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【初心者向けミリタリー】戦車の歴史あらかると/Panzer003【幻のスーパータンクMBT70】

(全2,222文字)
皆さんおはようございます。
毎週木曜日は、かけうどんの趣味の軍事・ミリタリーに関連する記事を投稿する日にしています。

この『歴代戦車あらかると』シリーズでは、世界各国の歴代戦車を”単品”で取り上げてみたいと思います。

今回は、幻の究極戦車『MBT70』について書きたいと思います。

よろしければお付き合いください。

過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。

幻のスーパータンクMBT70


【MBT70】

今回ご紹介するのは、幻のスーパーTANK【MBT70】です。

第2次世界大戦後、新型戦車の開発について検討していた米国と西ドイツが、共同開発しようとした幻の試作戦車です。 

多くの新技術を導入しようとしましたが、相互の主張や言い分がかみ合わず、また、高騰する開発費用が膨れ上がった結果、採用は見送られました。

しかし、その開発過程で培われた技術は、後のM1エイブラムス/米国、レオパルト2/西ドイツに引き継がれて行く事になります。

今でこそ、米国のM1戦車やドイツのレオパルト2はメジャーな主力戦車の代名詞になってもいますが、その開発にはとても苦しく長い道のりがあったことは意外と知られていません。

1.概要/なんでんかんでんテンコ盛り

自動装填装置付き150mm級ガンランチャー(砲身から砲弾もミサイルも撃てるマルチランチャー)を主兵装に持ち、高出力のエンジンが叩き出すパワーは当時現存した他の主力戦車たちよりも遥かに強力。砲塔には20mm対空機関砲を装備し、遠隔制御式の機関銃まで備わっている。

もし、これらの仕様にうたわれている数値が、今々の主力戦車のものなら何の不自然でもなく『あ、そうなんだ。ちょっとトップヘビーだけど普通にあり得る範囲だよね』で終わってしまいますが、1960年代、今から60年以上昔の戦車設計思想のものだったとしたら、ちょっと驚きを隠せません。

いつの時代にも、兵器開発と言うものは、その時代に現存する技術レベルを大きく越える想定に基づいた戦場環境を想像しながら形づくられていくものです。なので、往々にして、世に生み出された時は陳腐化しているのが世の常です。

そう言った観点から考えると、MBT70計画は時代の先端を行き過ぎた結果、正式採用までには至らなかったものの、現在までの米陸軍とドイツ陸軍の要となる主力戦車開発に与えた影響は多大なものがあったと思わざるを得ません。

2.基本スペック

開発当時、旧ソ連軍では旧西側各国の主力戦車を上回る性能を持ったT62が装備化される中、早くも後継となるT64(後のT80に発展する試金石的な役割)の存在が噂され出した頃です。

(旧ソ連の戦車開発の系譜は非常に複雑なため、後日改めて書きたいと思います。)

西ドイツは独自に開発したラインメタル社製120mm滑腔砲の搭載を提案しましたが、米国側は対戦車ミサイルの発射機能を併せ持つガンランチャーの搭載を譲りませんでした。恐らく、第四次中東戦争でのサガーショックや、同時期に出現した旧ソ連製の歩兵戦闘車『BMPショック』(細部は後に記事を書く予定)などを踏まえて、主力戦車に対戦車ミサイルの発射機能を持たせたかったものと推察されます。

両者の考えが真っ向から合わないまま、最終的にはドイツ側が米国の要求を承認したことになっています。

車体も、エンジンの仕様や細かい部分での米国とドイツの主張に折り合いがなかなか付かずに難航したものの、出来上がった試作車両の性能は、当時現存したあらゆる主力戦車の性能を上回る数字を叩き出しました。その分、複雑なメカニズムがもたらした整備面への多大な負荷や、開発コストの高騰などの問題もありましたが。

対戦車ミサイル発射機能や自動装填装置を狭い砲塔内に入れるためには、当時の技術はまだ未成熟でした。乗員の搭乗レイアウトが米国とドイツで意見が割れるなどもあって、かなりずんぐりむっくりな大きな砲塔になってしまいます。

被弾面積を考えると、少し理にかなっていない形状にならざるを得ず、(私個人の意見としては)かなり不細工であり、完成し洗練されたフォルムと言うには程遠い印象を受けます。

後にご破算になった計画倒れの試作戦車となってしまったものの、米国ではMBT70計画から後のM1エイブラムス戦車が誕生しました。ガンランチャーの意匠は、M551シェリダン空挺戦車に継承もされています。

一方、西ドイツでは、旧式化したレオパルト1の後継となるレオパルト2が完成し、今では欧州各国がこぞって正式採用し、ヨーロッパ各国陸軍のスタンダードな装備となりました。

3.最後に…

温故知新と言う故事成語がありますが、物事には必ず経緯があります。

今、目の前にあることに疑問を持ったり、何かおかしいな?と違和感を感じることは珍しくありません。

ただ、この時、なぜそうなったのか?と言う、物事の背景や経緯を知ることと、全く無視するのでは、結果は大きく変わってくるのかなと。

出現した当時、世界最高水準とうたわれた、米、ドイツ両国戦車のルーツを紐解くと、その先には強大なワルシャワ条約機構軍の機甲戦力といかにして戦うかと言った試行錯誤の連続があったのだろうと言うお話でした。

毎度のことながらですが、なにしろ素人が書いている記事です。諸所分かりにくいところもあるかと思いますが、どうかご容赦ください。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。

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