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【初心者向けミリタリー】戦車の歴史あらかると/Panzer006【チェンタウロ戦闘偵察車】


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皆さんおはようございます。
毎週木曜日は、かけうどんの趣味の軍事・ミリタリーに関連する記事を投稿する日にしています。

この『歴代戦車あらかると』シリーズでは、世界各国の歴代戦車を”単品”で取り上げてみたいと思います。

今回はイタリアの『チェンタウロ戦闘偵察車』について書きたいと思います。

過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。

【チェンタウロ戦闘偵察車】


1.概要

チェンタウロは、1991年にイタリア陸軍に配備された装輪式の偵察戦闘車です。その名の由来は、ギリシャ神話に登場する、上半身が人間で下半身が馬という架空の生き物「ケンタウロス」から来ているそうです。

半分は戦車、半分は装輪偵察車、ちょうど戦車と装輪偵察車の中間にあたる装備という意味合いが含められてます。

イタリアは南北に長大な海岸線を持つ広大な領土の国。

戦車などの重装備は北部地域に重点的に配置していますが、これらの重戦力を南部に緊急展開するのは困難です。

タイヤで軽快に走り回り戦闘もこなせる。そんな装備が必要でした。

2.構造・機能・運用

(1)構造

タイヤは8本。
とても大きな車体で自重は約25トン。

戦車砲をまともに撃てるクルマを作ろうとすると、おのずとこれくらいの車格は必要になります。

タイヤ式なので舗装道路は高速走行ができます。

これが何を意味するのか?

戦車は自走での航続距離がとても短く、戦略機動ではトレーラーなどに載せて運ばなくてはならない。装輪戦車は自走で戦場までいち早く移動できます。

また、普通の戦車はリアエンジンが多いのですが、本車はフロントエンジン。装甲防護力が低いので乗員防護の意味合いもあります。(エンジンを装甲の一部とする考え方)

その結果、車体後方スペースに数名程度の兵員を乗車させることができます。緊急展開後に遅滞行動をとりつつ主力部隊来援までの時間稼ぎを行う戦い方には、歩兵の収容機能は必要性が大きいと言えます。

(2)火力

主砲はイタリアの代表的な防衛企業、オットー・メララ社製52口径105mmライフル砲です。FCS(射撃統制システム)は、同国主力戦車のアリエテと同じものを搭載しており、主力戦車並みの火力を誇ります。

ユーロサトリ(欧州で開催されている兵器展示会)では45口径/120mm砲搭載型のモデルが発表されてもいます。

余談になりますが、世界中の海軍戦闘艦が搭載している艦載砲は、同イタリア・オットー・メララ社製のものが多いです。

(3)装甲

正面の防弾能力は約20mm程度に耐えられるように設計されています。その他は重機関銃(12.7mmクラス)に抗たんできる程度です。

このように全体的に装甲防護力の限界から、敵主力戦車と相対して正面から殴り合うようにはできていません。これは、世界各国の装輪戦車に共通する『泣き所』とも言えます。

PKO任務でソマリアに派遣された車両にはオプションの追加装甲が装着され、RPG-7などの対戦車擲弾には耐えられるだけの能力があるとされています。

(4)機動力

舗装道路での最高速度は100km/h以上を誇ります。

また、約800kmの距離を自走可能と言われています。

イタリア半島は南北1,360kmもありますが、単独で半島の半分以上に及ぶ距離を一日で移動できる計算になります。

これは少なくとも主力戦車ではムリです。

泣き所が一つ。

どうしても車体が大きいので小回りが利きません。

ステアリングは前の4輪と後ろ2輪が可動するのですが、後輪の転舵は時速20キロ以下という制限があります。(市街地戦闘ではこれでもかなりきつい)

また、タイヤはキャタピラほど路外機動力が高いとは言えず、泥濘化した路面ではすぐにスタックしてしまいます。(一応、タイヤ空気圧を車内から制御でき、泥濘地ではタイヤの空気を抜いて路面との設置圧を増やすことができます。)

3.チェンタウロ2

イタリア陸軍の要求に基づいて、オットー・メララ社が開発した現行チェンタウロの後継車両です。

チェンタウロ2

見た目は旧チェンタウロと同様の8輪式ですが、車体は完全に新規設計で、車体は部分ごとに異なる形状をした耐弾性鋼の高強度モノコックフレームで構成されています。車体全周と上面、下面はモジュラー式装甲に変更。

主砲はNATO標準規格の45口径・120mm滑腔砲にグレードアップしていますが、砲塔自体の重量が旧モデルより300kgほど軽量化しており、これは並大抵の努力ではなかったと思われます。

スペック
最高速度:時速105km
航続距離:800km
(舗装道路・時速70km)
重量:約30トン
乗員:3名
(自動装てん装置の採用により1名減)

イラク戦争で猛威を振るった『IED』への対策のため、車体が完全に新規設計されました。これによって車体下部の形状がV字型となり、爆発物の爆風を横に逸らす効果が得られるようになりました。

4.最後に…

イタリアの国土防衛構想にピッタリなチェンタウロは、高速機動&十分な打撃力を持つ装輪戦車として、かなり完成度の高い戦闘車両だと思います。

世界中が装輪式の戦車を開発しようとしていましたが、今のところそれに一応成功したのは、イタリアと、恐らく我が国、日本だけだと思います。

毎度のことながらですが、なにしろ素人が書いている記事です。諸所分かりにくいところもあるかと思いますが、どうかご容赦ください。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。

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