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【軍事】ゲームチェンジャー/歩兵銃にまつわる昔話(戦史)

(全2,222文字)
皆さんこんにちわ、かけうどんです。

戦争の歴史にまつわる分野のことを戦史と言いますが、今回は、そんな戦争の歴史の中から、ヨーロッパの戦場で、従来型の歩兵の戦い方を根底からくつがえして一新させたライフル、【ドライゼ銃】について書いてみようと思います。

【ドライゼ銃】

ドライゼ銃/ヨハン・ニコラウス・フォン・ドライゼにより発明

西暦1841年にプロイセン軍に採用された世界初の実用的なボルトアクションライフル。(開発期間12年/1824年~1836年)

1.革新的な機能

○ 後装式だったこと(弾丸を後ろから装填できた)

兵士は『弾丸の装填~射撃~次弾装填』の動作を伏せた姿勢で何度でも行える。(当時の歩兵銃の殆どは、弾丸を込めるために立姿か膝をついた姿勢だったので、弾丸を装填中は無防備で撃たれやすい=弱点を露呈することになるが、この銃だとずっと伏せて戦えるため、敵に撃たれにくい。)

○ 紙製の一体式弾丸を採用したこと

それまでの銃は、火薬を直接銃口から流し込んで長い棒で詰め込み、その上から鉄の弾丸を込めると言う非常に面倒な手順が必要でした。
ドライゼ銃は、弾丸と発射装薬を紙で包み込んだ一体式の弾薬を使用していたことで、一回の操作で弾丸の装填を済ませることができました。これによって瞬間交戦性能が従来型の歩兵銃に比較して飛躍的に向上します。

○ おまけ/ケースレス弾方式とは

ドライゼ銃で使われていた弾丸は、現代の銃で使われている『薬莢やっきょう』という金属製カートリッジに火薬をつめたものではなく、紙で火薬を弾丸ごと一つに包んでいたことから、1発射撃すると薬莢そのものが燃えてなくなるという、『焼尽薬莢しょうじんやっきょう』でした。
この形式の弾丸のことを『ケースレス弾』といい、史上初の後装式ライフルはケースレス弾丸だったというオマケつきの凄い話です。
米軍は過去数十年間、銃の金属製カートリッジをケースレス化すべく研究開発を続けてきましたが、未だにコレだ!という結論を見いだせないまま現在に至っています。

H&K G11アサルトライフル(ケースレス弾薬仕様銃として開発されたものの未採用)

2.この銃がもたらした革新

後装式ライフルが主流になるまでの戦場では、歩兵は1発射撃するたびに、銃口側から火薬を入れ、弾丸を込め、長い棒でコンコンと詰め込む作業が必要でした。

この一連の動きは、立った姿勢や膝をついた姿勢でないとできません。
つまるところ、射撃をしたあとの歩兵は次の弾を撃つまで無防備な姿勢をとりつづけないといけなかった訳です。

これが、後装式ライフルになると、歩兵は伏せた姿勢のままで、射撃⇒次弾装填⇒射撃⇒次弾装填・・・と、ねそべったままできる訳ですから、射撃と射撃の間に挟む無防備な時間に、敵から撃たれても弾が当たりにくくなります。

1866年の普墺戦争でドライゼ銃は最大の活躍を見せます。先込め式銃を使用していたオーストリア兵の方が射程では勝っていましたが、1発撃つたびに次弾装填を立姿で行う。プロイセン兵は、その間に5発射撃することができたと言われています。

こんな画期的な銃があるんなら、なんでもっと早くに普及しなかったの?という疑問が残りますが、それは簡単な理由で、当時のライフルの有効射程距離の約半分しか射程がなかったからと言われています。(有効射程250~600m)

現代の軍用銃のように、金属製の薬莢ではなかったことから、発射ガスを銃口内に閉じ込めるのが技術的に難しかったためと言われていますが、結果として、戦場で実際に使用されたときにドライゼ銃を使用したプロイセン側は圧勝に次ぐ圧勝だったそうです。

後にフランス軍がこの銃の仕組みを研究して同じような銃をつくりますが、それまでの間は『ドライゼ銃つえー』な、無双状態でした。

3.良い所ばかりでは無かった

従来の銃は鉄の筒の後端をボルトで固定し、その中に火薬を詰め込んで弾でふたをして発射していたので、構造が比較的簡単でした。

ドライゼ銃は、ボルトアクションライフルの始祖的銃ですが、その分、機械的な部品が増えますから、製造工程に手間とコストが余計にかかります。

また、射撃すると紙の薬莢が燃えてなくなるとは言え、射撃のたびに燃えカス(=ゴミ)が銃口内にたまるので、きれいに掃除しないと発射不良で射撃手が怪我をするようなトラブルもありました。

要は、使う人間にそれなりの教育訓練が必要で、きっちりと整備して使いこなすスキルが必要になったんです。

余談になりますが、現代の軍用銃はもっと複雑なので、歩兵の基本・基礎は、自らの分身でもある銃の分解結合やその取り扱い操作に慣れるための訓練が最も重視されます。

4.まとめ

今から約200年近く前にヨーロッパで開発された後装式ライフルの登場で、従来の歩兵戦闘が根底から覆されることになり、WW2以降に現代使用されているような突撃銃が登場するまでの間、世界列強各国はボルトアクションライフルを歩兵の主力兵装として採用してきました。

今回の記事では、現代に至るまでのしばらくの間、戦場で歩兵の主力装備として使用されてきた歩兵銃の歴史の起点とも言うべき後装式ライフルについて簡単に書かせて頂きました。

この後、機関銃の登場で歩兵戦闘は更に様相が変化していくことになりますが、それはまた別の記事で書かせて頂きます。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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