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525 82歳暮らしの断片、


(66)初体験は続く、

 いつも誘われることの多い私が、珍しく自分から誘った。
日頃バイトや家族の都合やで、一緒にでかけたりすることの少ない三女。
一日だけならどうかと思い、それも、落語の会というので、声をかけてみた。
お出かけ成立。
 朝日新聞の招待で、応募すると残念、でも半分自分持ちの優待券が送られてきた。
感謝特別優待価格は2.000円。場所が豊橋なので交通費がいるけど、プチ旅行のつもりで行く。
考えてみると、車人間の三女は家族旅行でもみんな車、一人の行動も皆車。
列車で出かけるのはまずない人が、今日は、老母に付き合い名鉄電車で、会場のアイプラザ豊橋講堂を目指す。
 一宮駅で待ち合わせ快速特急に乗る。3連休の中日は、混雑も少なく、声を潜めておしゃべりには、快適空間。
結婚前の三女とは、海外旅行も二人で行った。嫁いだ姉二人のあと、夫婦と末娘の三人で、近場の海に魚を食べに行くとか、それは皆、夫の運転の車であった。その後三女も結婚し、姉妹も仲良く、互いに子供連れで交流頻繁、旅も遊びもよくしたが、娘たちの子供も独立し、自分の自由が効くようになってからは、大人の時間を楽しめるようになっている。
とは言うものの遠方の者は
なかなか。近くに住んでも家庭事情で、そうは、ままならなかった。
 久し振りに電車で、母親と二人きりの時間、50代も半ばになった末娘も、ようやく落ち着いて身の回りの諸事を、ゆっくり考え巡らせるようになって、静かに会話は途切れない。
まっ平な、尾張の国から、ゆるやかに情緒ある三河の丘陵地に近づいて、心弾む。
 終点豊橋には正午着。
新幹線の止まる駅とて、何でもお店は揃っていてにぎやか。
 時間にゆとりもあるので、ランチにパスタを!店内も程よい空き、出された料理は、申し分なく美味だった。
 前半万事うまく行き、定刻には指定席券を受取り、脚の伸ばせる良い席に収まる。
 さて今日のメイン、殆ど初めてと言って良い二人は、物珍しく当たりの雰囲気を眺め渡し、嬉しくて、話を聞く前から笑顔溢れる。 
 男性、女性、年配者も若者も、客層は幅広い、満席でもくつろいだ雰囲気で、緊張感もなく騒がしくもなく、会場はゆったりムード。
 幕が上がり、出囃子の三味線と共に、若い男性が高座に上がり、座布団の上で。頭を擦り付けてお辞儀をした。
林家たい平の、長男だと名乗り、短めの話をさらりとして、素晴らしく切れの良いオチをつけて引き下がった。拍手喝采。
二人会の始めは、林家たい平。たまにテレビを見ていたから、知った顔。はじめから引き込まれ、聞き惚れ、良く笑い、結構長い時間を、人をそらさない話術は、やはり、大したもの。小道具の使い方も垢抜けて、声音、目つき、体の動き、話の場面がまざまざ浮かんで、笑いがこみ上げる、爆発する。いやー、落語って凄いな。
 一人で語って演技して、観客を楽しませる技は、十分に磨かれてこそ、響いてくるのだろう。
 中入りご、たい平の
一番弟子だと名乗り若い女性が三味線持って、歌い話す。
私はこれから出る人の、引き立て役だと、ちょいとひねった話などで笑わせた。
 最後は年長の、三遊亭小遊三。この人の顔は良く知っている。歩いて舞台に出てくる姿が、歳を感じさせた。
 話はまずまず笑わせていたが、少し迫力にかけて、人相の目玉ほどは、声と話の運びにメリハリ不足。
それでも、噺家という者は 
たった一人で、長時間、人の注目をひきつけていくエネルギー、体を張ってるなあと、しみじみ感心したことだ。
 帰り又電車に乗って、一宮に付くと、もう暗くなり、玄関を開けるときには東の空にまんまるお月さま。生きてる限り、初体験が続くのです。

#落語に興味が湧く
#日本の話芸について

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