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[朝の読み聞かせ]寒い季節に体がぽかぽかしてくる絵本

ここのところ、ぐっと寒さが体にこたえるようになりました。そんな季節の読み聞かせにぴったりなのは『きつね森の山男』(馬場のぼる こぐま社)です。

この絵本、初版が1974年ですが、私も子どもの頃、大好きだったのを覚えています。40年以上経った今でもまったく古びず、子どもたちの心をとらえます。

読む時間は10分強、朝の読み聞かせ(15分)にもちょうどいい長さです。幼稚園年長ぐらいから高学年まで、幅広い年齢の子どもに喜ばれるので、「これ!」という本がみつからないとき、自信をもって読み聞かせできます。朝、「寒い寒い」と言いながら学校にやってくる子どもたちの心も体もあっためてくれる絵本です。

とにかく風呂吹き大根がうまそうだ

タイトル通り、主人公はきつねがいっぱい住んでいる森にやってきた気のいい山男。この山男がめっぽう力が強くて、きつねの毛皮目当てで攻めてくる寒がりの殿様の軍勢をひとりでやっつけてしまいます。ところが、城下町にやってきた山男は待ち伏せていた殿様の家来たちにつかまってしまい、「わしの味方になれ」と迫られるのですが、山男は「あったまるには、風呂吹き大根が一番だ」とその場でつくって、殿様たちに振る舞ったところ、殿様は風呂吹き大根が気に入って、きつね狩りをやめて大根畑をつくりました。きつね森にも平和が戻って、めでたしめでたし・・・というお話です。

馬場のぼるさんのユーモラスであたたかい絵のタッチも素敵ですが、何より、山男が殿様の眼の前でつくってみせる風呂吹き大根が本当においしそう! 大きな鉄鍋に湯をわかし、大根をぶつ切りにして、鍋の中にぽいぽい放り込み、煮えたら味噌をつけて食べる。ただそれだけなのに、「食べてみたい!!」と思わずにはいられません。

子どもって風呂吹き大根みたいな「渋いおかず」は基本的にそんなに好きじゃないと思いますが、この絵本を読み聞かせた後は「おいしいおいしい」と食べるようになりました。

きつねも殿様もハッピーに

作者の馬場さんが意図していたかどうかはわかりませんが、大人になり、ベジタリアンの世界に足を踏み入れてから、「あれ、もしかしてこの絵本、動物愛護にもつながるんじゃないかな」と気づきました。

寒がりの殿様は、あたたかくなるためにはきつねの毛皮が一番!と思っているので、きつねたちを殺して、襟巻きやちゃんちゃんこや座布団をつくり、「これでぬくぬくじゃ」と喜びます。自分が快適になるためにきつねたちの命が失われることをなんとも思っていません。

きつねたちは自分たちの身を守るために立ち上がり、殿様の軍勢と戦争になります。山男の加勢で戦いには勝ちますが、殿様が寒がりできつねの毛皮が欲しくてたまらないことは変わらないので、そのままでは戦争は繰り返されたでしょう。

その不毛な戦いを一気に解決してしまったのが、風呂吹き大根。動物たちを人間の都合で犠牲にしなくても、人間も動物もハッピーになれる。なんて素敵な話だろう、と改めて思いました。みんなが幸せになれる話は、読んでいて、あったかい気持ちになれます。

ちなみに今年は大根が安いそうです。風呂吹き大根をたくさん食べて、あったまりたいですね。



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