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きみ、考えすぎ!〈うみいろノートNo.46〉

悪癖というのは誰にでもあるようだが、僕にもそんな悪しき習慣がある。
それは一日の終わり、ようやく床に就こうとした時によく起きる。

「今日の仕事のやり方、あれでよかったよな?」
「さっき届いた連絡、あの返信で間違いなかったっけ?」

今となっては、もうどうしようもないことに執着してしまう。
そう、何事も考えすぎてしまう、未来ある時間を侵食する厄介な習慣だ。

しかし、結局考えたところで明解な答えは得られないわ、なにより貴重な睡眠時間を奪われるわで、僕は以前から痛い目に遭ってきた。

そんな日々に嫌気が差し、駆け込み寺へ駆け込むように本屋の心理学コーナーに向かった僕を待っていたのは、アドラー心理学で有名なアルフレッド・アドラーのこんな一言だった。

「人生が困難なのではない。あなたが人生を困難にしているのだ。人生は極めてシンプルである」

つまり、自らの考え方ひとつで人生はまっすぐに伸びる一本道にもなるし、世界一難解な迷路にもなり得るということなのだ。

そのヒントを得て以降、僕は未来へと続く道をできるだけ平坦にするために、過ぎ去った過去に囚われないようにしようと決めた。

その瞬間、瞬間にベストな選択をできるようにする。
一見簡単なように聞こえるが、想像以上の労力を必要とする作業だ。

これから起きる出来事だけに備え着実に前へ進めるように、後ろを振り返る隙を与えない。
今の僕には、その方法が特効薬のように効き始めている。

それでも、もし長年の悪癖が表出した時には、心の中でアドラーが「ほら、きみ! また考えすぎているよ。人生はシンプルだということを忘れないで」と注意してくれるはず。

悪しき習慣から脱し安らかにつく眠りの中でアドラーと対話する夢を見るのも時間の問題かもしれない。
その時は、事前に考えたたくさんの言葉を飲み込んで、ただただ感謝だけを伝えたい。アドラーもきっと、それを望んでいると思うから。

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