11月のヒヨリミコロシアムの感想回

どうも。

今回はヒヨリミコロシアムの感想を書いていきたいと思います。

・今回は「日常」がモチーフの作品が多かった。

今回のテーマは「日和」という事で、日常モチーフの作品が多く「キャラクターと時間を共有する」目的で作られた小説が非常に多かった印象があります。

だから、点数を付ける事に関しては非常に悩みました明確ではっきりとした人間同士の対立構造や葛藤が存在しない作品の点数付けは本当に難しい

創作にはいわゆる「ソフトストーリー」と「ハードストーリー」の2つがあり「淡々とした日常を描く」のがソフトストーリーで、問題解決にはっきりと向かうのがハードストーリーと言われています。

ダイ・ハードはハードストーリーで、是枝裕和の映画はソフトストーリーって事ですね。

そういう意味では今回は「ソフトストーリーが中心の作品コンペティション」になっていて、凄く採点が難しかった。う~ん。どうしよう・・・と思い悩みながら点数を付けた感じです。


本日の天気は、曇りと霧のち晴れ模様」は、キャラクターのバックストーリーを短編でどこまで描けるかという点に関して非常に参考になった作品です。

正直、僕は「4000文字っていう縛りの中で、どれだけ人物にバックストーリーを引き出していくか」って所にメチャクチャ苦戦していて。

ただ、この作品に登場する主人公のリアリティというか。実在感には非常に感心しました

独白や、行動の時のしぐさ、心の流れ。

存在しない人間の過去の時間軸をどう短いテキストで感じさせるかっていう実力みたいなものを一番感じた作品でした。

僕はどうしても「うぇ~存在しない人間の過去の時間軸考えんのめんどくせぇ~!」ってなってしまう人間で、ついストーリーや展開を優先させてしまう

だから架空のキャラクターのバックストーリーを考える力っていうのは、凄い参考になるし凄いと思わせてくれました。

鉄格子の中からは個人的には映画のヒーローショーを思い出したりなんかして。

テンションの高いヤンキーがうっかりバットで人を殺しちゃうって映画なんだけど、これが僕はメチャクチャ好きで。

だからそのテイストの作品が見れて凄い嬉しいっていうか。

序盤の学校のベランダを鉄格子に捉える閉塞感で一気に作品のテンションを読者に掴ませる圧倒的な掴み。ラストのタバコを吸うシーンのクールさ、そして咳き込む意外性。しかしその意外性には必然性がある

意外性があるけど納得感がある。こういう描写のラストは本当にキレがあって大好きです。


光あれは、昨今の世界情勢から色々考えちゃう僕にとっては凄い刺さった作品です。

戦争。破滅の恐怖。そういうモノを抱えながらわずかな世界の破滅の可能性をずっと持続させながら都会で生きていかなければならないそういう緊張感をずっと持っている時代だからこそ描ける作品だと思っていて。

自意識もコンプレックスも劣等感も世界への怒りも戦争への恐怖も世界への不安も、全部をドロドロに溶かして文字として吐き出して、そして世界の全てを光へと包んでいく

ニジムラさんの集大成であり、自意識の文学の最終進化系のような感触を抱きました。

https://ncode.syosetu.com/n4442hx/

春の日差し、桜流す雨。は今回の企画の中で最もウェルメイド性を感じた作品です。

4000文字というスケールの中で、人物紹介、葛藤、ドラマ、展開。エモーション。そういうモノが全て詰まっていて「無駄が無くスキが無い」。そういう”完成度で上から一気に殴る感じ”がありました。

圧倒的な痛みを伴うエンディングでありながら、しかし最後にエンジェルラダーの描写が入る事でギリギリの幸福というか。パンドラの箱の最後に残った希望を想起させるラストのバランス感覚は流石の実力を実感させてくれました。

https://ncode.syosetu.com/n4498hx/

春夏秋冬は「こんなに素敵な片思いが描けるんだ」っていう感動がそこにあって。

作中で描かれている戦争の描写も、現実の事を色々考えると他人事とは思えないリアリティも個人的には感じていて。今年の春に進撃の巨人を見ながら「う~ん。現実の話だ・・・」って思ったり、そういう意味でこの作品も凄い時代による没入感みたいなモノがあった。

片思い。遠距離恋愛。そして人間と人間同士がもっとわかりあえればという願い。そしてそれをスマートに見せる文章の構成の上手さと読みやすさ

ラブロマンス。理想主義。会えなくても心の距離はずっと近い。そういうロマンティシズムを強く感じさせる小説でした。

・感想

今回はとにかく「日和」というテーマなだけあって、日常。生活。人生時間の共有という目的で作られた作品が非常に多く「いい意味でたくさん心が揺さぶられない」作品が多く、リラックスしながら読むことができました。

いずれにしてもみんなが他人には書けないモノを書こうっていう信念の元で、企画を立ち上げて、それを完成形に持ち込んでいる印象がありました。

僕が言いたいのは、小説は完成させるだけでマジで凄いって事です。社会情勢が不安定ならなおさら。

みんな個別の人生に対する不安だったり、苦しみみたいなモノを持ちながら、なんとか企画を立ち上げて書ききった。っていう苦労みたいなモノも作品全体からオーラとして感じていて

だからとにかく「全員偉い」っていうのが僕の最終的な感想です。みんな凄かったしみんな偉い。だから完成まで持ち込んだ全員に自信を持って頂きたい

とにかく、メチャクチャ面白かったので、ぜひ次回も楽しみにしています。

というワケでヒヨリミコロシアムの感想回でした~。

それでは皆様健やかに~



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