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【初心者向けミリタリー】戦車の歴史あらかると/Panzer017【T62戦車】

(全2,222文字)
皆さんおはようございます。
毎週木曜日は、かけうどんの趣味の軍事・ミリタリーに関連する記事を投稿する日にしています。

この『歴代戦車あらかると』シリーズでは、世界各国の歴代戦車を”単品”で取り上げてみたいと思います。

今回は旧ソ連製『T62戦車』について書きたいと思います。

過去のミリタリー関連記事はこちらのマガジンにまとめています。

【T62戦車】


1.概要

1950年代、旧ソ連では新型戦車砲となる滑腔砲(スムースボア/ライフリングが切られていない砲身)と、専用の新型戦車砲弾”APFSDS”弾(装弾筒付翼安定徹甲弾)の開発を開始します。

そもそもは、新型戦車である後のT64への搭載を見越した先行・基礎研究と試験開発を兼ねたもののようでした。

既存技術の延長線上にあるものでしたから、それらの開発は順調に進んだのですが、肝心な戦車本体の方が様々な問題から中々実用化までこぎつけることに苦労していました。(大きな原因の一つに、ガスタービンエンジンの実用化に非常に時間がかかったとされる。)

そこで、新戦車開発がとん挫した時に備えて、性能的にはやや控え目でも良いので即戦力になる『中継ぎ投手』的な『とりあえずの間に合わせ』としてT62の開発が同時並行ですすめられます。

と言っても、新規に何かをつくるのではなく、既に採用後の生産が軌道に乗りつつあったT55戦車に開発中の新型戦車砲と専用弾薬を搭載するだけだったので、さほど難しい話ではありませんでした。

よって、T62=T55の改良型戦車であるとも言えます。

1961年頃には新型115mm滑腔砲を搭載した試作車が完成し、これを正式名称T62として量産化が決定します。

ギネス級の生産台数を誇るT55ほどではありませんでしたが、T62も旧東側諸国で広く使用され、第四次中東戦争では本車がイスラエル軍に捕獲され、米国にわたり、徹底的に技術的分析にかけられました。当時としては、旧ソ連製戦車の技術的な秘密を知る貴重な機会だったと言われています。

(結果、米国製M60戦車が必ずしも不利ではないことが判明)

最終的に1970年代末に生産終了するまでの間、約1万9千両余りがつくられました。一部の車体は近代化改修され、T62Mとして運用が続けられてもいますが、殆どが後継のT72に選手交代しています。

2.構造・機能など

(1)構造機能

新型の115mm戦車砲を搭載するため、車体が若干ですが大きくなっています。

また、地味にタフなところがひとつ。ソ連製戦車の大半が自動装てん装置が砲塔直下にレイアウトされているせいで、被弾時のダメージがとても大きい事が弱点と言われていましたが、T62は自動装てん装置が同部位にないことから、対戦車地雷や火器による攻撃を受けても簡単に誘爆しないという利点がありました。

どれも同じように見えてしまう旧ソ連製戦車の面白い見分け方の一つに『転輪の間隔が各タイプで微妙に違う』というのがありますが、これら搭載兵装の関係上、重量配分が変わったためとも言われています。(戦車マニアにはたまらないネタですね(笑))

T55では第1転輪と第2転輪の間隔が他よりも少し広く、T62では第3と第4転輪の間隔がやや広くなっています。

また、細かい話になりますが、T62ではT55と異なるのが、砲塔上面も含めて一体型の鋳造砲塔になっています。

(2)火力など

T62最大の特徴としてあげられるのが、APFSDS砲弾の運用のために開発された新型滑腔砲を採用したことでしょうか。

このタイプの戦車砲は貫通力が非常に高いのが特徴なのですが、ライフリングがないため、砲弾が安定せず射程距離がやや短いと言う欠点があります。
WW2での戦車戦闘を分析した結果、平均的な交戦距離がおよそ1~1.5km程度のレンジで戦われることが多かったためとも言われており、旧ソ連製戦車の本命の対戦車戦闘距離はおよそその距離を想定していたものと思われます。

主砲は二軸安定化装置が設けられていて、中東戦争で捕獲された車体を用いた移動目標に対する射撃のテストでは、距離1kmで約7割と言う脅威の命中率を確認しています。当時としては物凄い数字だったと言えます。

旧ソ連製戦車の多くが、低い車高と小さなシルエットで、被弾面積が非常に小さいと言う特徴もあるのですが、同じく、これも技術的分析の結果『砲身の上下への降り幅が狭い』と言うことが分かり、地形を利用した射撃を行うことが難しいということが露呈しています。

(3)機動力

(省略/T55記事参照)

3.運用実績など

本来、T55の後継装備として採用される予定だったT64の開発が難航したことで、T62は予定以上に多くつくられることになります。

T72が採用された後も近代化改修が重ねられ、運用が継続されています。

2021年、T90Mの導入とT14の量産遅延などから、T62の退役に一時的にストップがかかった状態になっていて、現在もアップグレードされた一部の車体が継続使用されています。

4.最後に…

旧ソ連の戦車開発系統は非常に複雑なうえ、同時並行で複数の兵器が開発されているなど、西側諸国の装備取得とは全くことなることから「わかりにくい」ものになっています。

毎度のことながら、なにしろ素人が書いている記事です。諸所分かりにくいところもあるかと思いますがどうかご容赦ください。

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。

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