いまさらアレを読んでみる『ジキルとハイド』編

さて、今回は二重人格小説の傑作『ジキルとハイド』(ロバート・L・スティーブンソン著 新潮文庫)を読んでみました。

ド頭からいきなり重大なネタバレをしてしまいました。実際小説の中でも終盤犯人の告白として解離性同一性障害が明らかになります。もっともこの本の場合、いわゆる解離性同一性障害とは少し違うのですが。

まあ、この本はそのジャンルの傑作として有名になっていますから、きっとこの本をご存じの方はそれもセットで知識になっているでしょう。(実際新潮文庫の背表紙には思いっきり書かれていましたし)

ただ、それを知っていてもおもしろい!彼らの人間関係をはじめハイドの残忍さと消滅してしまう奇怪さ。それを受けた人間の恐怖感が雰囲気たっぷりに書かれています。特にジキルとハイドの不思議な関係は、物語の根幹を支えるミステリーとして終盤まで立ちふさがります。

書かれたのは19世紀ですが、そこまで文化的な違和感はありませんでした。先ほど人間関係について描かれたと書いてありますが、登場人物それぞれが深く描写されているわけではないため、どちらかというとそのフシギと恐怖感を味わう作品でしょう。

そして意外と短い。原著がどうかはわかりませんが、少なくとも自分の読んだバージョンは短めでした。知識として一読するのもおススメ。

著者のスティーブンソンさんはかの有名な『宝島』を書いた方。こちらもいずれ読んでみたいなあと思います。イギリス人ですが、独特の言い回しなどは少なく、普段日本の新書を読んでいる方でもすっと読めるかと思います。(最もこの点は訳者の田口俊樹さんの功績によるところが大きいかもしれません)

ただ、先ほども申し上げた通り、この本の結末はあまりにも有名なため、ミステリーの醍醐味みたいなものを味わいたい方はあまりお勧めできないかもしれません・・・『ジキルとハイド』って名前は知ってるけど実際どんなもんなんだい!ぐらいの感じで読むのがちょうどいいかもしれません。きっと後悔はしないと思います。