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【ジェノバG8包囲大闘争から20年】ジェノバ・サミット反対闘争で爆発する怒り - インターナショナルな闘いで資本のグローバリズムを打ち破ろう (週刊かけはし 2001年7月30日号)

G8による虐殺糾弾!  

七月二十一日、ベルルスコーニ右翼政権に指示された治安警察部隊が、ジェノバで反サミットデモの先頭にいた青年一人を射殺した。治安警察に警棒で乱打された若い女性が意識不明の重体に陥っている。数百人が負傷したが、警察発表によってもその大半がデモ参加者である。現場で多数が逮捕された。

 われわれは、G8とベルルスコーニ政権によるこの虐殺と不当弾圧を、怒りを込めて糾弾する。四月にスウェーデン・イェーテボリで開かれたEU首脳会議反対闘争では、一人の青年が警官隊に腹部を銃撃され、重傷を負っている。ATTCイタリアはサミットに先立ってジェノバ警察長官に申し入れを行い、G8サミット開催阻止を目的として「レッドゾーン」を包囲することを通告したが、この際、警察長官はイェーテボリのような銃の使用はしないことを確約している。この確約を踏みにじって、治安警察部隊による絶対に許すことができない虐殺が行われたのだ。

 さらにベルルスコーニ政権は、サミット会場周辺で多数のデモ参加者を逮捕したうえ、二十万人の反サミットデモが展開された七月二十一日夜、全世界から集まった七百余の団体を結集する反サミット行動のセンター「ジェノバ社会フォーラム」(GSF)の印刷所などを強制捜索し、九十二人を不当逮捕した。全世界の労働者人民に敵対するサミットの孤立した姿を暴露されたG8とベルルスコーニ政権の報復弾圧であった。

 「お前たちは八人、われわれは六十億人」「グローバリズムは大企業(多国籍企業)だけを潤し、貧困を拡大する。大企業の利益のために動くG8首脳は世界の代表ではなく、地球全体の問題を決める資格はない」「オルタナティブな世界、もうひとつの世界は可能だ。われわれには抗議行動の権利がある」。反サミットデモの鮮明なメッセージと巨大な大衆的直接行動の力は、一握りの帝国主義諸国政府首脳による会議の本質とそのねらいを全世界に暴露し、追い詰めることに成功した。

 「市場経済のグローバル化を成長の糧としてきた先進国は、そのひずみにいつまで耐えられるか。激しい抗議行動に包囲され、死者まで出したジェノバ・サミットは、グローバリゼーションの『影』の部分に真剣に向き合わなければ、その成長の『糧』を守りきれない時期が来たことを示している」(朝日新聞7月22日)。

「G8は首脳宣言で、貧困削減の推進で一致し、反グローバリゼションの動きに対応したと説明している。反グローバリセーションの動きは先進国のなかで起こっており、弱肉強食、開発優先の市場一辺倒の発想に異義を申し立てたものだ」(毎日新聞7月23日)。

 新自由主義の権化のような小泉の「構造改革」を「小泉革命」などとはやしたててきたブルジョアジャーナリズムさえ、資本のグローバリズムと新自由主義に反対する世界的闘いの正当性を認めざるを得なくなっただけでなく、当のG8首脳たち自身が、消耗感を隠すことなくグローバリズムと新自由主義の破綻やサミットの行き詰まりを認め始めている。

 EUのプロディ欧州委員長は、治安部隊に守られ市民から隔離されて開かれるようなサミットの在り方について「考え直すべきだ」と述べた。フランスの大統領シラクは、「これだけ大きな抗議行動が示している人々の不安を考慮しないわけにはいかない」と語った。極右勢力に支援された右翼ポピュリスト・ベルルスコーニも、サミット冒頭あいさつのなかで「(反グローバリズムのデモに包囲された)こんな環境のなかでのサミットなので、意味ある前向きのメッセージを送りたい」と述べ、貧しく虐げられた人々のためになる方向を打ち出すべきだと強調した。小泉でさえ「サミットは参加国だけのためではない。途上国に大きな支援を」とリップサービスを行わざるを得なかったのである。

 しかしジェノバ・サミットは、混迷し危機を深める現代世界に対して、どのような積極的メッセージも送ることができないまま閉幕した。G8首脳宣言では、アメリカのバブル崩壊で深刻化する世界同時不況について、世界恐慌の推進役になりつつある日本に対して「引き続き潤沢な流動性を供給すべきだ」というインフレ政策が突きつけられただけで、あとは「経済の基礎的諸条件は健全」という、だれ一人信じるもののいない文言があるだけだ。

 恐るべき勢いで進行する地球温暖化についても、ブッシュは会議中で「京都議定書を批准する意志はない」と繰り返し、宣言には「意見の不一致」が明記されてしまった。戦争や平和の問題については、包括的核実験禁止条約(CTBT)や弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約を含む「核不拡散・軍備管理」の項目そのものが、宣言から消え去った。地域紛争については紛争当事者に「自制」を求めるだけで、欧米諸国やロシアは相変わらず中東・アフリカ・アジアなどに毎年二~三百億ドルもの武器輸出を続けている。

 ベルルスコーニは「途上国支援」を押し出そうとし、エイズ・マラリア・結核の三大感染症予防・治療のため二十億ドルの「世界保健基金」創設を打ち出した。しかし国連エイズ特別総会が二〇〇五年までに必要とするエイズ対策費は、アジア・アフリカの途上国を中心に七十~百億ドルからすればまったく足りない。しかもベルルスコーニはイタリアの拠出額さえ示さなかった。

 世界の多国籍企業二百社の売り上げ額合計が、世界人口の貧困層・極貧層四十八億人の年収のほぼ二倍に匹敵する。世界の大金持ち上位二百二十五人の所有する富の合計が、全人類の年収の半分に匹敵する。世界の大金持ちのトップ三人の資産が、途上国四十八ヵ国のGDP(国内総生産)を超えている。そして資本のグローバリズムと新自由主義は、資本主義の過酷な搾取と収穫の表現である世界のこうした在り方をさらに押し広げ、世界の民衆の苦しみを激化させ、人類の未来を刻一刻と食いつぶしているのである。

 人類の未来は、資本のグローバリズムと新自由主義に対決する国際主義的闘いのなかにある。ジェノバ・サミットの現実と、「オルタナティブな世界は可能だ」というスローガンを掲げて闘いぬかれた巨大な反サミット大衆的直接行動の爆発は、この真実を全世界に告げ報せたのである。

(7月24日 高島義一)

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