寄せられた意見への私見-①

前回、今まで経験してきた事例について述べると記しましたが、少々変更します。
これまで読者からの感想や意見がいくつか寄せられていました。
それらのうち全てではありませんが、
私が考えられる事、反応できることについて述べてみたいと思います。
 
『60歳を過ぎて、管理職で現場に行ったり、一般職で行く場合正直どんな気持ちなんでしょうか?』

今迄にも述べてきましたが、「定年」という制度は
企業活動全体から見ると若返り=世代交代=活力の維持という側面では十分に意味の有る事でした。
それが慣例化し定着していったのは当然のことでしょう。

しかし、当事者にしてみるとある日突然に能力低下が起こるわけではなく、
十分に能力も意欲もある状態でのタイムリミット宣告ですから、
理解は出来ても心理的準備は追い付いていないようです。

しかも、近年は少子高齢化・労働力不足という
社会全体の都合で制度変更を余儀なくされてきました。
当事者としてみると年齢が高くなりそれなりに心の準備もしつつあったところに、
いきなり延長ということになり、それに伴う諸施策も不十分なまま(この5~6年ぐらい関与する管理職研修でこの話題がよく出るようになりました)渦中に追い込まれたというのが本当の所でしょう。

長く続いてきた60歳定年制度、それなりにどう対応すべきか施策も完成していたところでしょうが、
政府を含めた社会全体の動きとして「人生100年時代」を掛け声に、
年金制度の不安を背景としてもっと働けということになってきました。
社会と関係を持ち続けるという意味で働くということは大賛成ですが、
変化に伴う準備が不十分なまま再雇用・定年延長ということで
企業側も本人も対応が追い付いていないようです。

よくテレビドラマなどで見るハッピーリタイヤを予想していた人たちが、
そうではなくまだ働けと言われる。
ちなみに現在は健康年齢が長くなり実年齢×0.8が昔の年齢に相当するそうです。
つまり今の60歳は昔の48歳に相当するということのようで、
まだまだ体力も能力も十分に残していると考えてよいのだそうです。

そうはいっても、ある程度の年齢になり一応心の準備もしつつある所へ「もっと働け」です、
制度構築もそのための準備も不十分なままの定年延長が横行しているようです。
従来は、定年後を見据えたライフプランの構築の手助けやなどで
会社側も準備を支援してきたのですが、
それらの諸施策が整わないままの見切り発車となっていったようです。

一方、経営環境は厳しく、高度成長期のような手厚い支援はとてもできる相談ではありません。
当事者は混乱しているようです。
特に、管理職として定年延長ということであればまだましですが、
殆どの場合権限が大幅に制限され
同時に報酬も大幅にダウンしての延長もしくは再雇用ということですから、
今までのモチベーションを維持できないというのが実態のようです。
しかも、企業側からすると該当人物の能力経験を可能な限り生かしたいわけですから、
今までの職務に近い領域での配属となるのが殆どのようで、
結果このブログの冒頭に述べたような様々な軋轢や摩擦が生じているものと思います。

私が関与した管理職研修は殆どが新任の中間管理職又は上級管理職で、
この件についての悩みの声もかなり耳にしていました。
研修では討議テーマとしてこの件を取り上げ、
メンバーで共有しつつ対応を考えてもらってきましたが、
前に述べた「業務フロー」と言うのがかなり大きな打開策のようです。
勿論作成しただけでは何の意味もありませんが、
そのフロー図に基づく該当者とのコミュニケーションが鍵となるようです。

ここから考えても、上司の側だけでなく定年を迎える人たちの心の準備の時間も必要でしょう。
定年を迎えた(る)人の対場でいえば
「それなりに準備をしてきたつもりであったが、この数年で様変わりしようとしている。
働くことはやむを得ない部分もあるが
自分たちの立場や境遇を無視したような制度仕組みに腹が立つ」というところではないでしょうか。
 海雲 龍人

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?