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人との繋がりが生んだ「コンパクトモダン」

マンション住まいが増え住宅事情は変容しているのに、雛人形は大きいまま。そこで、人形業界でもいち早く「コンパクトモダン」を提案してきたわたしたち柿沼東光。コンパクトさだけではなく、品性とモダンデザインの融合性にも取り組んできました。

2015年のお披露目から、おかげさまで多くのお客様に選んでいただいているわけですが、これは本当に“人との繋がり”なくしては実現できていなかったと感じます。

そもそも雛人形づくりは、お顔や小道具、収納箱などそれぞれ高度な技術を持った職人により制作される分業制。柿沼東光は、全体のデザイン・設計を行なったあとに職人への発注、品質管理、本業である江戸木目込み技法による衣装、最終仕上げ、そしてお客様への販売を担っています。

多くの伝統工芸産地と職人との繋がりは、雛人形づくりにおいて欠かせない大切なことです。ひとつ一つの出会いを大切にしていましたら、転機が訪れました。会津塗の漆問屋として知られる太陽漆器の小沼さんが、インダストリアルデザイナーの大沼敦さんを紹介してくれたのです。

大沼さんは、シャープの液晶テレビ「Aquos」初代機をデザインしたプロダクトデザイナー喜多俊之さんに従事し、デザインの知識と経験を深めていました。

大沼さんとお会いしたのは、神戸のコーポラティブハウスから東京都内のマンションに引っ越してきたタイミング。大沼さんは自身の娘さんに雛人形を探していましたが、モダンインテリアに合うものがなく、一緒に作れないかという相談をいただきました。柿沼東光でもデザイナーを探していた矢先でした。

特に大沼さんはマンションのキッチンカウンターに飾りたかったようで、デザインアイディアが頭の中で具現化していました(キッチンカウンターは白を基調とした大理石で、このキャンバスが返ってデザイン性を高める手助けをしてくれたと思います)。

メゾンブランドのようにデザイナーを招聘するなんて当時はとても挑戦的で反対の声もありましたが、せっかくいただいたご縁。新しい価値観、新しい風を取り入れて、想像力豊かな雛人形を作ってみたい!ピュアにそう感じました。気づいたら手が動いていました。

こうして始まった「コンパクトモダン」への挑戦。新しい価値の創造は未来だけを見るのではなく、この現状があるのもこれまで出会ってきた人たちがいらっしゃるからこそです。ひとり一人の顔を思い浮かべながら感謝し、今日も幸せいっぱいの雛人形づくりに精を出しています。

(書き手)柿沼東光 編集部


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