三浦ゆうひ

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夢日記1_血の海に立つ

夢を見た。 10畳ほどの座敷に私は座っていた。 他にも数人の男が一定の間隔をあけてあぐらをかいている。 部屋には灯りがなく、外の明かりが障子ごしに部屋を照らすだけで仄暗かった。 そのうち、隣の男が何かの気配に気付いたようにはっと顔を上げると、素早く襖を開けた。 すると、何百人もの男の目が一斉にこちらに向いた。 いつの間にか、私たちがいる座敷は男たちに取り囲まれていた。 男たちの手にはなぜか青く光る薔薇が握られている。 まるで刀のように、その薔薇をこちらに向けていた。

    • 人類最後の日、誰と会う?

      人生で初めて目が回るほどお酒を飲んだ。 大学時代の先輩と久しぶりに飲みに来たのは、飲み歩きの街として有名な街だ。 2軒目の串カツ屋を出ると、心地よい風が身体を撫でていく。 時計をみると、既に1時を回っていた。 何杯も飲んだ身体は特有の浮遊感を纏っている。 こんな時間なのに軒を連ねる店はどこも爛々と輝いていて、その明かりが私たちを「こっちこっち」と誘っているようだった。 これからどこへ行くのだろうと思いつつも、終電がなくなっていることを1時間も前に確認している私は簡単には聞

      • わたし以外みんな、台本を読んで生きている

        子どものとき、外食をした帰りの車の中が好きだった。 窓の外をひたすらに眺めて、追いかけてくる月から隠れたり、きらきらした街灯の下を歩く人々を見ていた。 公衆電話にスカートの短い女の人が立っている。 腰の曲がったおじいさんが杖をつきながらゆっくりと歩いている。 若いカップルが腕を組んでいる。 そんなどうってことない景色を見ながら、私はいつも同じことを考えていた。 『この世界は、わたし一人だけなんじゃないか』 いま見た女の人も、おじいさんも、カップルも、わたしが見えなくな

      夢日記1_血の海に立つ