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[朝の読み聞かせ]朝起きるのがつらい!季節に

立春も過ぎ、少しずつ日が延びてきたとはいえ、まだまだ夜明けが遅い季節です。目覚ましが鳴っても、なかなか布団から出る気になれず、特に雨が降っていたりすると、よけい目が覚めません。

目覚ましがない時代にどうやって早起きできた?

ということで、今朝の学校での読み聞かせは『メアリー・スミス』(アンドレア・ユーレン作 千葉茂樹訳 光村教育図書)を選びました。表紙に描かれたインパクトのある女性は実在の人物で、1927年に撮影された写真も載っています。

この本は、上の子どもがまだ小学生だったとき、よく行く図書館の児童担当職員の方から教えてもらいました。目利きの職員さんがいる図書館は本との出会いの宝庫です!

目覚まし時計がまだ一般的でなかった時代、イギリスでは1週間に2,3ペニーのお金を払って、「ノッカー・アップ(めざまし屋)」と呼ばれる人に頼み、決まった時間に起こしてもらっていたそうです。長い棒で寝室の窓を叩いたりひっかいたりする方法が多かったようですが、このメアリー・スミスは硬いゴムチューブにかわいた豆をこめ、それを飛ばして窓に当てるという、なんともユニークな起こし方!「すごい!」と子どもたちも喜びますが、なんだかかっこいいですよね。

しかもこの絵本のメアリー・スミス、頼もしくて、堂々としていて、「自分が起こして回ることで町が動き出す」ことに誇りを持っていることが絵からよく伝わってきます。起こされた人は窓から顔を出して「確かに起きた」ということを知らせないといけないのですが、それを確認したらさっと次の場所へ向かうメアリー・スミスの姿は、まさに「ザ・プロフェッショナル」。仕事を終えたメアリー・スミスが、焼き立てのパン(メアリー・スミスが起こしたパン屋が焼いたはず!)を食べながら、時間ぴったりの汽車の汽笛(メアリー・スミスが起こした車掌が鳴らしているはず!)を聞く場面が、とても素敵です。

時間にしたら5分ぐらいで読める絵本ですが、「昔はこんな方法で起きてたんだ」という雑学的なおもしろさだけではなく、働く人の誇りやいろいろな仕事が関係しながら暮らしが成り立っていることも自然と理解できる、内容の濃い一冊だと思います。

読み終えて教室を出るとき、子どもたちがわいわいがやがやと朝の支度をする中から、「あたし、今朝2回起こされた〜」という声が聞こえてきました。

大きい子も楽しめる科学絵本の古典

『メアリー・スミス』は強い印象を残す絵本なので、まず最初に『ひょうざん』(ローマ・ガンスぶん ブラディミール・ボブリえ 正村貞治やく 福音館書店)を読みました。こちらは、だいたい7分ぐらいの時間です。

1968年初版のこの本は、科学絵本の古典とも呼べる名作絵本ですが、現在はなんと絶版。私は図書館で借りましたが、アマゾンですごい値段がついていました・・・。

「訳者あとがき」にもありますが、この絵本がすごいのは「氷山がどうやってできるか」に始まる氷山の「一生」をきちんと伝えながら、「詩情」という言葉がぴったりの世界を味わえることです。

最初のページを開くと、冷たい氷に覆われた「きたのはて みなみのはて」の世界が広がります。「なんびゃくねんも なんぜんねんも」の時をかけて降り積もった雪が氷河になり、それが割れて氷山ができるということが、色調を抑えた絵と、シンプルで的確な言葉によって描かれていきます。

「おおきな かがやく こおりのやま」「きらきら かがやく おしろ」のような氷山は海を漂いながら、次第に溶けていきます。海を行く船は、氷山にぶつからないよう舵を取り、渡り鳥は氷山にとまって体を休め、氷山がとけてできた池や湖のような水を飲みます。海水を飲めない渡り鳥にとって、この氷山の水は命綱。モノクロの絵で描かれたこのページは、私がこの絵本の中で一番好きな場面です。

すっかり溶けた氷山の絵に続き、絵本は再び、「きたのはて みなみのはて」で「なんびゃくねんも なんぜんねんも」降り積もる雪でつくられていく氷河、そしてその氷河が割れてできる氷山の話に戻ります。繰り返される雄大な地球の営みが「ピシッ、バリバリッ、ゴォー、ドドーン」という氷河が割れる音と共に目の前に立ち現れるかのようです。

けっして急がず、聞き手が大自然やはるかな時の流れを感じられるよう、ゆっくりと心をこめて読みたい一冊です。

「氷山の一角」と「タイタニック」

この絵本はひらがなばかりですが、内容がしっかりしているので、小さい子(幼稚園年長さんぐらい)だけではなく、高学年になっても楽しめる一冊だと思います。

今朝読み聞かせたのは4年生のクラスですが、読み始める前に「『氷山の一角』って言葉、知ってる?」と尋ねると「知ってる!」「聞いたことある!」という返事が返ってきました。また、「きりに かくれている ひょうざんに、ふねが しょうとつする ことがある」というところで、「タイタニックだ!」という声も上がるなど、逆に年齢が上がることで、より興味を持つことができる絵本かもしれません。

学年が上になるほど、15分という時間内に収まる読み聞かせの本を選ぶのに苦労しますが、この絵本はどの学年でも楽しんでもらえる、冬におすすめの一冊です。夏の暑いときに読んでも、涼しくなれていいかもしれませんね。




読んでいただいて、ありがとうございます!