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レシピを公開するとは?

 Twitterをはじめるようになり、須藤憲司さんの『ハック思考』、中村朱美さんの『売り上げを、減らそう。』を読み、鳥羽周作さんがおうちでsioというハッシュタグのもとレシピを公開されている中で、自分なりにレシピを公開するってどういう事?について考えるようになりました。

 これまでの飲食業にとっての大きな問題である長時間労働、フードロス、従業員確保などの難問に、中村さんは苦しみながらも一つの答えをだしています。佰食屋という店舗の「仕組み」で人を幸せにすると言い、実際に労働時間の短縮をはじめ、これまでの飲食業での非常識を実現されました。この流れが今後広まるかはわかりませんが、僕にとっては労働時間の短縮というのはとても重要な事です。中村さんは、皆にあてはまるものではなく個々の自分の幸せとは?という問いに、幸せとは自己決定権であると言います。
「就業時間も、働き方も、自分で決める。やる仕事も、役職も、そして、仕事の後の時間をなにに使うかも、自分が決められる。」

 絵空事でしょうか? 僕は半年程前から独立して自分の店をもとうと、正社員を辞めバイトとして働きながら、店舗探しをしていました。ところがコロナの影響で今店舗を持つのは危険かなと揺らぎました。実は以前にも個人店として6年程営業していたことがあり、東日本大震災も経験しました。自然災害や伝染病は店舗営業を個人で営む場合、命取りになりかねないという恐怖心はその時からずっと胸の内にあります。一つの場所に縛られなくてもやれる方法、というのはそれ以来僕のテーマです。

 そう考えた時、店舗営業はテイクアウトを中心にしたランチ営業のみで、それ以外の時間は別ルートの収入源を作っていく時間にあてれるというのが理想だなと思っていました。簡単に出来ないことは重々承知していますが、幸いにも今の僕は時間に融通がきき、多少の蓄えも有ります。ならば今できる事は人の信用を獲得していく事かなと思いました。とりあえずこれまで培ってきたものを出していこうと思いました。料理人として提供できる費用のかからない方法といえばレシピの公開ということになります。

 少し前に神谷隆幸シェフのオンライン料理教室を支援という意味もこめて購入しました。そして購入者の方々が楽しそうに料理をアップしているのを見ていました。そして今は鳥羽シェフがおうちでsioという形でレシピを公開されており、お祭りのような賑わいをみせています。コロナという災厄の中でも僅かなりとも希望を見せてくれています。

 レシピというものは活用してはじめて価値を持ちます。お金と同様に蓄えていても何の価値も生みません。ノートに書かれたレシピ(静的)からネットに公開されることで、社会で様々な反応(動的)が生まれます。一つ問題なのは2人のシェフが提供した同じレシピを、無名の僕が公開してもあれ程の動きは生まれないということです。これはまさに信用の問題です。お金に価値があるのは、その背後に日本銀行という信用があるからです。レシピも同じでそれを提供する人の信用が価値を保証します。信用というものが本当に大事になってゆく時代なんだと改めて思います。

 僕のレシピ帳には社外秘に属するものもありますし、場合によっては公開することで損害が生じるレシピもあるでしょう。何でも公開していいとはおもいませんが、できるものの中で、一つ一つ信用を重ねていければいいなと思っています。

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