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三人の営業さんの話

昔、引っ越しをするために、三社の引っ越し業者に見積を依頼した。

最初に来た営業さんは、熱意をアピールした。自分は最初に足を運んだ。がんばるからどうか仕事を任せて欲しい、と。

二番目に来た営業さんは、価格をアピールした。この距離、この荷物の量なら間違いなくうちが一番安くできますよ、と。

で、三番目に来た営業さん。特に何かを強くアピールすることなく、淡々と荷物の見積や日程などを聞いていく。で、いろいろ話す中、ふと「置いていくもの、あります?」と聞いてきた。

引っ越し先と間取りが合わないので、いくつか大きな家具と、絨毯等を捨てていく予定だった。しかし、どうやって捨てるのか、いつ捨てるのか(特に絨毯)を考えないとなぁ、と思っていた。

営業さんにそういうと、「捨てるもの、うちが全部引き取りますよ」と言った。つまり、引っ越しの日に全部トラックに積んでしまい、いらないものは別途捨ててくれるという。これが決め手となってこの業者に決めた。

もちろん、「これとこれは捨てるんですが、引き取ってくれますか?」と聞けば、他の業者もやってくれただろう。しかし、当時は捨てるものを引っ越し業者に任せる、という発想がなく、自分でやらないといけないと思っていた。

「上手い」営業さんは、勝負所を外さないように思う。最初から自分の売りを強くアピールしたりしない。値段、雰囲気、サービス、信頼性、クライアントによって重視するポイントは異なる。なので、まずクライアントが何を重視しているかを探り、クライアントがうまく言語化できていないニーズを掘り起こし、そして勝負所とみるやいっきに切り込む。さらに言えば、「ここに決めてよかった」と思わせる。

その後、大きな契約を扱う仕事に就き、たくさんの営業さんを見てきたが、やっぱり「上手い」営業さんっているな、と思った。営業さんって大事だな、とも。どんなに良い商品を持っていても、売れなければお金は会社に入ってこないので。

余談だが、他の引っ越し業者に断りの連絡を入れる際、「決め手はなんですか?」と聞かれたので、「不用品を引き取ってくれると言われたことです」と伝えたら「業者によっては、不法投棄したりするので気をつけてください」と言われた。負け惜しみだったのだろう。少なくとも、その業者の印象は悪くなった。営業さんは会社の顔……

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