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うみいろノートNo.3 未来の姿

最近、諦めが悪くなった気がする。
「仕方ない」「そういうこともあるよね」とよく気持ちを納得させる人間とは思えない変化だ。

諦めが悪くなったのは、こと自分に対してだ。
残業帰りの電車の中、ふと、なんでこんなにしんどいのかを考えたことがある。身体の疲れは言葉にして訴えるほどでもないし抱えきれない仕事に押しつぶされているのかと聞かれれば、そうでもない。

一つ心がポツリと口にしたのは、「″自分はこういう人間なんだ″と思い続けていると、心はどんどん老けていってしまうよ」ということだった。確かに、ここ最近は下り坂を転がる石のように日常の色はくすんでいって、身体の内からあふれ出るエネルギーは遠くに行ってしまっていた。

このままだとまずいと直感し、家に帰ってから真剣に打開策を考えた。
頭の中では考えがまとまらないので、ノートに一日の行動を書き出す。起床、出勤、仕事、残業、飲み会、就寝……。いかに日常が会社に縛られているかを思い知った。会社は今の僕には生きていくためには必要だけど、出世しようとか稼いでやろうだとかは考えたことがない。
やっぱり僕は小説を書いた先に未来を見ていた。でもこのままでは、いつまでも同じような毎日が続き、気づいたら心身ともに年ばかり取っている恐怖を近くで感じた。

理想の人生を歩むにはどうすべきか。どうしたら近づくことができるのか。
それには、毎日少しでも本を読み、言葉を知り、文章を書き、感性にアンテナを向け続けること。それが将来に焦り始めた26歳の自分が出した答えだった。

そう決めてから、早速環境を変えようと動くことにした。

例えば読書。
会社のデスクで食べていたコンビニ弁当から、会社近くで見つけた喫茶店に文庫本と財布を持っていく。カレーライスかナポリタン、時々照り焼き定食を頼み、本に読みふけりながら昼下がりの時間を過ごすと、午前中のしがらみから解放される感覚が心地よくなる。

例えば文章。
今書き進めている長編小説を毎日最低でも200字は書くと決めて、帰宅後にちびちび書く。小説は字数がすべてではないけど、長編を書く体力のない身としてはトレーニングになるし、そもそも毎日同じ小説に向かうこと自体新鮮なことだった。また、長編小説の魅せ方は中編小説までしか書いたことのない自分に新たな扉を開けてくれた。

そして、感性を磨き続けること。
noteに込められた想いや、思いがけない時に触れる人生はいつまでも僕の感性を瑞々しくしてくれる。

理想論と片付けて、大人の仲間になったふりをする。知らぬ間に、半ば無意識にそちら側に渡っていた。でも、まだ戻れる。誰だって、年齢なんか関係なく戻ることのできる自分。
距離は未だに分からない。これからも数えきれないほど通り道をするだろうけど、この足で前に進んでいれば夢は見えてくるかもしれない。たとえたどり着けなくても、その姿をいつか必ず見てみたい。今、この文章を書いているこの目で。

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