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【今週聞いたこと】デンマークの養豚場の豚の一生

好きなラジオ番組のいくつかに共通するのが、その週にあったニュースの中で、各ゲストが気になったものを持ってきて話すというもの。私もこのノートでやってみることにした。何回続くのか、果たして2回目さえもあるのか私自身分からないが。

その1、デンマークの養豚場の豚の話。
Informationという新聞で記事(https://www.information.dk/indland/2024/05/raadne-fostre-udskudt-endetarm-240-kontrolrapporter-viser-bagsiden-vores-svineproduktion)にされ、デンマークの公共放送ラジオのある番組がその話を特集したものをたまたま聞いた。この新聞記事は有料で私は購読してないので読んでいないのだが、農林水産省のような行政機関が行なった養豚場への検査結果についての記事だったみたいで、3分の1の養豚場がルール違反を犯していた上に、豚の健康状態が悪い事例も散見されたよう。

このラジオ番組の中で、デンマークでの養豚の様子が数字とともに紹介されていて、何にも知らなかった私には驚きの連続だった。

まず、年間に生まれる豚は約40万頭強。(飼育されている数は人口の約2倍の1千百万頭!)でも、死産や生まれてすぐ亡くなる率は何と23%。年間で10万頭近く。去年は1日換算で2万7千600頭が亡くなったのだそう。毎日2万7千頭。4割は死産で、残りは未発達で生まれてきたためだったり、寒さや飢えや、母親に押し潰されたりで、すぐ亡くなるのだそう。

一頭が一回で産む数(死産を含む)は平均20頭。出産は年間2回ほど。一頭の母から一年間の間に生まれて4週目くらいまで生き延びた子豚の数は平均34頭。それが、41頭という新記録を出した母さん豚がいたのが去年。
豚の一番近い動物であるイノシシ、野生のイノシシが一年間で産む数は4−7頭。つまり、産み過ぎるのが死産・生まれてすぐの死亡が多い理由の一つでもあり、母さん豚が早死する理由の一つでもある。沢山産むのに体力がついていかず、最後の赤ちゃんが子宮に残ったまま亡くなり、その後母親も亡くなってしまう。

また、子豚は生き延びても生後3−4週間後に母親から離される。野生のイノシシの場合は10週。まだ自立する(自分で食べていける)には早過ぎるのもあって病気になりやすく、抗生物質の薬が多用される。その後、食用の豚は、生後5−6ヶ月になると工場へと送られる。

一方母親は、子豚たちが離れた後、元いた豚舎に戻るのだが、そこで喧嘩が発生する。豚は社会ヒエラルキーがある動物。頻繁に入れ替わりがある舎の中では、誰が最初に食べるかなどの順番をめぐって争いが起こる。狭い宿舎の中では、お互いに不要な争いを避けるための距離も取れない。法律で決められている最低の広さは一頭(体重100キロ)あたり0.65平方メートル。10キロの豚に至ってはなんとA4用紙のサイズ。また、豚は好奇心旺盛な動物だが、狭い宿舎でじっとすることにストレスを抱える。遊び用のおもちゃみたいなのも配置されているのだが、上記のような理由で豚たちはアグレッシブになることが多い。法律で随分昔に禁止された豚の尻尾を切ることも、未だに続いているのもそのせい(95%の豚は尻尾が切られているそう)。ストレスだったり、暇すぎて、などの理由で豚同士で噛んでしまうのだそう。そのために、事前に子豚の時に切るのだそう。(ちゃんと該当の省庁に事前申請していれば合法なのだそう。)そして、繁殖時には、完全に身動きのできない箱に入らされ、8ー10週間過ごすのだそう。

全ては効率化のため。短期間でより多くの豚を生産することが最大の目的。
ラジオを聞いて思い出したのが、以前人から聞いたジョーク。デンマークの病院で抗生物質が多用されないのは、抗生物質がすでにたっぷり入った豚を食べてるから、病院が処方する必要がない、というもの。それは、あくまで冗談なのだろうが。

今回この話を聞いて、ショックでびっくりしたが、全人口が豚肉の摂取を今すぐ止めるべきだ、とは思わない。豚肉を食べること自体が悪ではないし、肉をやめる分を肉以外の食べ物で補えるくらいの供給があるのか。農地は農地で問題を抱えている。また農地を広げるのも、今度は別の問題を引き起こす可能性がある(農地の課題は、長くなり過ぎるので、ここでは割愛)。豚肉を生産からスーパーの店頭に置くまで、多くの人が携わり、そこに産業がある。0か10かの二択の話ではないと思う。(私は専門家ではないし、もしかしたら書いてることが間違っているかもしれませんが、単なる一個人のつぶやき程度に聞き流してもらえるとありがたいです。)

一消費者として貢献できることは少ないが、我が家での肉全体の消費量を少し減らして、買うときは、オーガニックのものを選ぼうと思う。(オーガニックの場合、一頭(85ー110キロ)あたりの広さは2.3平方メートル、そのうち1平方は屋外であること。)そうやって、豚肉の値段が少し高くても、豚にとって少しでも良い環境作りが広がればいいなと思います。

参考記事:
https://www.weekendavisen.dk/opinion/svineri (有料記事)
https://www.landbrugsinfo.dk/-/media/landbrugsinfo/public/7/0/c/landsgennemsnit_produktion_grise_2022_notat_2315.pdf
https://effektivtlandbrug.landbrugnet.dk/artikler/svin/91563/mette-og-anders-faar-41-63-fravaennede-grise-pr-aarsso-.aspx

上の写真は、義母のご近所さんが趣味程度に飼育していた豚。10頭前後で、広い土地を集団で移動していた。養豚たちには理想の家なのかな。

2、3個トピックを書こうかと思っていたが、何せ最初のトピックがこんなにも長くなったので、残りは、いつか書けたらいいなと思います。

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