[スター・ウォーズ]レイ三部作の分析の方法

スター・ウォーズのレイ三部作(シークエル・トリロジー)を解釈するシリーズの1つ目の記事である。

まず、どのような方法で作品を分析するのか述べる。

1映画本編の内容だけを扱う

スター・ウォーズシリーズは、映画内では語られない設定やストーリーが数多くある。それらの矛盾は多く、また、それらはしばしば変更される。そのため、いたずらに分析の範囲を広げてしまうと、議論が混乱し、有益な結論が得られないだろう。

よって、ここで扱う内容は、基本的にはエピソードI~IXの9作と、『ローグ・ワン』『ハン・ソロ』の2作の映画だけとする。レイ三部作の映画本編から分かる設定とストーリーを考える。小説版や設定資料集などの関連書籍で明らかにされた内容は考慮しない。ただし、参考として触れることはある。

また、あくまで、映画本編から私が読み取ったメッセージだけをもとに議論を進める。インタビューなどで制作者の意図が分かっているものに関しては、ここで取り上げることはあるが、基本的には参考程度にとどめる。

2主に物語外の意味に注目する

レイ三部作では、現実のレベルの状況が、物語内のレベルで再現される。物語のあるシーンは、物語内での意味を持っているのと同時に、物語外の意味(現代社会における意味、映画制作における意味)も持っている。
分析をする上でこのような仮定をする。そして、ここでは主に物語外の意味に注目する。

この仮定を用いた分析の例として、レイとケアテイカーの関係を取り上げよう。

『最後のジェダイ』の、レイとカイロ・レンが初めてフォースによって繋がったシーンである。レイはブラスターでカイロ・レンを撃とうとした結果、ジェダイの遺跡を破壊してしまう。その後レイは、苛立たしげに遺跡を修復する生き物に気がつく。

REY: Who were those things? あれは何ですか?
LUKE: Caretakers. Island natives. They’ve kept up the Jedi structures since they’ve been built. ケアテイカーだ。ここの住民で、ジェダイの建築物を建てられたときから守り続けている。
REY: I don’t think they like me.  私が嫌いみたい。
LUKE: I can’t imagine why.  さて、なぜだろうな。

レイが遺跡を破壊したから(あるいはレイが新来者であるから?)、レイはケアテイカーに嫌われる。これが物語内の意味である。しかし、このシーンは物語外の意味ももっている。

ジェダイの遺跡を守り続けているケアテイカーは、スター・ウォーズを愛好し、「スター・ウォーズらしさ」を守ろうとするファンを表している。そして、遺跡を破壊する新来者のレイは、「スター・ウォーズらしさ」を破壊することによって、スター・ウォーズの限界に挑んだ『最後のジェダイ』あるいはその監督ライアン・ジョンソンを表している。

つまり、このシーンは、昔ながらのスター・ウォーズを守ろうとする人は、きっと『最後のジェダイ』やライアン・ジョンソンを嫌うだろうという意味をもっている(そして事実その通りになっている)。

ルークは、レイの嫌われているようだというセリフに対し、「さて、なぜだろうな」と返す。ルークはレイが嫌われる理由(遺跡を破壊したこと)を知っているのだから、これは冗談あるいは皮肉である。そしてこれは『最後のジェダイ』は古参ファンに嫌われるだろうが、私にはなぜか分からないととぼけてみせる制作者のジョークでもある。

このように、レイ三部作では、物語のレベルの物事が現実のレベルのものと重ね合わされていると考える。

登場人物の苦悩は、制作者の苦悩である。物語内の問題は、現実における問題である。こう考えてレイ三部作を解釈する。

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