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543 83歳の日々、

(18)真面目な老女たち

 グループの中では、多分いちばんよくわかっている人。どこで知識や技術を得てくるのか、詳しいことは何一つ話さない。でも、地域で何かの役を引き受けたり、皆んなのために気さくに力になってくれたり、労を厭わず足腰軽やかである。
せっせと歩いて健康にも気を使い、小柄な彼女は、とても健康的。
クラブでも実力者。皆さんの信頼は厚い、何かと呼ばれて、助けを求めた人の側にピッタリ寄り添い、親身に問題解決してくれる。メンバーはそれぞれ、自分の問題に協力してもらいたくて、引っ張りだこ。82歳なのかな?

 どっこいどっこいのやり手の彼女は少し若い。技術面の実際のみならず、理論的なことを、熱心に、易しく解説してくれるので、PC、スマホの理解に大いに力になる。声をかければ、すぐ応じてくれて、わかる限りのことを惜しみない。頼りになる。

80代なかばを超えているひと、耳の不自由な人、目のままならぬ人、こだわりの強い人、何れも長い人生経験そのままに、個性強く、何かとやり手で、一筋縄ではいかない面々。

 耳の不自由な人から、難聴アプリについての質問があった。此の際、いつ、今は良くても聞こえが悪くなるかもしれないし、勉強することになる。
 若い男性教師が早速に、課題を取り上げる。指示のあるまま、真面目にスマホに向かうメンバーたち。混乱と喧騒は、すぐやってきた!
 だいたい翻訳の未熟さ、ちぐはぐさは、様々な場所で体験済み、それでも外人と、直接やり合える場合は、双方の努力と歩み寄りでなんとか通じたが、初めてのアプリでの翻訳体験は、気違い沙汰であった。
 のっけから、単語が無茶苦茶、縦にも横にも、斜めにも行き交うようで、文章なんてものでない珍妙な言語が狂ったようにかきまざり、得も言われぬ可笑しさ?!なんと表現したらよいのか?!

 狂った機械に反応して、男も婆さんも、困ったような表情で、何をかいわん!
思いもしないハプニング、奇妙な現実を受け止めかねて、
しかし、笑いは収まらない。
 まったくー、今の世の中、長く生きても、ろくなことに出会わないね。
あまり変な笑いで疲れてしまい、機械なんてこんなもんだわ、恐れることなし、しかし、振り回されたくないねえ。何か、この問題提起の結論ってあったっけ?

 珍しく家の成物を少し持参していたので、気分を落ち着かせながら、季節の味を賞味する。けったいな、世の中だねえと疲れながらぼやく。

 このクラブに集う老女たちは、勉強の内容がわかろうとわかるまいと、顔を合わせて、わっはわっはと笑い合うことを楽しんでいる。
 今日みたいな馬鹿げた、スマホから飛び出てくる、人間業ではない、機械の狂乱の様な、言葉が宙を飛びまくった現象に、逃げ出すようなことは金輪際なさそう!

 帰りには、人の袋に間違ってスマホが入っていて、帰宅して気づき、私のではありませんと連絡しあい、夜遅く本人がわかり、すみませんすみませんと、まあ、ご苦労なこと。
 今日は最後まで面白いねと、笑い合った老女たち!
恐るべし、笑い飛ばす者達。

 

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