゃんのwi(l)d-screen baroqueの後にも、華恋ちゃんはななちゃんにあなただけは違うと言われていましたが、華恋ちゃんには確かに、他の7人のような、ぶつけ合う強烈なエゴは感じられなかったように思います。ある種人間味すら無いように思えました。中学時代の華恋ちゃんの級友が、華恋にも悩みとか、あるだろ、と言及した時、華恋ちゃんにとっての悩みはやっぱりひかりちゃんとして描写されていて、舞台に立つ覚悟とか怖さとか、そういうのはひかりちゃんから受け取った手紙に最初から全て詰まっていたかのようにすら見えてしまうんですね。そう思うと、華恋ちゃんが画面を超えて私たちを見ていた、あのシーンで、舞台ってこんなに怖かったの?なのに、私、ひかりちゃんしか見えてなかったの?と言っていたシーンにも強く納得がいきます。そうして最後の最後に、ひかりちゃんからトマトを、受け取る。観客からのトマトを、ひかりちゃんを通じて得ることで、華恋ちゃんは初めて、たったひとりぼっちの演者として、けれど常にひかりちゃんやみんなが共演者として在る世界で、二本の足で立つことが出来るようになったんだな、と。場面が暗転して、スタッフロールが流れた時、妙な落ち着きと安心感、そして静かな興奮が全身をちゃぷんと満たしてくれました。

終幕

 終わってみればあっという間でした。2時間はちょっと長いな~と身構えていたのですが、寧ろあっさり終わってしまってもの寂しいほどで、だからこそもう一回!もう一回見せてくれ~!の感情で普通に泣き出しそうでした。
 一番美味しい部分だけ全部詰め合わせて食べちゃったような、こ、こんな贅沢な、良いんですか!?と怖さすら覚えるような、忘れられない満足感で、本当に最高の映画でした。誘ってくれた友人に心から感謝です。もちろん、この映画、作品に関わる全ての方々にも、限りない感謝を捧げたいです。もう足向けて寝られないのですが多分日本中に散らばって存在してると思うので今後は直立しながら寝る技能を身につけるため精進していこうと思います。
 恥ずかしながらこんだけ語っておいてアニメ未履修なので、アニメを見た上で何かにハマる音がしたらまたこんな風に記録していくかもしれません。

ここまでお付き合い頂きありがとうございました。

スタァライト、最高ーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



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