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Let's go to the mountain #3

以前、五月の連休に近所の山に登った話を書いた。
Let's go to the mountain と称して。
これはその記事の続編、ではない。
山の話ではあるが、
トマトの山の話、でもない。
たしかに、この夏、我が家のミニトマトは豊作、ではあった。

山は山でも…な話である。


「空き巣に入られたみたいだ。
警察の現場検証が必要だから帰ってきてほしい。」


当時大学2年生、冬休みに実家に帰省していた私にアパートの大家さんから電話がかかってきた。

アパートは2階建て10部屋で、同学年の看護学生10人が住んでいた。
女子寮みたいな感じである。
私の部屋は1階の角部屋だった。

ベランダの窓ガラスが割られているのを大家さんが発見したとのことであった。
部屋にはまだ誰も入っていないため、状況はよく分からないが、とにかく帰ってきてほしいとのことで、大慌てでアパートへ戻る事になった。
大学は県内であったが実家からは高速で2時間半の所にあった。

雪降る中、母の運転でアパートへ向かった。

ベランダの窓ガラスを割って鍵を開け、そこから侵入したようである。
警察の方と共におそるおそる玄関の鍵を開けて中に入る。
入ってすぐキッチンがあるが、特別変わった様子はない。
奥へ進む。
きれいに整えてあったはずのベッドはかけ布団がめくれ、何者かが布団に入ったような形跡があった。
チェストは下着が入っていた引き出しだけが開いた状態で、整えて入れてあったはずの下着は散乱していた。
あまりの恐怖にしばし言葉を失い、呆然としていた。
何が起きたのか
何を失ったのか
何が何だかわからず立ち尽くしていた。

とにかくこの部屋を何とかしないと、と我に返った。

金銭やカード類は置いておらず、高価なものもなかったのは幸いであった。

しかし、パンツだけがごっそりなくなっていた。
ブラジャーとセットのものもあったが、ブラジャーは残され、パンツだけがきれいになくなっていた。

ベッドカバーと布団カバーを外し、残されたブラジャーごと捨てた。

もうこの部屋には住めない。
引っ越そう。

大家さんもこちらの胸中を察し、なんと声をかけてよいのかわからない様子ながらも最大限の配慮をしてくださっている様子が伝わってきた。

今すぐにでも引っ越したい思いでいっぱいであったが、
すぐに引っ越せる状況にもなく、とりあえず窓ガラスを修理して、部屋を片付けて再び実家へ帰った。

結局引っ越しはせず、卒業までその部屋で暮らした。

空き巣に入られて半年以上たった頃、夏だった。
警察から電話があった。
犯人と思われる男がつかまった。自宅から押収した盗難品を警察で保管している。その中にあなたのものがあるかどうか確認にきてほしいと。
正直もう忘れたかったし、今さら確認したところで私が失ったものは帰ってこない、怒りしかなかった。
そのことを伝えると、警察の方もそれは十分承知の上であるとおっしゃった。
悩んだ末、行くことにした。

警察署内の会議室へ案内される。
扉を開けて目にした光景に唖然とした。

会議室の長机、4つか5つくらいだっただろうか
それぞれの机の上にはパンツの山があった。
大量のパンツの山…

成人女性のものだけではなく、幼児や小学生のものと思われるものまで見渡す限り、パンツぱんつパンツぱんつパンツぱんつパンツぱんつパンツぱんつ…
もう、書ききれない。

これほど大量のパンツを目にしたことはない。
この中から探すなんて無理だ。
探す気にもならない。

「…もう、いいです。」

被害者はいったい何人いたのだろう。

ところで、あのパンツの山、どうなったのだろう。

人生山あり谷あり、とは言うが

まさかパンツの山に出会うとは…

次はどんな山に出会うのだろうか。

この先、あといくつの山を越えるのだろうか。

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