ゾーン〈うみいろノートNo.37〉
執筆や作曲など創作活動をする上での生みの苦しみは、時代が移ろい変わっても不変の理と言われている。
ましてや締切なんかに追われた日にはますます良いアイデアなんて浮かばない。恐らく閃きといった類に頼ることは、命綱なしで高層ビルの塗装を請け負うくらい無謀なことだと思う。
世界的なスポーツ選手やビジネスパーソンが偉業を成し遂げた際に「ゾーンのおかげで達成できた」なんてことを何度か聞いたことがあった。
どうやら"ゾーン"とは、集中力が極限まで高まり物事に完璧に没頭している特殊な意識状態のことを指すらしい。
そんな代物があれば、多分大したことのない僕の生みの苦しみさえも楽に取っ払ってくれるかもしれない……!
そんな淡い期待を込めて、ヤフーで「ゾーンの入り方 なるべく簡単に」と調べてみた。
と書かれている。
そのフロー段階に入るためにも「夢中になれるゴールを持つ」「行動する前に入念な準備をする」「短い期限を設けて必ず守る」などの条件があるらしい。
なるべく単純な回答を出したい僕は、とにかく継続する道を選ぶことにした。
上で言ったことを一つ一つ律儀に実行していたら、何事も時間のかかる性分が悪く出て、いつまで経ってもゾーンに入ることなんてできやしない。
とにかく続けていたら、次第に要領を掴むことができるだろう。我ながら楽観視の最先端をいく発言だ。
20数年の人生の中で食事や歯磨きなど日常的に行う必要のある行為を除くと、13年続けている日記を書くことが自分史上最長の行為だった。
となれば、僕は毎日寝る前に何となしに書いている日記の時間に誤ってゾーンに入ってしまうことになる。「誤って……」なんて言葉を使ったのは、寝る前にゾーンに入ると眠気も吹っ飛んでしまいそうで怖いからだ。
たとえ念願のゾーン状態を手に入れても、誰も「ゾーンに入った日の文章はやっぱり重みが違うなぁ」なんてことを言って褒めてもくれない。せいぜい悦に入って文章を眺めるくらいしかできないだろう。
「やっぱり世の中そんなに甘くない。そして、相変わらず僕は能天気だ」
今日の日記はそんなことを書こうと思う。
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