読書日記:「氷点」三浦綾子
あらすじだけは聞いていて、ずっと本棚にはあったものの長い間読まずにいたこの本をようやく手に取った。
不貞をはたらいた妻への復讐として、自分の娘を殺した殺人犯の子どもを養子にもらうことを企む啓造
お嬢様育ちで我儘、自分が美しいと思うものしか受け入れられない夏枝
各々正義とするところに違いはあれど、やはり義を通すようで自分の欲には忠実。性悪説である原罪をテーマに掲げてはいるが、やはり罪を背負って生きる人々の生々しさには堪える。
人間の浅はかさ、欲望の醜さ、歪んだ思考…
「自分は悪くない」と思いたいがために罪を他者になすりつける大人たちの物語。
特に夏枝に関しては不愉快を通り越して読むのが苦痛。
身勝手な大人たちとは対照的に、真っ直ぐに生きる陽子が唯一の余白に思え、超然的な態度は純真無垢な者として眩しさが際立つ。
そんな欠点だらけの人間たちから学ぶことは多く、幾つもハッと胸を衝かれるようなセリフもあった。
どこかで雪解けの音が聞こえた気がした。
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