衝動的かつ暴力的な愛
友人のヌードを撮影してきた。
前から予定していたわけではないのだが、出張先の近くに住む友人達と飲みながら突如発生した撮影だった。
詳しい話の流れは忘れてしまったが、彼女がヌードモデルをしてみたいというので場のノリで(半ば強引に)撮影をすることになった。
彼女についての言及はここでは避けておこう。
撮影してる最中、彼女が醸し出す空気が僕の心を湿らせた。
隣の部屋には彼女のパートナーと僕の妻がいて、彼らがいる部屋とは時空あるいは次元が違う空間のように感じていた。
カメラを構えた僕と被写体だけの空間 ——— 外界から隔絶され時間の概念のない空間。そこでは僕と被写体の間に何者にも邪魔されない特別なコネクションが生まれる ——— が出来上がる感覚は撮影中にはよくあることだ。でもこんな気持ちになるのは初めてだった。
なぜこんな気持ちになるのか。
彼女との関係性は浅いわけではないが特別古い友人というわけでもない。なんなら彼女の人生を丸ごと映像で撮影するくらい僕にとっては重要人物だった。
たぶん、僕は彼女を愛してた。
(誤解のないように言っておきますが変な意味ではなく被写体として愛しているということで、僕がこの世で一番愛しているのは妻なのは変わらず、彼女とどうこうなりたいとかではない)
妻に対して感じる愛とはまた違う種類の愛で、妻は守りたいし、傷ついて欲しくないし傷つけたくもない。
でも彼女に対しては守りたいと思うと同時に、傷つけたい壊したい欲求にかられた。
彼女の中に壊れそうな脆さや儚さが内包されてるからだと感じたからこそだけど、衝動的に壊してしまってその後悔の念に苛まれたいと思った。
彼女を壊したいのか、果たして自分自身を壊したいという願望なのか。
とにかくそういう衝動的かつ暴力的な愛を抱いていた。
この愛はどこにも辿り着けないものだ。
そして彼女自身をも、僕自身をも救うことはできないものだった。
そういう種類の愛もあるのだ。
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