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家事整理と時間01 「寝る前の家」

 元祖スーパー主婦・山﨑美津江さんは、著書『帰りたくなる家』に「『寝る前の家』とは、いわば1日のゴール地点。終わりをどう締めくくるかで、翌朝のスタートが違ってきます。」として、それぞれの家庭でできることから、「寝る前の家」を目指してほしいと書かれています。
 この『寝る前の家』は、今から100年ほど前に、羽仁もと子が書いた「羽仁もと子著作集 第9巻 家事家計篇」にある文章です。

寝る前の家
 まだ若い方ですが、子持ちなのによくいろいろの仕事を手まめにします。その方の話に、子供が昼寝をしているあいだに、仕事をしたいと思ったら、起きているうちにちゃんと用意をして、寝たらすぐとかかります。出かけようと思うときにもそのように、持ち物から履はきものまでそろえておいて眠ったらすぐ出かけます。そうすると仕事にも外出にもたっぷり時間が使えます。ちょっとしたことですけれど、もしそれを子供が寝てから仕事の用意にかかったら、用意ができて仕事をはじめる、仕事に勢いの乗ってきたころにもう起きるということになり、寝てからはじめた外出の支度ができるまでにだいぶ時が経ったということになります。それが習慣になったものですから、編み物のような出してくればすぐはじめられるものでも、きっと前から出しておきます。縫い物であれば、出しておいて表だけは縫ってしまおうとか、大体の予定をもってかかります。編み物にしても、三日でしようとか四日でしようとかいう目標があれば、夜もまた出したりして、どうしても早くできます。
 ほんとにそうだと思います。仕事にかかるのに、手間どるのは、なによりも能率を低くするもとになります。手早く仕事にかかろうとすれば、またいつでも後始末をよくしておかなくてはなりません。私はこの意味で、早くから「寝る前の家」ということを考えています。一日の生活が終わった時に家中のあとの始末をよくしておけば、朝はほんとうに気持のよいものです。
 寝る前には必ず家の部屋部屋が、座敷から勝手まで、朝の掃除のすんだあとと同じこと、すべてのものが置くべきところに置かれて、なにひとつも置き忘れてないようにするということです。家人おのおのがその気になることはもちろんのこと、主婦みずから見まわって必ずこのことを励行すること。そうしたら朝の仕事はどんなに早く順序よく運ぶでしょう。そしてなおただ部屋中を片付けるばかりでなく、翌朝の支度のために、夜しておくことのできるものは、できるだけしておきたいと思います。朝の貴重な時間に、手順よく気持よく仕事をはじめられるように。
 おとなから子供まで、めいめいの着るものも履くものも、翌朝用のものは、必ずちゃんとそろえておくこと。どこでも早速実行のできる、そうして家事整理の根本になることです。

羽仁もと子著作集 第9巻『家事家計篇』第5章 家事整理と時間 - 寝る前の家

まとめ

 寝る前に「家の部屋部屋が、座敷から勝手まで、朝の掃除のすんだあとと同じこと、すべてのものが置くべきところに置かれて、なにひとつも置き忘れてないようにする」は、なかなか大変と思う方に、「疲れて子どもと一緒に寝てしまう日もありますね。そういうときは、潔くあきらめて、翌朝元気に起きれたらハナマルです」(山﨑美津江)

 普段の生活の中で、「さて、〇〇をはじめよう!」と意気込んでいても、実際はそれをはじめる前にその場を片付けることからスタートする人も多いようです。せっかく気持ちが前向きなのに、片付けからでは集中してすることはできません。
 「寝る前の家」とは、いつでもなにかをスタートするときに、その場所が整っていること、道具やモノが元ある場所にあることです。いつもの習慣に、「片付け」までをセットにすることが、ストレスなく効率的に仕事ができる秘訣ですね。

羽仁もと子とは、どんな人? 

 1873年、青森県八戸生まれ。1897年、報知新聞社に校正係として入社。その後、日本初の女性記者として、洞察力と情感にあるれる記事を書く。同じ新聞社で、新進気鋭の記者だった吉一と結婚。1903年4月3日、2人は「婦人之友」の前身、「家庭之友」を創刊。創刊号の発売前日には長女が誕生し、自分たちの家庭が直面する疑問や課題を誌面に取り上げ、読者に呼びかけ響き合っていった。1930年に読者の集まり「全国友の会」が誕生した。最晩年まで婦人之友巻頭に友への手紙を書きつづけ、そのほとんどが著作集全21巻に収録されている。
 婦人之友では、2021年1月号より、森まゆみ氏による「羽仁もと子とその時代」を連載中です。そちらも合わせてごらんください。



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